第11話 足の匂いにはアルコール


「他の所と言えば、どう? いい魔物は捕まった?」

「ん? まぁ、癒し部門に使うにはいい感じかも」


 そう言ってノノと捕まえに行った魔物を呼び出す。


「ぴぃっ!」

「こーん!」

「(パタパタ)」

「~~~っ!? ~~~~~~!」


 スララ、コンに加え、パラリジパピヨンのパラパピ、スウィートフラワーのおじゃまむし。

 同種の奴らは出してないけど。


 おじゃまむしがびっくりしてノノのブーツの中に入ろうとしている。

 やめとけ、多分臭――。


「へぶぅっ!」

「へぇっ……中々いいじゃない! 蝶と花で、フラワーガーデン! あんたにしてはいいチョイスよ!」


 突然ノノに殴られた俺を完全に無視し、何だかハイテンションになるミライ。

 案外こういうロマンチックな感じ好きよね。


「――っ!」


 そこに遅れてやって来たクラリス姫が、猛ダッシュの勢いでスララにダイブをかます。


「はわわわぁ~! やっぱりスララさんは最高ですぅ~!」


 イラッ。


「おいてめ――」

「落ち着いて! クラリス様もこっちに来てからずーっと頑張ってくれてるからさ……」


 ミライが俺の口を押え、何やら耳打ちをしてくる。


「思うところがあるのはわかるけど……少し大目に見てあげてよ」

「もごもご」


 まぁ、ここでキレても空気悪くなるだけか。

 姫様なりに、俺たちと距離を縮めたいだけかも知れんし。広まってるけど。


「……スララ、その姫さんを優しく包んでやって」

「ぴぃっ! ぱくっ」


 ん? ぱくっ?


「ひゃあっ! 食べられ……た? あれ?」

「ぴぃぴっ!」


 顔だけ残し、姫様の全身を包み込んだスララ。


「どうやら、全身のマッサージをしてくれるみたいですよ」


 そんなこと俺にもしてくれたことないのに! ずるいよっ!


「あぁ、たしかに……これぇ……らめぇ~……んあぁ~……」

「……」


 人前で絶対に晒しちゃいけない顔で姫様がとろけている。

 マジでその顔はあかんと思うよ!


「スライムはベッドとかがいいと思ってたけど、スライムマッサージもいいわね!」

「あの顔見て、いいと思えるの凄いよ」


 一国の、それも大国のお姫様だからね。

 ベロンベロンに酔っ払ったおっさんじゃないんだからねっ。


「さすがに個室を用意しようと思うけどね」


 そう言って苦笑いをしながらも、楽しそうだ。

 まぁ、何だかんだ俺も嫌いじゃないし。


「はぁぁ~……しょういえばぁ~……れーじさまにぃようじがあってぇ……あってぇ……」


 酔っ払いが何か喚いてらっしゃいますが、何言ってるかわかりません。


「スララ、ぺっ」

「ぺっ!」

「ぷぎゃっ!?」


 極楽から一転、硬いコロシアムの壁に叩きつけられたクラリス姫。

 いいぞ、もっとやれ!


「いたたたた……コホン。レイジ様、お願いがあって参りました!」

「あ、はい」


 切り替えが早い。

 お願いって何だろう? 魔王討伐はもう嫌だよ。


「空を飛べる魔物のテイムをお願いします!」

「空ぁ?」


 確かひよこみたいなピヨピヨした魔物が始まりの森付近で……どうして捕まえて来なかったんだ俺は!

 どう考えても飛べなさそうだったけど!


「そうです! というのも、ここから王国までの道のりが険しすぎて……ちょっとした連絡をするにも命がけなんです!」

「確かに」


 激しく同意を示すノノ。

 まぁ、ここの周辺は強力な魔物と険しい山々に囲まれてますからね……。


「言いたいことはわかるけども……魔力的に厳しいんですよ……」


 空を飛ぶ……人を乗せて飛ぶとなると、それなりな魔物ばかりだ。

 ペガサス、グリフォン、ドラゴン……思いつく限り、どれもこれもランクB以上。


 今の俺にはとてもじゃないがテイムできない。


「そこを何とか!」

「と言われてもなぁ」


 あれか、飛ぶんじゃなくて飛ばしてもらうとか! 巨人種の魔物に投げて貰う的な!

 無理だ、巨人族すらテイムの魔力が足りない。


「んー……どうしたもんかのぅ」

「……あっ! あいつは!? ハーピィ!」


 ハッピー? ノーハッピー。ハーピィ!


「あぁ! あいつらならいけそうかも!」


 単体としては強くはないが、集団で襲ってくる半鳥人の魔物。

 腕は鳥のような羽、下半身が鳥の足、見た目は割と綺麗な女性。


 あいつらは危険だが、単体の強さはそこまででもない。

 テイム出来ればこの上ないパフォーマンスを発揮するに違いないだろう!


「ん、次はハーピィ?」

「いや……ノノは連れていけない。奴らは可愛い女性を好んで狙う習性があるらしい。だからノノはお留守番だ」


 この任務はかなり危険だ。

 ちなみに、そんな習性は聞いたことがない。


「か、かわいい……?」

「あぁ。お前には俺の帰りを待っていて欲しい」


 チョロ。


「それじゃどうすんのよ? 1人で行く訳にもいかないでしょう?」


 そんなの決まっているじゃないか!




「そりゃ――」

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