クラスにいたはずの君と、居たはずなのにいなかった僕

@Moukakuyomi

第1話 居たはずのきみといなかった僕

 三月十五日、卒業式が終わった。 


 一年前とは全く違う気持ちだった。

 色彩は色付き、桜は芽吹き蕾は膨れ上がっていた。

 小説の様に桜舞うことはなくとも、この世界は色付いていた。


 …なんだか、考え深い様な、夢心地の様な気持ちになっていた。

 未来へ向かうことがどうしようもなく怖かった俺が、今はどうしようもなく落ち着いていて、前を向ける様になっていた。

 

 太陽が祝福する様に陽光が差し、心地よい風が俺の隣を通り過ぎていった。


 その時どうしようもなく彼女に会いたくなってしまった。

 

 彼女に変われた僕を見せる為に一歩を踏み締めて、会いに行こうと、そう、思った。




……




 三月中十五日、だったけ?


 はぁ、どっちでもいいや。

 というか、どうでもいいや。

 

 カーテンの隙間から陽光が差す。

 

 朝が嫌いだった。

 ずっと夜にいたかった。

 どうしようもないくらい、「明日」がある事を告げる朝日が嫌いだった。

 

 朝起きときに真っ先に思い浮かべるのは、今に対する失望感と、早く終わって欲しいという諦念だけだった。

 

 「はぁ、、、いつになったら終わってくれるんだ、、、」

 

 枕にうつ伏せながら顔を横に倒し、

 そう、呟く。


 後一回、もう一回寝れば今日が終わってくれると本気で思っていながら、二回目の眠りにつく。

 

 きっと二度と変われない日常だと思って。




……




 あたまがぼやけてる。

 少しずつぼやけ目のめをあける。

 目を完全に開けた時、

 そこには完全にヤクザのなりをしているガタイの良い男が立っていた。 

 

 パッと見でも、百八十センチは超えている身長と、いかついモヒカンヘアーがそこにあった。

 

 なんかしたっけな?東京湾に沈められるのかな?

 とか馬鹿な事を考えながら、

 死ぬのかな?とも思ったけども、

 不思議と恐怖は湧かず、

 それもまた運命かと受け入れていた。


 だからなのだろう。不思議と口走ってしまった。


 「僕は殺されるんですか?」


 そう言った。

 

 そういうと厳つい男が、

 心底驚いた様な、少し悲しんでいる様な、

 口下手な様子で


 「いいや?」

 

 と、だけ言ってきた。

 妙に静かな声色で言ってくるから、余計に不気味さを増している。

 

 とりあえずベットに腰掛けるのをやめて、小さなテーブルの前に腰掛けることにした。

 そうしたら立ったままだったゴリラが自然と僕の目の前に座り始めた。

 無言でだ。

 

 

 ……



 一分が経過した。

 

 お互いに微妙に目線を合わせない様にしながらちょこんと座っている。

 その間の会話は皆無。

 虚構とはこういうことなんだろうか。

 羊が一匹、羊が二匹、羊が三匹、羊が四匹羊が五匹、羊が六匹…ets〜〜



……




 羊が百十五匹を超えようとしたタイミングでちらっと相手の顔を見てみる。

 ちらっとだけね?

 

 強面の顔からは想像もできないほどのアホ顔をしていた。

 口は顎外れたんか、というくらいパカっと開いており、

 目はお薬をキメている人の様な目線をしており、

 焦点はどこにあるんだというくらい、ブレブレだった。


 このアホ顔と、口下手な様子に、謎の共感と親近感を覚えたら僕は、

 とりあえずゴリラに会話をする試みを行った。


 「なんで来たんですか?」


 男の焦点と目線がギュンッと言いそうなくらいのスピードで、一瞬で戻り、口元もキリッとした口に戻った。


 「、、、タノマレタ ツレテク オマエ ムリヤリニデモ ユウカイスル ウミノチカクニ。」


 え?、、、やっぱ沈められるの?

 最初聞いたら違うって言ってたじゃん。

 

 「それだけは勘弁できませんかね?」

 「ムリ ナントシテデモツレテク。」


 ゴリラとの和平は実現できなかった。

 同時に僕の生存の可能性があった世界線も消失した。

 グッドバイ!ネットの住人たちよ、また会う日まで。


 次の瞬間、一気に眠気が襲ってきて、視界がふわっと歪んでる気がして、?

 あ、やば、、、ぃ          バタッ


 僕は3度目の眠りについた。





 

 






 

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