番外編 なにも知らないおっさんの趣味

 家に帰った俺は、結衣さんの持っているパンツと釣ったものを入れ替えるためのタイミングを見計っていたのだが、彼女は一切隙を見せなかった。


「はぁ……。結局今日はなにもできなかったな」


 一日中タイミングを探していたのだが、そんなことをすることもできず、とうとう風呂に入る時間にまでなっていた。

 相変わらずいい湯だ。なんと言っても、ボロアパートとは違って広いもんなぁ……。


「よし、パンツ入れ替え大作戦を考えるか」


 実行は明日になってしまうかもしれないが、それは仕方のないことだ。成功さえすればそれでいい。

 目を閉じて集中しようとしていると、脱衣所から小さな物音が聞こえてきた。


「誰かいるのかー?」


 返事はなかった。でもなぁ、確かに聞こえたはずなんだよな……。泥棒とかだといけないし、確認だけするか。

 なにもないことを祈りながら、恐る恐る扉を開けてみると、案の定そこには一人の女性の姿があった。


「……なにしてるんですか、結衣さん」

「ひゃっ!」


 そんなところで小さくなってないで、早く出て行ってほしい。どうせ、覗きにきたんだろう……。


「修也くん、前隠しなさいよ!!」

「——え?見に来たわけじゃないんですか?」

「私がそんなことするわけないでしょ!それに、そんな勇気もまだないし……」

「じゃあなんでここにいるんですか」

「え、えーっと、ナンデダロネー……」


 怪しい。明らかに怪しい。

さきからずっと、俺から目を逸らしている気がするし、うしろになにかを隠している気もする。

 はっはーん、もしかして、下着泥棒だな!?

どうせ、俺のパンツでも盗もうとしていたんだろう!


「白状してください!この手に隠してるものはなんですか!」


 強引に取り上げてやった。

ほーら、分かるぞ。手に伝わる感触だけでも分かるぞ。どうせこれはパンツだ!


「結衣さん、これはなんですか!」


 目の前で広げてやった。

それは、なんだかヒモのようなもので、パンツと言っていいものなのか分からないほどのものだった。

 これだと、あんまり隠せなくないか……?


「……結衣さん、本当にこれなんなんですか」

「そ、それはパンツよ!あなたのものと入れ替えて、それを履かせようと思っていたのよ!」

「えぇー……」


 言葉が出なかった。

つまりアレか。俺と同じことをしようと思っていたのか。なるほど。それなら話は早い。


「……分かりました。俺はこれを履きます。その代わり、結衣さんはこれを履いてください!」


 着替えを入れたカゴの底に隠していたパンツを取り出し、それを彼女に見せてやった。

これならば、お互いに得できるだろう!

ん?なんでそんなに驚いたような顔をしているんだ?そんなに変わったデザインでもなかったような気がするんだが——。


「げっ!?」


 カゴから取り出したときなのだろうか、どこかで引っ掛けてしまっていたらしく、とてつもなく布の面積が狭くなっていた。

 これだと大事なところほとんど隠せないじゃないか!!流石にこんなもの結衣さんが履いてくれるわけないよな……?


「……分かったわよ、それ履けばいいんでしょ、変態。でも、あなたもこれ、履いてよね」

「えぇ!?いいんですか!?」

「仕方なくよ!」


 それぞれパンツを受け取り、履いてみせた。

やべぇ、恥ずかしすぎる……っ!

 このあと、ミィが入ってきてめちゃくちゃ焦った。

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なにも知らないおっさんが異世界転移する話 TMK. @TMK_yoeee

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