第19話:囲う人たち
京都駅近くに六孫王神社というこじんまりとした神社がある。
その近くには細い路地がいくつもあり、良い感じの喫茶店や古着屋さんがあった。
学生の時分、自転車でその辺りを散策するのにハマっていたことがある。
その日も古着を漁って、日が沈み始めたのでどこかで夕食をと思って自転車で辺りを散策していた。
そこで、その集団と遭遇した。
20代から50代くらいの男女六人が、道の端っこで電柱を囲うように丸くなって立っていた。
服装はバラバラで、スーツ姿もいれば近所に買い物にでも行くような普通の格好もいて、顔つきや体格も明らかに血のつながりはないまちまちな感じだった。
彼らは俯いて電柱の根元を見つめながら、低い声でボソボソしゃべっている。
何だろうなぁと思いつつ自転車で後ろを通りすぎると、「殺してやる」「死ねばええ」「なんの価値もない」などという暴言を吐いているのが分かった。
ぎょっとして振り返るが、彼らは私が通ったことなど意に介さず、ぶつぶつ暴言を吐き続けている。
どういうことやねんと思いつつふと電柱の根元を見ると、そこには梅干しがぎっしり詰められたプラスチックの容器が置かれていた。
ますます訳が分からず、触れてはいけないと思って急いで自転車を漕いだ。
そして路地を曲がる瞬間、もう一度だけと思って振り向いてみた。
すると、六人がこちらに顔だけを向けていた。
夕陽もだいぶ沈んでいて路地は暗く、彼らの姿は黒い影のようにしか見えなかった。
けれども、カッと見開かれた眼の白目だけはやけにギラギラ輝いて見え、背筋がゾクゾクっと冷えた。
急いでその場を離れて、近くにあった六孫王神社に参拝した。
その集団とはそれきり、遭遇したこともなければ、誰かから見かけたという話も聞いたことがない。
奇譚集積場 洲央 @TheSummer
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