第14話 今後を左右する悪ふざけ


 その後、『安息』の効果で幾分か回復したハーピークイーン・フライングフューチャー。

 彼女に担がれ、ワイバーンの元へと案内される。


「おぉ、ワイバーンの……番か」

「みたいだね」


 この世は弱肉強食。

 ワイバーンさんには恨みはないが……これもハーピィを仲間にするため!


「やっておしまい、ユートさ――」

「2匹いるからさ、レイジも戦ってごらんよ!」


 爽やかな顔して何を言いやがるんだか。

 確かにさっき魔石をたくさん砕いて魔力は回復したけども。


「君の力を見せた方が、クイーンたちも納得するんじゃない?」

「……」


 正論だった。


「……ということだけど、いける?」

「ギャアーッ!」


 寧ろ願ってもないと吠えるクイーン。

 仕方ない、もって数秒だけどやるか!


「『人魔一身』! ハーピィモード!」


 融合が完了。大きな翼が生え、足は猛禽類のような逞しく、爪も鋭い物に変化する。

 その翼を羽ばたかせ、上空へと舞い上がる。


 我ながらその速度に驚くが、そんな暇はない。

 ワイバーンに向かって急降下だ!


「『豪脚』発動!」


 ハーピーの特殊技能、『飛行』とその脚力を強化する『豪脚』。

 俺の能力で何倍にも強化した技能でワイバーンの頭部を捉える!


「――!?」


 結果、ワイバーンは声を上げる間もなく頭を失った。


「ふぅ……いい感じだな!」

「そうだね!」


 急いで地上に降り、『人魔一身』を解除した俺を迎えるユート。

 その背後にはワイバーンが真っ二つに分かれて倒れていた。


 いや早すぎっしょ。


 ◇


 その後、持ち帰ったワイバーンを巣にいたハーピーたちとスララが食べる。


 クイーンがぎゃあぎゃあ騒いでいるが、先程のことを話してくれているのだろう。

 俺やユートのことを畏怖した目で見ている気がする。


 これで幾分かテイムしていないことへの不安も払拭された、と思いたい。


「頼むからさ、これから行くところで絶対に暴れたりしないでよ?」

「ギャアッ……ギャッ?」


 種馬がいれば問題ないらしい。

 とりあえず一族の再建が最優先だもんな。


 あとその鳴き方どうにかなんない?


「ぴぃぴぃ!」


 そうそう、そんな感じで可愛く……ん?


「スララ!?」


 いつぞやと同じように、スララが光り輝いている!

 これは進化だろう! そうだろう!


「ぴっぴっぴっぴ……」

「……」


 進化キャンセルってできんのかなぁ……?

 心の中でBボタンを連打する。


「ぴっぴ……ぴぃ?」

「……」


 あ、スララが何か困惑してる。


「ぴっ! ぴっぴー!」

「ぐぅっ! 負けるか!」

「また君は禄でもないことをしていそうだね……」


 いやいやいや! 今後のためにも色々試そうと思っているだけで……はっ!?


「ぴーっ!」

「ちっ、おめでとうスララ!」


 進化の光が収まり、次第にはっきりしてくるスララの姿。

 最後は押し負けちまったぜ! 強くなったなスララ!


「ぴぃぴっぴっ! ぴぴぴぴっぴぴぃ!」

「おや、姿はあまり変わっていないのか……?」


 進化は完了したはずだが、その姿はパワースライムの時とあまり変わらない。

 大きさはだいだいバランスボールくらい、色も透明な水色。


「ま、後で調べるか!」

「おめでとうスララ! これで僕たちの目標にも1歩近づいたね!」


 そうだった、進化キャンセルを試す場合じゃなかったわ。

 でもスララを維持する魔力量が上がったから……これ以上ここでのテイムはできないなぁ。




 なんてことを考えていた俺。

 そしてこの時、1匹の小さい影が俺をジーっと見つめていることに気が付かなかった。

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