第12話 ハーピィに狩られたい


「ここに……ハーピィが……」


 ハーピー捕獲作戦。

 そこに来たのは俺と、もう1人の男。


「頼むぞユート!」

「ふふ! 胸が高鳴るね!」


 普段は一途に妹を想う優男。

 その実態は……どこにでもいるただの男の子ってことだ! 多分!


 可愛い女の子(魔物)を捕まえるだなんて……いけない遊びみたいだ!




「さてさて、どの辺にいるかな?」

「基本的には崖の近くにいるらしいぞ。崖にどこかに洞穴作って巣にしてるんだとか」


 ちゃんとここに来る前に調べておきました!

 今回は目標がはっきりしてるしね。


「さすがじゃないか! 道中は僕に任せておくれ!」

「はっはー! 頼んだぜ!」


 前方に見える崖を目指し、山道を進む。

 いずれこの辺にいる他の魔物もテイムした方がいい奴がいたら、と言うことであたりをよく見回す。




 巨大なカマキリ、グレートマンティスが現れた!


 ユートの攻撃!

 マンティスは真っ二つに裂けた!


 スララよ、お食べ。




 ゴリラっぽい猿、キラーエイプが現れた!


 ユートの攻撃!

 キラーエイプは真っ二つに裂けた!


 スララよ、お食べ。


「この辺の魔物はランクCってところかな? コロシアムにはちょうどいいんじゃないかい?」

「……確かに!」


 覚えとこう。




 キラーエイプが現れた!

 たくさん!


「仲間の報復みたいだね!」

「やだ、仲間思いで素敵……ノノさーん、俺を守ってぇっ!」


 あれ、ノノさんどこ……?

 そういえば置いてきたんだった……。


「……大丈夫、君は僕が守るよ!」


 トゥンク……!


「いやいや、この程度なら俺も! スララ頼むぞ!」

「ぴぃっ!」


 いや、まあ結局他人任せ何ですけどね。

 一応俺の従魔だし……。


「ぺっ! ぺっ!」

「ウッギャァァァ!?」


 スララが唾を吐きつけたかと思いきや、キラーエイプが痛がっている!

 これは……消化液をぶっかけたんだな!


「おぉ! スララもやるじゃないか!」

「いけいけー! 強いぞスララ!」

「ぴーっ! ……ぴ?」


 喜んだのも束の間、スララは猿共に囲まれて袋叩きに……。


「い、いかん! 戻れスララ!」


 慌てて『封魔石』に戻す。

 やばっ、傷だらけのボロボロなんですけど……。


 コンは今はいない。

 いても出せない。出したら一瞬で狐の挽肉になってしまう。


「ユートすまん、頼む!」

「任せてくれ!」


 『安息』を発動させ、スララを回復させながらユートに全てを託す。


 まぁ、俺にとっては脅威の存在であるが、勇者のユートには路傍の石ころみたいなもんで。

 ものの数分でエイプを全滅させた。


「さすがは勇者様」

「まぁ、この程度は問題ないよ」




 その後も引き続き進んで行く。


 先ほどの2種の他、山岳地帯に潜むアサシンスネーク、険しい岩山を軽快に跳ねるマウンテンラビット、強力な毒を持つデススコーピオン。

 モンスターパーク的にはいまいちかなー。


 マウンテンラビットは痩せこけてて可愛くなかった。

 ほぼ全てスララに吸収させた。また進化しないかなー!


「お、あそこじゃないかい?」

「ん?」


 スララに思いを馳せていると、崖の中腹にでかい穴が開いていた。

 話に聞いたものと似ているし恐らくハーピィの巣穴だろう。


「行ってみよう! 『ウィンドウォーク』!」


 ユートが風魔法、『ウィンドウォーク』を発動する。


 この魔法は割と誰でも、一般の騎士たちでも使える。

 というか使えないと空中戦で話にならず、それこそハーピィなんかには太刀打ちできないからだ。


 俺? もちろん使えないからユートに背負って貰ってるよ。

 鎧がごつごつしてていてーや。




「ヒィッ!?」


 巣穴を覗くと、数匹のハーピーがいた。

 思ったより少ないな……。


 3匹ほどの成鳥に、2匹の子ども。そのどれもがやせ細っている。

 腕と一体化した羽も相まって、とても美しい女性の見た目だと聞いていたが……見る影もない。


「ア……ア……!」

「悪いけど、君たちを……と思ったんだけど……」


 ユートも何か様子のおかしいハーピーに疑問を抱く。


「タ、ス……ケテ……!」


 ハーピィが……喋ったっ!

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