第3話 第一回マルスラ強化合成

「さぁ、マルスラ合成していくぞ」

「ready...」

「よし。まずは一匹を使ってその次は二匹、その後は残った三匹を合成してそれで完成したのをお前に合成するぞ」

「okay...」

「……あぁ、そうだ。抵抗される可能性もあるから合成が完遂するまで動かないように拘束しておいてくれるか?」

「okay...」


自宅の裏庭にある地下室、あまり入ったりしないけど偶に父さんがお酒を買ってきて母さんにばれないように隠していたり、母さんが父さんに内緒で嵩張るダイエット用品を隠したりしている少し広めの空間。そこで簡単に仕切りを作ってその中にマルスラを出してから今からすることを伝えていく。仕切りを用意した理由はフュージョナーを利用した時に誕生した生物が暴走するという情報があるのでそれに対しての対策と、フュージョナーによる生物同士の合成で対象にした生物が暴れた時に巻き込まれないようにするための対策だ。合成後のマルスラが暴走して俺が死んだ場合は自動的に父さんのスマホに緊急連絡が入るようになっているし、地下室の扉も自動的にロックされるようになっているから最悪の場合に関してはケア出来ていると思う。死なないことが一番ではあるけどもね。


とまぁ、それは置いておいて。早速合成を始めていこうと思う、最悪の可能性を考え続けても仕方が無いしそもそも考えたところで明確な答えは出ないからね。

マルスラの横に出すのは昨日捕獲してそのまま保管庫に入れっぱなしにしておいたただのブルースライム。テイマーの能力として言葉を介さない意思疎通だったり、テイムした魔物の感情を汲み取れたりする能力があるらしいのだけど、どうやら俺はその手の能力を保有していないらしくマルスラのように明確に意思表示されないとその辺りの情報を把握できない。のでマルスラには合成する前から素材とするスライムを拘束しておいてもらう。


「……んー? 何かメニュー表みたいなのが出て来た?」

「something wrong...?」

「いや、想定していなかった物が出てきただけだ。取り敢えずそのまま拘束を続けておいてくれるか? 殺さないように気を付けてな」

「okay...」


………ゲームみたいな画面が出てきたな。左上にフュージョナーの明記があるということはフュージョナーの能力の一環だとして...生物同士の合成だからか? それともテイムして使役下にある生物同士だからか? ……考察は後にしようか。

この画面で出来そうな事は合成、融合、交配、接合、抽出、それから新生。それで軽く弄ってみた限り現状で使えそうなのは合成と融合と抽出の三つだけ、それ以外は反応がないというか頭の中でしても無駄だと何故か理解出来る。それでまず抽出に関してだけど指定した生物から要素を取り出すようで、ブルースライムをしていすればスライムエッセンス、ノーマルエッセンス、再生、粘性体、疑似不死性(核)といった物が取り出せるらしい。これらが何かは分からないが、おそらく合成する時に使用できる特殊な物質ということと考えて良いだろう。より詳しい情報に関しては明日以降色々とテイムしてみて調べればいいだろう。それで次に合成と融合、これらは今日までやってきた一つの生物にする能力みたいだが、合成は一つを主にしてそれ以外を素材にする形、融合は二つ以上の存在を一つにして新しい存在を生み出す形のようで主となる生物を指定できないみたいだ。今回の主目的がマルスラの強化ということを考えると今回利用するのは合成でいいだろう。


「さぁ始めるぞ、準備は良いか?」

「of course...」

「なら行くぞ」


合成を選択して主とするのはマルスラ、素材とするのは拘束されているブルースライムだけ。仕切りに使用している鉄柵に床のコンクリートまで指定出来たけれど、生物同士の合成が今回の主目的であるのでマルスラとブルースライムだけを対象にしておく。指定が完了して合成開始と生えて来た文字を押せば仕切りの内側にいたマルスラとブルースライムが光に包まれてそのまま一つの塊となるように重なっていく。


「Perfect...」

「……無事に完了したみたいだな。異変はないか?」

「No problem...」

「…? まぁお前が問題ないというのならばそうなのだろう」


少しマルスラの発音が流暢になった様に感じるが、取り敢えず暴走することもなければ狂った様子が見えないところから考えるにおそらく大丈夫だろう。少なくとも合成という能力単体で考えれば暴走を引き起こす事はないと見て良いか、合成の素材とされる魔物が暴れる可能性があるから確実に大丈夫で安全だとは言えないがな。


「……大きさに変化はないみたいだな? 何か良い方向での変化はあるか?」

「Freedom...」

「自由? ………体の変化に自由が利くようになったということか?」

「Exactly...」

「なるほど...取り敢えず次の合成を始めても良いか?」

「Okay...」

「じゃあ始めるぞ、同じように拘束しておいてくれ」


ブルースライム二匹を保管庫から取り出し、マルスラに拘束してもらってフュージョナーの能力を起動する。同じように画面が出てくるので同じように合成を選択してマルスラを主にして素材として二匹のブルースライムを選択して合成開始を押す。そうすればマルスラと二匹のブルースライムが光に包まれて一つになり、それから一回り程度大きくなったマルスラがその場に出現する。


