第10話 ノノの結界魔法
「わぁー……」
あの後は何事もなく、俺たちの拠点であるモンスターパークへと到着。
そしてそこには、いくつかの建物が出来上がっていた。
数週間前は更地だったのに……すげぇや!
「ここまで進んでるとはね。ミライとクラリス様のおかげかな?」
クラリス? 誰だっけ?
「早く行こっ」
「ちょっ、引っ張るなって」
ノノさんが俺の手を引っ張りながら出来上がった建物に向かう。
「うんうん、仲がいいのはいいことだね!」
「……」
楽しそうに俺とノノを見ているユート。
その表情には何も裏を感じさせない。
「ここは……?」
「我々や作業員の方々の居住スペースですよ」
最初の建物に近付いた俺たち、そこにいたのはお姫様。あ、こいつがクラリス様だった。
「現在20名程の作業員の方々がいらっしゃいます。これからさらに増える予定ですし、居住スペースは大目に確保していますよ」
「ほーん」
ノノさんや、もうちょっと興味を持ちなさい!
俺たちのために働いてくれてる方々の住む家なんだぞ!
「パーク開設後は、宿泊施設としても活用できるようになっています」
「ほーん」
ほーん……。
「……えーっと、あちらの一番奥にあるのが、コロシアム会場です。まだまだ建設途中ですが――」
「行こっ」
話してる途中の姫様を置いて駆け出すノノさん。
一体何が彼女をここまで駆り立てるのか。
「あっ! おかえりー! 戻ってたんだ!」
「ただいま」
「よっす! ミライもお疲れさん!」
ミライは俺たちとは異なり、ここに残って建築やらなんやらに関わっていた。
さすが大賢者様!
「ちょうどよかったわ。ノノに『結界・上』を使って欲しいのだけど、頼めるかしら?」
「いいよ」
ノノとミライは結構タイプが違う。けれど割と仲がいい。
俺とユートみたいなもんかな!
「こっちの魔法陣の上でお願い! この魔法陣はね、結界の強度を上昇させたり魔力消費を抑えるためのものよ!」
「いいね、それ。『結界・上』」
『結界』。
ノノだけの特殊な魔法で、他の人は使うことができない。
似たような魔法はあるにはあるが、効果範囲や対象が異なっている。
一般的には魔法や物理的衝撃に対して防ぐ意思を持って発動、効果を発揮する。
一方、ノノの『結界』は何となく発動、何となく危険なものを防ぐ……どないやねん!
そして小、中、上、極、絶の順番で強度があがり、魔力のコスパが悪くなるらしい。
『結界・極』でランクSの魔物の攻撃でも防げ、その上の『絶』では魔王の攻撃すら防いで見せた。
今回話題に出た 『上』はランクA程度なら、というところ。そこまで強力ではない……と言いうことらしいが、俺からしたら十分脅威!
「じゃあ、そのまま維持しててねー……『アイス・カレドヴルフ』」
巨大な剣を模した氷の魔法を唱えるミライさん。
え、大丈夫これ? この魔法で火龍をぶった切ってたよね?
「ノノノ、ノノさんっ! 大丈夫ですかねぇー!?」
「死ぬかも」
ま?
え?
「最期に、私に言いたいことは?」
「……お前に駅前のラーメン食わせてやりたかったよ」
元の世界のね。
食いたがってたし。まだあるのか知らんけど。
「ちっ」
「え? 舌打ち?」
その瞬間、巨大な氷の剣が結界にぶつかり……ヒビ1つ入ることなく受けきった。
「ふー! 成功ね! 今のは魔法を受けきれれば問題ないでしょう! 概ね『上』を『極』くらいに引き上げることができたんじゃないかしら!」
「こっちは失敗」
「え、舌打ち……」
上機嫌のミライさんをよそに、少し悲しくなる俺。
まるで飼いハムスターに噛まれたときのような悲しさ……。
「……私の前でいちゃつくな!」
それはごめん。
いちゃついてないけど。
◇
「観客席の結界を、ランクSの魔物の攻撃を防げるくらいに維持できればコロシアムは稼働していい、ってことになってね」
金づる……じゃなくて、観客に万が一があったら洒落にならんもんね。
「『上』くらいなら、半日は持つよ」
補助なしで『極』を半日使い続けるには魔力が足りない。
そこでミライは今回の魔法陣を作ったんだと。天才かよ。
「うんうん! これでコロシアムは本格的に始動できるよ!」
「いいね」
意外なことにノノさんもコロシアムは楽しみらしい。
一応、モンスターパークの目玉の催しとなる予定だからそれでいいんだけどね。
「まぁ、まだまだ魔物が足りないんですけど……」
俺の魔力上限が上がらなければ……魔王討伐を果たしたのに、さらに強くならねばならぬのが戦士の辛いところよ。
「とりあえずは弱い魔物でもいいんじゃない? それでも迫力はあると思うよ!」
「そうか……? まぁ、コロシアムだけじゃなくて他の所にも回さないといけないしな」
とにかく数を集めなければ……!
足りるのか俺の魔力。というか、上限値。いつ来るかもわからんからな、上限値の限界。
……この計画、大丈夫?
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