第15話 モンスター4

 シーナに手当てしてもらって、少し休んだ後。

 僕はシーナと一緒に山を下った。

 麓にあるシーナの村までシーナを送り届けるためである。

 一日かけて歩くと、小さな街が見えてきた。


「あそこがシーナの村なんだね。長閑でいいところそうだ」

「……うん」


 というわけでここでお別れである。


「手当てありがとうね」


 僕はそう言うと。

 シーナは首を振った。


「私のほうこそ……何度も助けてもらったわ」


 そしてシーナは視線を下げて言う。


「私何もできなかった……怖がって助けてもらっただけだった」


 そして。


「だから……うん、向いてなかったのかも。冒険者。大人しく皆と同じように……」


 自分を納得させるかのようにそんなことを呟く。


「……」


 僕はなんとなく、そんな姿を見たくないなと思った。


「シーナ。君の夢だけどさ」


「え、うん」


「僕は素敵だと思ったよ」


「……」


「今回初めて村を出て冒険したんだよね?」


「うん……でもダメだった何もできなくて」


「それでも君は初めての挑戦をする勇気があった。僕はそれは凄いことだと思う」


「アレン……」


「もちろん、家族を持って子供を作ってっていうのも素晴らしいと思うよ。シーナは美人だし優しいから、相手の人喜ぶだろうしね」


 さて。

 僕はそれだけ言い残して踵を返して歩き出した。


「……アレン!!」


 背後から大きな声が聞こえてきた。


「ありがとう!! 本当にありがとう!!」


 僕は振り向かずに手を振ってそれに応えた。

 あとは彼女の人生だ。

 どの道を選んでも彼女が納得できる人生になるといいな……と。

 そんなふうに思う。

 そして僕は僕の道を進む。

 強くなる。

 そのために剣の腕を磨く道を。


   □□


「シーナ!!」

「よかった!!」


 両親には怒られるかと思っていたシーナだが、心配して会うなり抱きついてきたので拍子抜けしてしまった。


(……愛されてるなあ私)


 それはすごく嬉しい。

 それでも……どうしても言わなくちゃならないことがあった。


「ねえ、お父さんお母さん……私この村を出て冒険者になりたいの」


 すぐに納得はしてくれないかもしれないけど。

 それでも私が私の人生に後悔しないために。

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エルフの剣聖〜魔法の才能は無かったけど、寿命が長かったので1000年修行して剣を極めた〜 岸馬きらく @kisima-kuranosuke

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