第13話(最終話)
次の日、フレーヴを彼の家に帰す為に、屋敷の前に馬車が停まっていた。私は当然見送りにきたわけだが、本当にこれでよかったのかと考えていた。
今、顔は取り繕えているだろうか。彼のことを考えると冷静でいられなくなってしまう。
「まあ……とにかく、気をつけて帰るんだぞ。」
「はい、また学校で会いましょうね。」
そんな、たわいもない会話を交わす。そう、これでいいのだ。
使用人が馬車の扉を開き、フレーヴに乗るよう促す。
しかしフレーヴは一度こちらを振り向くと、
「グレイ!」
「な……なんだ?」
彼はこちらへと駆け出してくる。私は呆然として、固まってしまう。一体どうしたんだと思っているうちに彼が目の前に来て、腕を引っ張られたかと思えば顔が近づき……唇が触れ合った。
「な……!?」
私が困惑している間にフレーヴの顔は離れていき、私は正気を取り戻したが、それでも驚きを隠せない。
「……また学校で会いましょうね、グレイ。」
彼はそう言って馬車へと乗り込み、そのまま走り去ってしまった。
顔が熱い。これは頰の火照りだろうか、それとも私の心が浮ついているからなのか。
私は暫くの間、小さくなる馬車を見つめ続けていた。
ああ、フレーヴが好きだ。そして彼も私を好いてくれているのか……そう考えるだけでもっと顔が熱くなってしまう。
なんという土産物を残してくれたのだ!と私はその場に力なくしゃがむことしかできなかった。
後で使用人から聞いた話によると、あの場にいた使用人達はフレーヴから、私がフレーヴを救ったという事を事細かに聞かされており、一度でいいから思いを伝えたいと言うフレーヴに協力していたらしい。
学級閉鎖が終わり、また学校に通うようになるまで私はずっと上の空のままで、また父親から説教をされてしまったのは言うまでもない。
願わなければ見ることはできない @Iwannacry
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます