第10話 破滅の先に

直人は決断した。シグナルの力を信じ、さらに強力に未来に干渉することで、この状況を修正しようと考えた。佐倉は驚いた表情を浮かべたが、直人の決意の強さを感じ取り、ただ無言で彼の行動を見守っていた。


「このままじゃ俺たちの未来も危うい。けど、ここで諦めるわけにはいかない…!」


直人はシグナルのパネルに再び手をかけ、制御システムを最大限に操作した。装置が激しく振動し、室内は一層強い光に包まれた。まるで時間そのものがねじ曲がるような感覚が直人を襲ったが、彼はその中で冷静にシステムの操作を続けた。


「この力を…使いこなすしかない!」


彼は未来のシナリオを再び選び、学園全体を救うべく、すべてを修正するよう試みた。しかし、シグナルのシステムは限界を超え、警告音がさらに激しく鳴り響いた。


「直人、これ以上は危険すぎる!シグナルが暴走する!」佐倉が叫んだ。


「分かってる…でも、今ここで諦めたら、すべてが終わるんだ!」


直人は歯を食いしばり、システムに最後の命令を入力した。スクリーンに映し出された未来のシナリオは、彼らが選んだよりもさらに複雑なものへと変わっていった。シグナルの力が暴走し始め、未来のあらゆる可能性が交錯し、現実が崩壊しそうな瞬間だった。


「頼む…うまくいってくれ…!」


直人の祈るような思いが届いたかのように、装置の振動が一瞬静まり、スクリーンに映る未来のシナリオが安定した。それは、彼が望んだ未来だった。


学園が救われ、直人と佐倉も無事にその未来を生き抜くシナリオが表示されたのだ。直人は安堵のため息をつき、佐倉も肩を落とした。


「やった…これで未来は変わった…」直人は呟いた。


しかし、次の瞬間、装置が再び激しく揺れ始めた。シグナルの力が限界を迎えたのだ。直人は慌てて制御を試みたが、すでに遅かった。装置が発する光がさらに強まり、部屋全体が崩壊しそうな勢いで揺れた。


「直人、早くここから逃げないと!」佐倉が叫ぶ。


直人は佐倉の手を取り、すぐに出口に向かって駆け出した。装置の暴走は止まらず、周囲が歪み始めた。まるで時間そのものが崩れ落ちるかのような光景だった。


二人はかろうじて出口へとたどり着き、外へ逃げ出すことができた。背後でシグナルの装置が爆発し、室内が光と共に崩壊するのを目の当たりにした。


「これで…終わったのか?」直人は呆然と立ち尽くした。


佐倉は静かに頷き、「未来は変わったわ。でも…」と続けた。


「シグナルを完全に制御することはできなかった。私たちはこの未来にたどり着いたけど、その代償が何だったのか、まだ分からない。」


直人はその言葉に重みを感じながら、学園を見渡した。彼らは自分たちの安全を確保しつつ、未来を変えることができた。だが、それは一つの未来に過ぎない。学園全体を救うことができたとしても、他に失われたものがあるかもしれない。


「俺たちは…未来を変えたけど、まだ全てが解決したわけじゃないんだな。」


佐倉は頷きながら、「シグナルの力を完全に理解するには、もっと多くの犠牲が必要だったのかもしれないわ」と静かに言った。


直人は遠くに広がる学園の景色を見つめた。未来はまだ続いている。シグナルの力を使って得たこの未来が、どのような結末を迎えるのかは、これからの彼らの選択にかかっている。


「俺たちにはまだ時間がある。どんな未来が待っていようと、俺たちは選び続けるしかない。」


佐倉は微笑みを浮かべた。「そうね、未来はまだ私たちの手の中にある。」


---


終わり

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【完結】「シグナル 〜未来を告げる電波〜」 湊 マチ @minatomachi

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