第8話 よりちゃんは愛でるもの
「レイナ先輩!貴志先輩!私、次はここ狙ってます!」
会社の昼休憩によりちゃんが心霊特集の本を持って私の横に座る。私は貴志の前にお弁当を見ながら自分のお弁当をあける。貴志のお弁当はもちろん私のお弁当も私が作っている。今回はご飯と野菜炒め、鮭を一切れ入れた上で箸休め様に卵焼きを入れた。我ながらよく出来たと思っている。
「レイナ先輩美味しそうなお弁当ですねー、自分で作ってるんですか?」
「え?そうよ?よりちゃんおいで。」
私はよりちゃんにこいこいと手を手招きする。
「もごもご...わらしきょきょ...もぎょ...いぎ...もぎゅもぎゅ...いひらいれす。ごっくん」
「よりちゃん、ちゃん食べてから喋りましょ。」
「あ、...わ、私次はここいきたいです。と言ったんです。」
口に何も無くなったよりちゃんにまたご飯を与える。可愛い...もぎゅもぎゅ言ってる。
「そこかぁ...そこもいいんだけど、実はさこんなところの調査依頼が来てるんだよね。」
よりちゃんが提示したのは
「ほうひたら...もぎゅもぎゅ...ほんはひはほほに...もぎゅもぎゅ...ひふんへふは?」
(そうしたら、今回はここに行くんですか?)
「まぁそんなとこかなー?」
よりちゃんを膝に乗せて私は自分とよりちゃんの口元にご飯を運んでいる。他の社員が通る度に私とよりちゃんを見てギョッとした顔になるが、もう慣れた。よりちゃんももう慣れたようで何も言わない。ただ一人文句を言ってくるのがいるけど...
「あ〜!!よりりん!またレイナちゃんとイチャイチャして!レイナちゃんとイチャイチャしていいのは私だけなんだよ!」
今日もきた、
「よりりん!レイナちゃんから離れなさいよ!」
「私が離れたくてもレイナ先輩が話してくれないんだから仕方ないじゃない。で?なんのようなの?」
「そうよ、光。よりちゃんの居場所は私の居場所よ。で?何かあったの?」
「もー!よりりんばっかりずるいです!っとそうそう!聞いて下さいよ!この間、旧吹下トンネル行ってきたんですよ!」
その言葉に貴志が反応する。
「旧吹下トンネルに幽霊が出るって言われたのでこれはもしかして!って思って、でもなんにもなかったんですよー!!ほんと行きぞん!!マジ無いですよー!」
そう言って私たちの座っているテーブルにあった椅子に座る。
「そもそもそんなとこ行ったからって簡単に会えるものでもないでしょ?光、あんた霊感とかあるの?」
「え?霊感ですか?そんなのないですよ?あるわけないじゃないですか。」
そう言って光はケラケラ笑っている。まぁ見えたところで騒いで逃げ帰るのは目に見えてるけど...よりちゃんを見習いなさい。よりちゃんを。
「レ、レイナ...せんぱ...い...くるじ...い。」
いつの間には私はよりちゃんをギューッと抱きしめていたようだ。ごめんごめんとよりちゃんの頭を撫でて謝る。
「私、次は
「あまり危ないことしないのよ?」
「わかってますよー!」
その日はそんな話をして解散した。
後日、仕事終わりに貴志によりちゃんと一緒に呼び出された。
「さて、この間話していた次の心霊スポット調査なんだけど、やっぱり旧吹下トンネルに決まったよ。」
貴志は心霊スポット特集の雑誌を広げる。
雑誌には白い着物の霊がでるや、男の霊が出る、赤ちゃんの鳴き声が聞こえるなどの曰くがあるそうだ。
「ねえ?ここってなんで心霊スポットってなってるの?」
「レイナはしらないか、実はここはトンネルが3っつ重なっているんだ。一番下にあるのは新吹下トンネル、その上に横に重なるように通ってるのが旧吹下トンネル。その上に更に重なるように通ってるのが旧旧吹下トンネル。旧旧の方は今や誰1人として通れないようになってるんだ、調査すら許可もされない。」
「それでなんで幽霊が出るの?」
