第18話:黒夜夢

 郵便受けからチ〇ポが生えていた。


 アパートの三階、ずらっと並んだ五部屋のすべてから、大小さまざまなチ〇ポが勃起した状態で突き出されていた。


 あまりに光景に階段を上がったところで立ち止まってしまった。


 えっ、なにこれ、えっ。


 頭が真っ白になってから、いやいやおかしいでしょと脳みそが騒ぎ出す。


 辺りは暗くて、人の気配はまったくない。


 当たり前だ、深夜十二時を過ぎたところだもの。


 酒なんか飲んでないし、寝不足だったわけでもない。


 ただ散歩に行って帰って来たら、郵便受けからチ〇ポが出ていた。


 一本だったらまだ理解できた。


 変態な住人が自慰行為をしているか、恋人とそういうプレイに興じているのだろうとドン引きで済んだ。


 しかし、五本である。


 そして、最悪なことに一番奥の角部屋、私の部屋からもチ〇ポが出ていた。


 誰かが勝手に私の部屋に侵入して、扉の向こうでパンツを下ろして勃起させ、わざわざ郵便受けを外から一回開けた状態にしておいてから、そこにチ〇ポを挿入しているのである。


 考えたくない。


 キモすぎる。


 警察……その前に証拠の写真を撮ろう。


 そう考えてスマホをかざすと、チ〇ポなんてどこにもなかった。


「は?」


 目を画面に向けたその一瞬で、五本のチ〇ポは消えていた。


 おそるおそる近づいて各部屋の郵便受けを確認するも、普通にピッタリ閉じていた。


 自分の部屋まで行って、これで鍵が開いていたら最悪だと思いながらドアノブを引く。


 ガチャッガタンッ、ドアは開かず、鍵を開けて身構えながら部屋に入るも、侵入された痕跡などは見当たらなかった。


 2021年8月某日に見た、白昼夢ならぬ黒夜夢である。

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