第13話 ハーピィのテイム


 ハーピィ。

 彼女らは美しい女性の姿をしており、時折人間の言葉や歌で旅人を惑わし、種馬にするために連れ去るという。


 ユートと2人でここに来たのは、種馬になりたかったからなのだが……。


「タ、ス……ケテ……!」


 恐らく襲った人間から学んだ言葉なのだろう。

 こうやって助けを求める声に反応した人をまた連れ去るために。


「タスケ、テ!」

「……」


 しかし、彼女らの声は本当に助けを求めているような悲痛なものだった。

 まぁ、いずれにしろテイムするつもりで来たしね。


「今からお前をテイムする。そうすればお前の言いたいことがより鮮明に伝わる。助けるかどうかはそれ次第だ。ユートもそれでいいか?」

「もちろん!」

「アイ!」


 俺の言っている意味などわからないだろうが、何となく意思は伝わったのだろう。

 多分ユートの爽やかスマイルのおかげ。


「『封魔石』!」


 言葉を発した成鳥を光が包み込む。

 戸惑いは感じるが、抵抗はしていない。する体力も無いか。


「キャァッ! ガァーッ!」

「悪いけど、大人しくしてておくれ」


 周りの成鳥2匹が騒ぎ立てるが、ユートが優しく抑えている。


「……ふぅ。やっぱり魔力ギリギリっす」


 テイムが完了、しかし魔力の余剰ががが……!

 『安息』でめっちゃ魔力吸われるんですけど! どんだけ腹減ってたのよ!


「大丈夫かい!? ほら、魔石だよ!」

「助かるるる……」


 道中で拾って来た魔石を割るユート。

 お陰で事なきを得る。




「……出て来い、ハーピークイーン・フライングフューチャー!」

「名付ける前に相談して欲しかったよ」


 せっかくならかっこいい名前を付けようと思っているのだが……いつも空回りしてしまうぜ!


「――ギャアッ!?」

「ガガァッ!? ガァガァ?」

「ギャギャ-ッ!」


 こいつらの声汚いんだけど。

 本当にこいつらの歌で人を惑わせられるのだろうか……。


「ギャアギャアッ、ギャギャッ!」

「ん? なになに……ふむ」


 直接言語がわからなくても、テイムした魔物とならある程度コミュニケーションできるぞ!


「少し離れたところにワイバーンの巣ができたそうだ。それで仲間も殺され、碌に飯も食えてないんだと」

「なるほど」


 ワイバーンとはランクBの魔物でなかなか強力な奴だ。

 空中戦がお得意のハーピーも、より強力なワイバーンには手も足も出ないだろう。


 まぁ、知ったこっちゃないんだけど。


「じゃ、目的も達成したし帰るか」

「そう言えばノノさんから伝言があるよ。『可哀そうな魔物見つけたら助けてあげないと許さないから』だって」


 何でやねん。マジで。


「どういうこと……いや」


 待てよ。


 ハーピーは知能が高く、テイムしてなくても少しだけ意思疎通が取れる。

 仲間の仇を取ってやるとか、安全な住処を提供してやるとか言えばもしかして……。


「ワイバーン倒してあげるから……残りのハーピーも一緒について来たりできない?」

「ギャギャッギャ! ギャギャ!」


 ……。


 ……。


 ……。


 その後、円滑なコミュニケーションの結果、こちらの思惑通りにいけそうだった。

 つまり仲間の仇であるワイバーンを倒せばついて来ると。


 魔力量的にテイム状態にはできないため不安であるが……まぁ、大丈夫だろう。

 クイーンが人質みたいなもんだ。


「じゃ、サクッとやってしまいましょう! ユートさんが」

「任せてよ!」


 ほんと嫌味のない爽やかな勇者様だこと。

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