第2話 初ダンジョン挑戦
「さて、一応着いては来たけど基本的に俺は後ろで見ているだけだからな」
「うん。今日は俺のテイムがどんな使用感なのか確認するのと、マルスラがどのくらい戦えるのか確認するためだからそんなに深くまでは行かないよ」
「that's right...」
「そうか? まぁ無茶はしないようにな。それとどうやって戦うつもりだ? まさかその手に持った鉄パイプが武器とは言わないよな?」
「そうだけど?」
DC本部向けの報告書を書いてそのまま提出しに行った翌日、仕事が終わって次の仕事まで時間がある父さんが付いて来てくれるということなので近所の最低難易度のダンジョンに潜りに来た。構造としては一番多い洞窟型の地下階層構造で、階層の数は五階層で登場する魔物の種類は八種類という少なさ。登場するのはブルースライム、ミドルバット、ワームジャック、インプ、ゴブリン、コボルト、ケイブラット、オークの八種類で最後のオークは一応このダンジョンのボス格らしく最下層以外での発見が無いということらしい。
ということで連れて来てもらったけれども、今日持ってきた装備は遭難した時ようの保存食と水分に鉄パイプ三本だけである。だから父さんは呆れているような馬鹿な子供を見る様な声色と視線になっている、だけどこの装備の理由はしっかりとあるんだから呆れないで欲しいと思う。馬鹿なのは認めるけど。
「父さん、俺の成績知ってるでしょ?」
「あぁ知ってるぞ、何ならDCの免許試験の時も付いて行ったから良く知っているな。だからこそもう少し戦える準備をして欲しかったんだが?」
「あの時はがむしゃらでついでに試験が一番最後だったからどうすればいいのかを見て判断して動いたからだよ。実戦になるとそんなことが出来るだけ俺の体は器用に動かせないし、そもそも戦い続けられるだけの体力なんてないよ」
「だから持って来なかったのか?」
「うーんと、ちょっと違うよ。持ってきてはいるよ、最初にDCで貰った装備だけどね」
「は? ……あぁ、そうか。そのスライムの中か」
「そうだよ」
「Exactly...」
正直に言うと鉄パイプ持って走り回ることすら難しいから、いっそのことマルスラ及び今後テイムする奴らに戦闘を全て押し付けようと判断した。なので取り敢えずマルスラに初期に支給されたダンジョン用の探索衣装以外の盾と片手剣、あと中くらいの長さの槍と物置に転がってた大盾の全てをマルスラに合成した。使えるのか聞いてみたら問題ないって返ってきて、そのまま二回りほど大きくなった体の一部を合成した武具の形に変化させて動かしてたので最低限は戦えると思ってる。ちなみにマネキンのパーツに関しては何処かに消えたので、上塗りされるのかもしくは要素として薄いと擦り消えたりするのかもしれない。
「……戦えるのか?」
「大丈夫じゃない? 無理そうなら、学園に入学するまではダンジョンに潜らないようにして入学した後に戦えるのを用意してもらおうかなって思ってるけど」
「そうか...まぁそうなったら俺が戦えるのを連れて来てやるからテイムを頑張ってみるといい」
「そう? ありがと、父さん」
「thank you...」
思わぬところから良い言葉を聞けた。まぁマルスラが戦えなかったらという前提の話だしマルスラが戦えないとは思っていないから利用できないとは思うけど、学園に入学する前にもう一体くらいは仲間を増やすことが出来そうだな。最悪は頼み込んで連れて来てもらってテイムをさせてもらえばいいだろう。
「それじゃあ、行っても良い?」
「いいぞ。好きなように進むといい、質問とかがあれば呼んでくれ」
「はーい」
「okay...」
────────────────────
ぶらりぶらりとダンジョンの中を歩く事十数分。
洞窟内部を明るくしている光り輝く苔、鉄パイプでは砕けないのに手では砕ける石、マルスラが拾った半透明な水晶の破片...ダンジョン特有の物を幾らか収集しながら歩いていると蠢くようにしながら壁の中から這い出てくる生物を見つける。
「ブルースライム、だね。マルスラ抑えられる?」
「roger that...」
「じゃあ頼むよ」
詳しく見るまでもなくマルスラの素体となったブルースライムだったので、同じく発見していたマルスラに抑えるように頼む。するとマルスラはOKと言いながら近寄って行き、相手が反応するよりも早く体の一部を槍に変化させて刺し貫いて拘束する。一瞬殺したのかと思ったが、貫かれたブルースライムがゆっくりとした動きではあるが確かに拘束から抜け出そうとしていたので無事に生きているというのを把握する。
「what...?」
「あぁ、そのまま拘束しておいてくれ」
「okay...」
