ぬらりひょんって妖怪の総大将なのに能力は微妙じゃん?と思う人たちへ……

 モンスターが跋扈し、人間がほとんどいない異世界に転移したナーリ・フォン。彼は転移の特典として、あるスキルが与えられていた。それは『合法侵入』! その効果は、他人の家に勝手に上がっても怪しまれないというもの……ぶっちゃけ微妙だね。

 だが、彼はこの微妙なスキルを駆使し、モンスターたちから迫害される妖怪たちを助けていくことで、人間でありながら妖怪の総大将「ぬらりひょん」となっていくのだ!

 本作の大きなチャームポイントは、妖怪たちが皆かわいいところ。他の現地人からは化け物扱いされる妖怪たちだが、なぜかナーリ視点ではみんなかわいく見える。もともとカワイイ系に分類されるすねこすりや雪女はもちろん、名前からしておぞましい蛇骨婆も、可愛らしいロリババアに見えるのだから、大変お得な体質だ。

 そして、もう一つのおすすめポイントが、問題解決を暴力に頼らないところ。ナーリは『合法侵入』という一見微妙な能力をフル活用し、時には仲間の助けも借りながら、異世界で立ちふさがる問題を平和的手段で解決していく。異世界での成り上がりという王道な物語でありながら、殺伐とさせることなく、あくまでハートフルな内容に仕上げいているのが見事な一作だ。


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=柿崎憲)