「少しだけ話をしようか。むかし、トンネルを抜けた先に居酒屋があったらしい、で、そこは母と娘で経営していたらしい、娘には幼い赤ちゃんがいたらしいんだけど、ある日強盗が押し入った。母はその場で刺殺され、逃げた母子は旧旧吹下トンネルまで逃げたんだ。だけど男に捕まってしまってね、トンネルで2人とも刺殺されて男も気が狂って自殺したとゆう事件があったのさ。その3人の無念が未だに残っている...って話なんだけど。実はまだ当時の事を知る人がいてね、詳しくは話せないんだけど、犯人は捕まってるし、亡くなった3人は居酒屋の方で亡くなったらしいんだ。
だけど、何故かトンネルでの幽霊目撃談が出来上がった。トンネルってさトンネル自体が霊を呼び寄せるとかよくゆうからなんとも言えないんだけど、このトンネルは近くに小さい川も流れてるし、普段からトンネル入口とかは湧水で水滴が落ちたりしてるから余計に霊を呼び込むんじゃないかな?しかもトンネルが縦に3つ並んでるなんてかなり珍しいからね。」
貴志はこのトンネルについて詳しく話してくれた。実際、事件も起きているし事故現場でもあるかもしれないと、真祖ははっきりと出ていないが、霊が集まるのは間違いないとの事だった。そもそもなんでそんな凶悪事件の現場に行きたいのか分からない。
「そういえば、疑問に思ってたんだけど、よりちゃんはなんで心霊スポットなんかに行きたいの?」
「私ですか?母や祖母に言われてるんです、この世にはあの世に行けない可哀想な霊がいるって。もしそんな霊を見つけたのなら導いてあげるのも力を持つ私たちの役割なんじゃないかって。母や祖母もそういった霊を見送ってきたそうなんです。だから私も見習ってるんです。」
よりちゃんは生魚の霊を思い出したのか、少し悲しそうな顔を見せた。
「だからといって全員が全員、成仏を望んでいる訳では無いのはわかってるんです。ま、全て上手くいくとは最初から思ってないので。経験を積みたいんです。」
お母さんもおばあちゃんも偉いなー、その言いつけを守るよりちゃんはもっと偉いなー
「って事は、よりちゃんは霊能者として今後は活動していきたいってことなのかな?」
「いえ、そうゆう訳ではないんです。私は霊能者として活動するつもりも無いので。普通に働いて普通に結婚して...普通がいいんです。霊が見えるってだけで昔嫌な思いしてるので...」
「わかった。ならよりちゃんの件は俺たちだけの秘密だな。」
そう言うと貴志はよりちゃんの頭を撫でる。よりちゃんはホッとしたのか貴志に頭を下げている。霊が見えるって大変なんだなぁと思いながら私もよりちゃんを愛でていた。
「と、言うわけで俺のツテで見つけた旧吹下トンネルのオーナーから依頼が来てるんだ。旧旧の方はもう封鎖されてるから、とりあえず何故ここに霊が出ると噂されているのか調べて欲しいと。」
私たち二人は頷く。本当は嫌だけど、よりちゃんを愛でる券を貰ってしまった以上駄々をこねる訳には行かない。
「所で、貴志先輩はどうやって依頼を取ってるんですか?」
「ん?あぁ、市やその建物のオーナーなんかに連絡してこういったことを真剣に調査していますってね。調査報告書を提出して現状どうなっているのか、今後どうしたらいいのかなんかを提案してるんだ。それを踏まえて調査後にどうするとかは依頼主に委ねる形にしてる。」
「それ、いいですね。貴志先輩そう言うの得意なんですねー、尊敬します。」
「でもさ、調査したからってそこが心霊スポットって噂は無くならないよね?それでいいの?」
「それは俺たちにどうにか出来る問題じゃないかな?今やリューチューブや他のSNSなんかで大々的に広められてるからね。まぁ俺たちに出来るのはここが危ないとかそういったのを警告するぐらいさ。場所や建物、後は霊がいるとかいないとか。不用意に踏み込んで同行することは無いよ。」
貴志の説明でホットした私とよりちゃんはお互いに頑張ろうと顔を合わせる。こうして決まった旧吹下トンネル調査でまさかあんなことがあるなんて今の私達は知る由もなかった。
心霊スポットは出会いに溢れていた。 午後の善茶 @sakurasaku001
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