此方を伺うマルスラにそのまま拘束しているように頼みながら近づき、拘束されているブルースライムに手を翳してテイムと呟く。そうすれば俺の翳した手から光の玉がブルースライムに伸びて、そのまま取り込まれることなく霧散していく。
「失敗したな。まぁ、何度か繰り返せばいいか」
「why...?」
「ん? あぁ、お前を強くしようと思ってな。殺して残った部分を使っても良いような気もするが、それよりも生きているのを使った方がもっと強くなれるんじゃないかと思ってな」
「i see...」
「よし。もう少し拘束しておいてくれよ」
「okay...」
ということでテイムを繰り返していく。友好的な関係性になってテイムするという手段もあるのはあるが時間が掛かるので強制的に捕まえるテイムをしていく。さっさと素材にしたいから友好的な状態でテイムする必要がないからこうして拘束してテイムする。これでも最低限の主従関係は築けるし扱うだけならばそれで十分だ。あとフュージョナーの合成で生物同士を合成する時に人格はどうなるのかというのが気になったというのもある、残せる人格を選べるのかそれとも全ての人格が残るのかもしかしたら全く新しい人格が芽生えるのか、マルスラを素体にするというのは少しばかし失敗した時の損失が大きい気もするが進まなければ何も始まらないからマルスラを素体にすることを決めた。
「…………」
「…よし、テイム完了だな。異変はないか?」
「nothing...」
「よし、じゃあ取り敢えず拘束を外してくれ。こいつは取り敢えず一旦保管庫に入れておいてあとで合成する」
「okay...」
十数回程度繰り返してようやくテイムが完了した。魔力を消費するという話を聞いていた通り使用する度に体からおそらく魔力であろう物が抜けていく感覚があったが、この感覚が正しいならまだ数百回は使える気がするのでまだしばらくは気にしておく必要はないと思える。ちなみに今テイムしたスライムはふるふると震えていたが言葉を話す気配を感じなかったので英語ではあるがはっきりと話しているマルスラに関しては合成した機械がしっかりと効果を示しているということなのだろう。
「さ、行こうか」
「okay...」
「あー、ちょっと待ってくれ」
「……父さん? どうかした?」
「少し聞きたいんだが、どうしてスライムを凍結させる事もせずに拘束し続けられたんだ? 核を掴んでいるのかと思ったらそうじゃないみたいだから気になってな」
「うーん...まぁ簡単に言うとスライムの体を維持している理由に関しておそらくそれだろうっていうのが分かって、マルスラもそれがどう動いているのかを理解してるから拘束出来たって感じだと思うよ。大雑把な推測でしかないけどね」
「ふむ...スライムだったらスライムを傷つけずに止められるのか?」
「どうなんだろ? マルスラ、どう?」
「don't know...」
「分からないのね。ちなみに他のスライムは理解してると思う?」
「no...」
「なるほどね...あぁそうだ。マルスラに武具を合成したけどそれはさっきの拘束に影響してたりする?」
「yes...」
「うん、なるほどね。ありがとう」
「no problem...」
「………どういう結論だ?」
「分からないってことが分かったかな? ただ多分だけどただのスライムの状態でさっきみたいに拘束するのは難しいかもね。推測だけど、純粋なスライムの体じゃなかったからスライムの体を突き刺しても同化せずに個を保てたって感じかな? この辺りはフュージョナーの能力がどれだけ影響しているのかっていうのを調べたりする必要があるけど、ただのスライムで拘束するっていうのは出来ないって思っておいた方が良いかもね」
「なるほど。ありがとうな、探索を続けようか」
「うん、そうしようか。行くよマルスラ」
「okay」
この後、同じようにブルースライムを五体ほどテイムしてダンジョンの探索を終了した。階層は一階層のままで直接戦闘らしい戦闘はしなかったけど、父さん曰くこのダンジョンくらいならマルスラがいれば何とかなるだろうっていう事らしい。というわけで次からは一人で最後まで潜っても良いって言われたけど、もうちょっと実験したいし使える仲間の数をもう一匹増やしたいから多分学校に入学するまでに最後まで潜る事はないと思う。オークを素体にしたさはあるけど、養成学園が管理してるダンジョンのどれかにオークくらいなら存在してると思うからそこでテイムしようと思う。そのためにも入学するまでにマルスラをもう少し強くておきたい、取り敢えずマルスラとただのスライムを合成して大きく出来たり強く出来たりするなら何回か来て十数匹分のスライムをマルスラに合成しようかな。出来なかったら出来なかったで、その時に考えればいいかな。
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