その後のノーラ

「ここはどこ?牢に居たんじゃなかった?」


 どこか分からない。闇の中に佇んでいるような感覚。周りを見渡しても何もない。大声を出してみるけれど、何にも反応がない。イライラしてくる。


「ここは一体どこなのよ!!」


その声に反応したのか目の前がぼんやりと明るくなり、その光の中から一人の男が現れた。


「あら、素敵な男じゃない。私の恋人にならないかしら?」


男はフッと私に微笑みかける。いい感触かも。この男を頼ればいいわね。私はそう考えた。


「誰かわからないけど、ここから出してちょうだい?」


すると、先ほどまで微笑んでいた男が急に大声を上げて笑い始めた。


「アハハハ。いい、いいよ!極上だ」

「何が極上なの?私が極上の女って事?」

「あぁ、そうだね。お前ほど汚れた魂を持つ人間は滅多にいない。極上の味だ」

「汚れた魂?どういう事!?」

「あぁ、お前はもう死んで魂だけの存在だ。きっとお前の魂に俺は呼ばれたんだろうな。クククッ。マノアが消える間際、最後の最後に願ってくれて良かった。まぁ、最初からそうなるように仕向けたんだがな」


男は笑いながらそう言った。


「マノア?あの女!死んだんじゃなかったの!?」


あの女の事を思い出すと怒りが身体を巡っていく。


「いい色だ。ちょうど熟したようだな。少しずつ味わうのも一興だ。やはりお前を正解だったな」


そうして男はスッと息を吸うような仕草をする。


!?


私は身体の一部を引きちぎられるような痛みが襲った。


「痛い、痛い!助けて」


痛みのあまりのたうち回る私を見て喜ぶ男。


「安心しろ、少しずつ苦痛を加えて食うだけだ。クククッ」

「気が狂ってる!悪魔!あっちへ行って!」

「おやおや、私が悪魔だと分かったのか?素晴らしい!」


 その男は私を馬鹿にするように笑っている。頭の中で警報音が鳴り響く『危ナイ、ニゲロ』と。逃げようとするけれど、身体が動かない。そうして私は男に少しずつ食べられていく。


誰か、助けて……。

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私は選ばれなかった まるねこ @yukiseri

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