21. 兄、超強化!

「あの……これって何なんでしょうか?」

「これは【マジカルスターロッド】と【タンバリン・オブ・ハラスメント】さ♪」

「いや名前ではなくて、ってタンバリンのネーミングッ!?」


 アイテム名ではなくどんなアイテムなのかを聞きたかったのだが、タンバリンのあまりのネーミングにツッコミを入れてしまった。


「まぁ、詳しい説明は製作者のバーチャに任せるよ」

「はぁ……えっと、バーチャさん。このアイテムの事を教えてもらって良いですか?」

「おっけ~。えっとね~。これは【マジカルスターロッド】と【タンバリン・オブ・ハラスメント】って名前のアイテムだよ~」

「追加情報無しっ!?」


 今確信した。こいつら俺で遊んでやがる!


「マハール君は元気だね~。ミシャが気に入るのも分かるよ~」

「でしょ? この打てば響く感じが丁度良いんだよね♪」

「にーちゃんは何時もこんなだよ? 何時も突然大きな声出すの」


 ――もぅやだこいつ等。何で今日はリンスさんが居ないんだ。……モカさんに会いたい。


 プログレス・オンラインで唯一の癒し要員であるモカさん。今俺は無性にモカさんに撫でて欲しくなった。

 ちなみにリンスさんは基本的に気の良いお姉さんなのだが、周りの影響でノリだすとこいつ等と同じカテゴリの者へとジョブチェンジする恐れがあるので、信用し過ぎると危険なのだ。


「さて、このままだとマハール君がいじけちゃいそうだから説明の続きをお願い」

「りょ~。じゃあ、まずマジカルスターロッドからね~」


 マジカルスターロッド。

 その魔法少女が使ってそうなステッキには五つの小さな星の装飾があり、その数だけ魔法を封じ込めておく事が出来る。

 ただし、封じ込めて置ける魔法はスキルレベル50までの物だけであり、一度使ってしまうと無くなってしまう。

 尚、これには既に5つ分の魔法がミシャさんチョイスで籠められている。


 タンバリン・オブ・ハラスメント。その装備の効果は3つ。

 1.音を鳴らしている間、効果範囲内のモンスターの機動力を減少させる

 2.音を鳴らしている間、使用者は技能も魔法も使用不可

 3.音を鳴らしている間、効果範囲内のモンスターからのヘイトを少しずつ蓄積する


「使いどころが難しそうなアイテムですね」

「まぁ、ぶっちゃけどっちも失敗作だからね~」

「失敗作なんですか……」

「開発費が掛かった割には微妙な性能になっちゃったのさ~。……このアイテムの原価知りたい~?」

「……遠慮しておきます」


 知ってしまったら、俺はこのアイテムを受け取れない気がしてならなかった。


「ちなみにマジカルスターロッドには、ミシャからの要望である追加機能があってね~。……あれ? これって説明して良かったんだっけ~?」

「うんにゃ、まだ駄目だね。これは然るべき時に伝える手はずとなっているのさ!」

「……すっごい不穏な気配を感じるんですけど、今教えては貰えないんですか?」

「それじゃあ面白くないからね!」


 絶対に碌な物じゃない。ミシャさんの発言を聞いて俺はそれを確信した。

 

「さぁ、これで提供するメインアイテムの説明も済んだね。次はサブアイテムさ!」


 そう言って差し出されたアイテムは2つの指輪と、中身の詰まった小袋だった。


「これは【トリックリング】って奇術スキル専用装備なのさ。そしてその効果はリングに設定している装備と現在の装備の入れ替え。そしてこのリングは奇術スキル10毎に1つ装備出来て、今のマハール君の場合は2つ装備出来る事になるね」

「あぁ、だから奇術スキル20まで上げさせたんですね。バーチャさんのステッキとタンバリンを簡単に入れ替え出来るように」

「そそ。そしてこっちの小袋は癇癪玉が入ってるから自由に使って♪」


 魔法少女風ステッキに可愛いおもちゃのタンバリン。そして奇術スキル専用装備の指輪が2つに癇癪玉。以上が今回提供された秘密兵器だ。

 ちなみに癇癪玉以外は貰うのではなく、あくまで借り物だ。どれも今の俺では到底買えないような値段のアイテムになっているので、絶対に戦闘で壊したりしないように気を付けないといけない。


「にーちゃん、良いなぁ~」

「勿論、チアちゃんにもプレゼントがあるのさ! はいこれ、美味しい美味しいクッキーだよ♪」

「クッキー!? やったー♪」


 可愛い小袋入りのクッキーを貰ってはしゃぐチア。

 俺だけアイテムを提供されて羨ましがるであろうチアを宥める為、事前に用意してくれていたのだろう。ぶっちゃけ凄くありがたい。


「これは只のクッキーじゃなくて、機動力と筋力のステータスを3分間上げてくれるバフ料理でね。ぶっちゃけ結構高価なアイテムで、数も5枚しかないから使いどころは慎重にね♪」


 ミシャさんからその話を聞いた瞬間、俺は自身のステータスの限界値に挑む勢いで動き、既に小袋からクッキーを1枚取り出して食べようとしているチアからクッキーと小袋を取り上げた。


「あーー! にーちゃんが盗った!!」

「これは俺が預かる。俺は1枚も食べないし、全部チアが食べて良いから使いどころは俺に任せろ」

「えー、それチアが貰ったお菓子だよ!」


 ぶーたれるチアを宥めつつクッキーを確保する俺。そしてそんな様子を見て笑っているミシャさん。


 ――この人、わざと説明を後にしてクッキーをチアに渡しやがったな!


 悪人ではないが性格は悪い人物だと改めて認識しつつ、何だかんだでこのクッキーが一番の戦力強化になるかもしれないなとクッキー入りの小袋を大事にインベントリへと仕舞った。

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妹が悪の幼女幹部になった件 七瀬 莉々子 @nanase_ririko

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