番外編 なにも知らないおっさんの趣味

 河原でたった一人。リリーに聞いて、俺はとある川へやってきていた。どうやらその川は、絶好の釣りスポットということで有名で、大きいものも釣れるらしい。


「釣りはあっちでもあんまり経験ないが、流石に一匹くらいはとれるよな……?」


 そんな心配をこぼしながら、竿を振った。竿と言いましてもシモの意味ではなくて。

 この世界に来てから、こんなにものんびりできたのは初めてじゃないだろうか。

クエストとか、女の子たちのこととかでいろいろ大変だったからな……。


「はぁ、平和だ……」


 これが本当の平和って言うんだろうな。

竿がぐいっと引っ張られる。お、早速なにかがかかったようだ。ちなみに竿と言いましても(以下略)


「異世界初の一匹目、とったどぉぉお!!」


 引き上げてみると、針に引っかかっていたのはただの木の枝だった。

どうやったら、上手いことそんなものが釣れるんだよ……。

まぁ、気を取り直してもう一回だ。釣りに必要なのは忍耐力だ。気長に待つとするか……。

 そんな呑気なことを思っていると、再び竿がしなった。それも大きくだ。

 大物きたんじゃないか!?


「ぐぬぬ……重たすぎる……っ!けど、ジム通いのおっさん、なめんなぁぁぁぁあ!!」


 フルパワーで釣り上げ、感動にしたろうとしていた矢先、それが俺の顔にべちゃっ、とくっついた。


「なんだよ、これ……」


——変わった感触。

 それは、明らかに魚のものではないと分かった。またハズレかよ……。

一応、なにが釣れたのか確認しようと、手にとってみて驚いた。


「おいおい、これ、ハズレじゃなくて、大当たりじゃねぇか……!」


 少し奥が透けていて、ひらひらの付いた黒いもの。


「——き、きたぁぁぁぁ!大人のパンツだぁぁぁぁっ!!」


 両腕を天に向けて振り上げた。

こりゃあある意味、大物だ……!

結衣さんのものを一枚奪って、これと入れ替えることが出来たら……!ぐへへへへ。

よし、急いで帰ろう!

 濡れたままのパンツをポケットに突っ込み、俺は家に帰ることにした。

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