第8話 世界樹の真実
石像を前にして、ユウたちは静かに立ち尽くしていた。この迷宮の最奥部に近づくにつれ、空気は次第に重く、神秘的な力が漂っていることを感じる。それは単なる罠や仕掛けを超えた、迷宮そのものが放つ意思のようなものだった。
「ここが最終地点だろうな……」カイが石像を見上げながら静かに言った。
「この石像、何か重要な意味があるのかしら?」リナが慎重にその表面を調べる。石像には複雑な模様が刻まれており、その目はまるでユウたちを見下ろしているかのようだった。
ゼンが少し後ろで文献を読み返しながら言った。「この石像は、おそらく世界樹を守るための守護者の一部だ。ここにある仕掛けが作動すれば、世界樹の秘密に辿り着けるかもしれないが……その代わりに何かしらの試練を受けるだろう」
「試練か……ここまで来たら引き返すわけにはいかない」ユウは決意を固め、石像の前に立ち、手をかざした。
すると、突然石像の目が赤く輝き、迷宮全体が震え始めた。石像はゆっくりと動き出し、その巨大な手をユウたちの方に伸ばしてきた。
「やっぱり何かが起こるのね……!」リナが素早く後退し、弓を構えた。
「待て、戦うつもりはない。これは守護者の最終試練だ。俺たちがその力にふさわしいか試されているんだ」ユウは仲間を制し、石像に向かって毅然と立ち向かった。
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石像がさらに動き出し、床全体が崩れかける中、ユウはその場に立ち続けた。彼は石像がただの敵ではなく、迷宮の真の守護者であり、力を示すために試しているのだと感じた。
「俺たちは、この世界樹の真実を知るためにここに来たんだ。俺たちにはその資格がある!」ユウは力強く叫び、剣を高く掲げた。
すると、石像の動きが止まり、目の光が穏やかに変わった。その手はゆっくりと降ろされ、石像の足元にある隠し扉が開いた。そこには、輝く光に包まれた階段が続いていた。
「やった……これで、奥へ進める」カイが安堵の表情を浮かべた。
「ここが最終地点ね。行きましょう」リナが先頭に立ち、ユウたちはその階段を降り始めた。
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階段を降りると、彼らは広大な空間にたどり着いた。そこには、巨大な世界樹の根が複雑に絡み合い、輝く光が周囲を照らしていた。根の中心には、まばゆいほどの光が渦巻いており、それが迷宮の中心であることが一目でわかった。
「これが……世界樹の真実……」ユウは息を呑んでその光景を見つめた。
「これは単なる木ではない。世界樹そのものがこの世界のすべてを繋ぐ力を持っているんだ」ゼンが驚愕の表情を浮かべた。
「この光……触れれば何かがわかるかもしれないわ」リナがそっと光に手を伸ばすと、彼女の体全体が一瞬、光に包まれた。
「すごい……この光の中には、世界の歴史と未来が詰まっている。世界樹は、過去と未来を繋ぐ力を持っているのよ」
ユウもその光に手を伸ばし、触れた瞬間、彼の意識は広大な宇宙へと飛び立った。そこには、この世界のすべての記憶が流れ込んでくる。
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「これが世界樹の力か……」ユウはその力の大きさに圧倒されながらも、同時に何かを感じ取った。
「この力を乱用すれば、世界は破滅する。しかし、正しい目的のために使えば、未来を変えることができる……」
その言葉を胸に刻み、ユウは光から手を離した。
「俺たちには、この力を守る責任がある。世界樹の秘密を知った今、これをどう使うかは俺たち次第だ」
「そうね……私たちはここで得たものを、無駄にしないようにしないと」リナが頷いた。
「さあ、戻ろう。これで迷宮の旅は終わりだが、俺たちの旅はまだ続く」ユウは仲間たちに目を向け、笑みを浮かべた。
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彼らは迷宮を出て、世界樹の真実を胸に刻みながら、新たな冒険へと歩み始めた。
【完】
【完結】迷宮のマッドハウス 湊 マチ @minatomachi
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