第15話 ノーテイム魔物


「ただいま!」

「戻ったよ!」




 ハーピィたちに連れられ、パークへと帰還する俺たち。


 数日かけて行った道のりを休憩込みで数時間で戻って来れた。

 ハーピーの移動能力と脚力にはびっくりだわ。おかげで時々肩が外れるんですけど。


「待ってました! これで諸々が進みます!」

「あ、でも1つ重要なことがありまして……」


 クラリス姫に、ハーピィはテイムしていないことを伝える。


「だから、彼女らは丁重に扱ってね。じゃなきゃ……マジで殺されるかも」

「……大丈夫なんですか、それ。本当に……」


 まぁ、俺らに手を出したらどうなるかは理解していると思う。

 だけど何かの拍子で、と言うのは否定できない。


「俺の魔力上限が上がれば……」

「……それはどのくらいで?」

「んー、1カ月くらい?」

「むむむ……」


 何かを考え込むクラリス姫。

 まぁ、首輪なしで魔物と接しろなんて無理に決まってる。俺なら断固拒否するし。


「……あ、あのぉ~……こんにちは……」

「ギャアッ? ガァッガッ!」


 と思っていたら、お姫様がハーピィに声をかけ始めた。

 マジか……アグレッシブすぎでしょ!


「か、彼女は何と言っているのですか……?」

「ぷりぷりしてて美味しそう、だって」


 嘘である。

 テイムしていない魔物の言葉はわからんちん。


「……嘘ですよね?」

「やれやれ、仕方がない、やれやれ」


 仕方がなくクイーンを中継して通訳することに。


「『ぷりぷりしてて可愛い人間の女の子、こんにちは』ですって」

「私そんなにぷりぷりしてますかぁ!?」


 そんなことないぞ! ちょっとだけだぞ!


「まぁいいです。彼女たちに伝えて欲しいのですが、頼めますか?」

「はい」


 そうだと思ってずっと待機してましたので。


「では……『あなたたちの力を貸して欲しいです、可能な限りの報酬はご用意いたします』」

「力貸せ、報酬は、安全な住処と飯、それと種馬」

「……」


 なぜだろう、できる限り簡潔に、かつ先を見越して伝えてあげたのに姫様が天を仰いでる。


「ぎゃあっ! ぎゃあっ!」

「いいよー、だって」

「……」


 信じられないものを見るような顔で姫様がハーピィさんを見る。

 そういえばハーピィさん服着てないんだよなぁ。


「実はここに来る道中で似たようなことを話してたからね。無下に扱わなければ、喜んで手伝ってくれるってよ」

「……」


 何せ一族全滅の危機だった訳だし。


 ハーピィは群れを形成して生活している種族なのだが……。

 例のワイバーンのせいで50人ほどいた仲間もほとんど殺され、今はたったの5人。


 衣食種と安全を保証された環境が何よりも望むものだろう。


「……わかりました。ハーピィたちを信じましょう」


 結構腹が座っているな、クラリス姫。

 これからはもう少し優しくしよう。




「クイーンさんがレイジさんの従魔と言うことですよね? 他の……できれば大人の方2名はパークにいて欲しいのですが……」

「あーそうね……」


 俺とクイーンで話し合う。


「ぎゃあっ! がぁっ!」

「え、いや……それはちょっと……えぇ……?」

「……何だか不穏なんですけど」


 不穏と言うか何と言うか……えぇ?

 そうこうしてるうちに、子どものハーピィちゃんが俺の足にしがみつく。


「ぴよっ!」

「あら、可愛い子ですね」


 こらやめなさい! いくら魔物だからと言ってさすがに通報案件だぞ!


「ぎゃぁっ! ぎゃぁっ!」

「そんなこと言わんといてよ! ひどいよ! え、でも……んー……まぁ仕方がないか……」


 まさかクイーンがそこまで言うとは! 裏切られた気分だ!

 仕方なしに『封魔石』を取り出し、クイーンのテイムを解除する。


「がぁっ!」

「じゃあ……ちっこいハーピィちゃんを従魔にするぞ!」


 その『封魔石』をそのまま子どものハーピィちゃんに宛がい、テイムする。


「ぴよっ! ぴよよよよ~っ! ぴるるるる~♪」


 嬉しそうに、歌いながら踊り出すちっこいハーピィちゃん。

 ひよこかよ。


「え? え? 話が見えないんですけど」

「あぁ、すまない。クイーンはここに残る組、代わりにもう1人の成鳥と……この子が俺の従魔ってことになる」


 確かに、その方が魔力量的にはクイーンよりは抑えられる気がする。

 まだ子どもだからだろう。


 そしてどうしてこの子が俺の従魔になるかって言うと……本人の希望だからだ。

 恐怖の存在であるワイバーンを倒したこと、そしてスララの進化を目の当たりにしたことが理由らしい。


 ま、強くなりたいというなら存分にこき使ってあげようじゃないか。


「まぁ……私としては構いませんが……」




 その後ハーピィたちとクラリス姫とで調整し、具体的な話を進めることに。


 種馬の提供についてもスムーズに決まった。

 これはクラリス姫も当初から、人型の魔物を活用した娼館の設置という構想を持っていたようだ。


 案外強かですな。まぁ、性と食事はどうしようもないからね。

 今後も従事者は増えていくだろうし、パークならではの粋なアトラクションってことで!




 こうして移動手段を確保した俺たち。

 次なる魔物を探しに出発だーっ!


「あ、来月あたりにパークの体験会を行いますので」


 ……んへえ?

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2024年9月22日 01:00
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おいでよ!モンスターパーク!~魔王を討伐したのに元の世界に戻れなかった俺たちは能力を使ってテーマパークを作る~ 公公うさぎ @HamuUsa

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