「Done」

「……はっきりと分かる程度には大きくなったな。他に変化はあるか?」

「Freedom and fluency」

「自由と流暢...自由は体の変化の自由度が上がったということだとして。流暢になったというのは発音か? それとも体の変化か?」

「Voice」

「なるほど...合成によって成長する部分をお前が決めているのか?」

「That's half true」

「半分は、ということはもう半分は自動的にということか。それじゃあ今回の合成で発音の流暢さに割り振ったのか?」

「Exactly」

「そうか...よし。それじゃあ次は残りの三匹を一つに合成してそれをお前に合成する予定だったが、融合ということも出来るらしい」

「Fusion?」

「あぁ。ということでそれを試してみるが、何が起こるのか分からないから何時でも戦える状態になったまま三匹の融合を見ていてくれ」

「Roger that」

「頼むぞ」


これからする事をマルスラに伝えてして欲しい事を頼んでから、残った三匹のブルースライムを出してマルスラの前に集めて並べる。そのままフュージョナーの能力を起動して融合を選択して三匹のブルースライムを選択する、すると因子という要素を選択する画面へと切り替わるのでマルスラに少し待つように伝えてから画面を眺める。


因子というのはどうやら融合の素材となる存在たちが持つ固有の能力、一匹目は分裂、二匹目は復元、三匹目は昇華というそれぞれが固有で持っている能力らしい。詳細に関してみることは出来ないのだが、言葉の感じからして大体どういう能力なのかは推測が出来る。それでこの因子の選択というのはどの因子を基にして融合体を生み出すのかということらしく、この選択によっては出来上がる生物が異なるみたいで今回特殊な変化になりそうなのは三匹目だけのようだ。これがゲームならば実験を兼ねて三匹目を選ぶのだが、流石に命が掛かっている現実で何が起きるのか分からないのを選択する気にはなれないので二匹目の復元の因子を選択する。マルスラに合成した時にこの因子が効果を発揮するのであれば分裂するよりも復元して元の姿形に戻れるようにした方が役に立つ気がするのでこれを選択する。


「始めるぞ」

「Okay」


マルスラに声を掛けて融合を開始する。そうすれば三匹のブルースライムは融けるようにその形を保てなくなりそのまま渦巻きながら一つの塊へと集合していき、その塊は段々と一つの形へと変化していく。数秒か数分か、よく分からない時間が過ぎた後渦巻変化していた塊はマルスラと同じくらいの大きさをした濃い青色をしたスライムへと変化する。じっと警戒しながら変化を終えたスライムをマルスラと二人して眺めていたが暴れる気配がなかったのでゆっくりと警戒を解きつつ、テイムされているかどうかを確認する、融合後のスライム、仮称としてネイビースライムと呼ぶが、ネイビースライムはテイム済みの状態でその場に存在していた。つまり、フュージョナーによる合成及び融合で誕生した魔物がテイム済みであるのならばテイムが解除されることはなくて同時に暴走状態に陥らないということだ。


では、何故これまでのフュージョナーによる生物合成は暴走を引き起こしていた? テイマーによってテイムされた魔物同士を合成した実例もあったし、テイムされていた魔物に機械を合成した実例もあった。そしてそのどれもが暴走を引き起こしたと明言されていたし、それによる被害もニュースになっていた。


「………分からんな」

「Is there something wrong?」

「いや、大丈夫だ。個人的な考えごとだからな」

「Is that so?」

「あぁ、そうだ」

「Okay」

「あぁ。それじゃあお前に合成していくぞ」

「Okay」



この後、マルスラとネイビースライムの合成は無事に終わった。特に異変もなく、マルスラの体が二回りほど大きくなり色が少しだけ濃くなった程度の見た目の変化に、体の変形の速度が速くなり体の流体性が落ちる代わりに少しばかし全身が硬くなって固体を保つようになったくらいの変化だけだった。戦闘能力としては未知数ではあるが、少なくとも最低限度戦えるし相手を拘束することも可能になったと考えてダンジョンにマルスラと二人で潜って素材となる生物を確保することを予定に入れても良くなったと考えて良いだろう。フュージョナーの能力をもっと調べる必要もあり、その素材を取りに行くためにも明日か明後日には潜ろうと思う。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


※マルスラの初期サイズは20cm、二話の武器合成時点で30cmでした。そしてネイビースライム合成直前は40cm、合成後は50cmとなっております。また色合いも水色に近い青色から紺色に近い青色に変化しております。

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DC学園の合成獣主《キメラ・マスター》 夢見の破片 @yumeminohahen

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