宇宙戦争

夢原長門

宇宙戦争

 それは突然のことだった。例のごとく朝食をとり、子供を送り届けたあと職場に向かう。そのとき、空からの赤い光線が道路を貫いた。咄嗟に伏せてやり過ごし、光線が駆け抜けた地面を見ると、地下街が丸見えだった。通路の床に黒い影がこびりついている。どうやら直撃して蒸発、亡くなったようだ。上を見ると、底面の赤い宇宙船の船団が押し寄せていた。途端、各々の船、いや、艦は上下を翻し灰色の舷を向けると、連装大口径の主砲をこちらに向ける。そうこうしているうちに、もう一発近くのビルに当たった、主砲は砲弾のようで、炸裂した後ビルは気体になった。



 急いで職場に向かい、戦闘機に乗り込む。すでに同僚は出撃したようだ。空では対空砲に打たれた自軍の“戦闘機だった煙”が漂う。これ以上出撃してもなんの成果も残せない無意味な死を遂げることは明らかであった。しかし、私たちには街や家族を守る義務がある。だから、勝てるかなんてのは二の次で、出撃するのだ。タキシングし、カタパルトに乗る。地上員の合図があった後、強烈なGが体躯を押し潰そうとしながら機体は地を離れた。



 間も無くして、空が青色から藍色に移り変わり、高高度に達した。対空砲を掻い潜り、敵艦に接近して情報を収集する。赤錆色の艦底に、灰色の船体。主砲は、太さは分からないがとにかく大口径の連装砲で、前に二基、後ろに一基。司令所が聳え立ち、その後ろには先端が黒い突起が一本。内燃機関の排熱を担っているのか、白い煙が立ち上る。艦尾から搭載機をカタパルトで射出できるようで、なんとも攻撃的な戦闘機が現れた。これがなかなか強力で、恐ろしいことにこいつはレーダーに映らないらしい。私たちにはない超技術のようだ。

 情報収集を終え、置き土産に装備してる中で一番強い対空ミサイルをぶち込む。的はでかいからロックオンはお茶の子さいさい。引き金を引く。カチッて音と共にミサイルはベイから離れ、程なくして激烈な音を

出しながら敵艦に突進する。左舷に命中!大爆発!しかし、相手に与えられたのはほんのわずかな凹みだけだった。いかつい装甲をしているのだろう。これでは勝ちようがない。退却命令に従い。帰投した。



 突然の宇宙生命体の襲来に世界は大混乱。いつもは歪みあってる超大国も、ここは一時休戦。お互いの核ミサイルを持ちよって一番効果的な使い方を協議する。世界中の軍で連合して艦対空、空対空、地対空、挙句の果てには弾道ミサイルを打ち込んでなんとか対応。こちらも何隻か撃破するが、損害はこちらの方が大きかった。一部の敵艦は着水し、我々の戦艦部隊と壮絶な艦隊決戦を繰り広げる。我が軍最大最強の戦艦の射撃が敵艦主砲に致命弾を与え、大爆発の末に轟沈したと思ったら、敵艦のイカれた口径の主砲は我が戦艦の1/3を蒸発させる!なんと恐ろしい!



 数ヶ月にも及ぶ戦闘の末、我々は降伏した。向こうが私たちを植民地支配する代わりに、根絶やしにしないと言う取り決めを提示してきたからだ。私は植民地支配されるなんて真っ平ごめんだが、絶滅を回避できるなら支配されてもいい。それが、生命の種の保存の性なんだろう。今日は降伏調印の日、初めて、異星人が我々の前にお出ます。世間が固唾を見守る中、宇宙戦艦から大将だろうのが出てきた。胴体に四本の手足と頭。すらっとしている姿は我々とはかけ離れている。異星の気候が体に合わないのか、重装備だった。頭部にある二枚の丸い透明の窓からこちらを見ている。瞳は青くて、綺麗だった。彼らが言葉を発した。




         「ワレワレハ、チキュウジンダ。」

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宇宙戦争 夢原長門 @Y_Nagato

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