第1話 テイマーとフュージョナーという能力について

やぁ、昨日あの後マルスラを家に連れ帰って何が出来るのかを確認していたら母さんが帰ってきて、マルスラをどういう経緯で手に入れたのかを俺から聞き出して正直に話したらマルスラの詳細とついでに俺の特殊能力で何が出来るのかを紙に纏めてDC本部に提出しろと言われた調波だ。ちなみに母さんは仕事で必要な道具を取りに戻って来ただけだったからそのまま職場にとんぼ返りしていったよ。


ということでマルスラを助手に置きながら纏める作業をしていこうと思うよ。ちなみにマルスラは絶賛休眠状態だよ、合成に使った機械の電池とか充電とかが無くなるのが影響かなとは考えてるよ。まぁだから追加で発電装置を太陽光タイプと魔力タイプの二種類を合成したからこれでどう変化があるか待つだけかな。

取り敢えずマルスラのことは置いといて、俺の能力に関して纏めていこうと思う。ちなみにこれはDCの免許を取得したら必ず与えられる依頼らしくて、自分は一体どんな能力を持っていて何が出来るのかというのを他人が理解できる形でアウトプットできるのかというのを調べる目的があるらしい。まぁ確かに調査のためにダンジョンに潜ることもあって、その調査結果を分かりやすく纏める能力は必要だろうし多分この纏めの完成度によっては講習を受けさせられたりするんだろうね。



まず最初は俺の特殊能力の一つであるテイマーについて。魔物や動物をテイムというスキルで使役下に置くことが出来る能力で、テイムする対象の意識の強弱とかその他要因によって成功率は変化する。特殊能力を検査した時に○○テイマーという表記が無かったところから考えるに、DC最初期の頃に多かった全ての種類の魔物や動物をテイムすることが出来る代わりにテイムした魔物や動物に対してバフを与えられないテイマーだと思われる。しかし従来のテイマーがテイムした魔物動物を入れておく空間魔法や収納魔法といった魔法を持っているのに対して俺の方にはない、その代わり後述のもう一つの特殊能力との複合による発生なのかは分からないが保管庫と簡易ゲートという二つのスキルがある。保管庫は収納魔法による魔法倉庫、空間魔法による特殊空間のような物ではあるようだが、入れられるのは俺の支配下使役下にある物に限定されているようである。具体的に言えば明確に俺のものであると判明している物か俺がテイムした生物しか入れることは出来ない、外で拾ったトカゲを捕まえてテイムせずに入れようとしたら出来なかったが先日テイムしたスライムは入れることが出来たから確定だと思われる。簡易ゲートだが、転送魔法のような仕組みで保管庫の中に入れたものを外に取り出すためのスキルである。詳細に関して全て把握している訳ではないが、簡易ゲートを通過する条件として保管庫の中に入れられるものという制約があると考えられる。テイマーとしての話に戻すが、保管庫と簡易ゲートという二つを除けば従来のテイマーの能力と大差はないと思われる。勿論テイマーの能力自体に所々で個人差があるというのを加味すれば俺のテイマーにも何かしらの特異性はあると思うが、まずそこまでテイマーとしての能力を使っていないのではっきりとした結果を出すことは出来ない。


次にフュージョナー。前述した俺のもう一つの特殊能力であり、テイマーと合わさることで保管庫と簡易ゲートという前例のないスキルが生えてきた原因だと思われる。出来ることとしては現状従来のフュージョナーとそう変わりはないようで、複数の物を合成して一つの物を作り出すというものである。合成の種類は調べた限り複数のタイプがあるようだが俺のフュージョナーは混ぜ合わせる物と加えて重ね合わせる物の二種類が入り混じったタイプだと思う。あと合成の対象を限定する代わりに特定の部位やパーツだけを合成出来るようになる特殊なフュージョナーではないと思われる。合成する時に取捨選択することが出来なかったし出来るような感覚はなく、調べた中で記述があった特殊フュージョナーの合成時における出現する確認パネルのようなものが出て来なかったので通常のフュージョナーであると思われる。また生物を用いた合成に関してだが、即座に暴走するということはなく合成後に追加する形で合成しても過剰に変態を起こすことはなかった。素体とした生物が衰弱し瀕死状態だったスライムだということ、それ以外に使用した物が壊れて放棄されていたマネキンと旧式の更に型落ちの機械だったというのが加味している可能性があるので、後日複数回に分けて条件と素体を変化させながら能力の使用感覚と暴走や過剰変態の有無を確認する。



「……っと、取り敢えずこんな感じで良いだろう。分からない事の方が多いし、確定していると断言できるかと言えばそうではない物も多いしな。一応最後に詳細が分かれば追加を提出するとでも書いてお...いや良いか。不備があれば通達があるだろうし、落第点の評価をされるならされるで書き方を学べる良い機会が得られたとでも思っておくことにしよう」

「what...?」

「起きたかマルスラ。俺のは特にお前に関係している訳ではない独り言だから気にするな、それよりも調子はどうだ? 可笑しなことにはなっていないか?」

「no problem...」

「そうか、なら大丈夫だ。異変を感じたら教えてくれ」

「okay...」


休眠状態から覚醒したマルスラと軽く言葉を交わしながら、目覚めたマルスラの様子を流し見しながら確認する。二種類の発電装置を合成したことで本人が気づいていない異変があるかどうかを見るが、ザッと見たところ特に変だなと感じる部分は無いと思われる。合成自体が失敗した可能性もあるかもしれないが、使った二つの発電装置が消え去っているのじゃら考えるに失敗はしていないと思う。

………一応確認してみるか。


「マルスラ」

「what...?」

「お前の体に太陽光で電気を作り出す機械と魔力から電気を作り出す機械を合成したんだが...それを使って電気を作り出すことは出来るか?」

「wait...」

「あぁ、待つぞ」

「... ... ... ...」

「………」

「done...」

「そうか、なら合成は成功したということだな。作りだした電気はどうした?」

「change...」

「change、ということは変換したということか。何に変換した?」

「energy...」

「それは魔力か? それとも別の何かか? 魔力ならOKで別の何かならNOと言ってくれ」

「no...」

「なるほど、分かった。ありがとうな」

「no problem」


魔力ではない別の何か...ということはだ、スライムの肉体を構成しているのは魔力ではない別種の何かということ。マルスラは太陽光や魔力を電気に変換し更にそれをその何かに変換が出来ており、その変換においての負荷はマルスラにとって重い物ではなく同時に休眠が必要となる物ではないということになる。つまり、さっきまでマルスラが休眠状態になっていたのはその何かが体の中から欠乏してそれを補うために入っていたのだろう。それに太陽光を浴びて電気を作り出しているであろう時間と、体の中の魔力で電気を作り出しているであろう時間を比べれば、太陽光を浴びて電気を作り出していた時間の方が長い時間を掛けていた。となると魔力を別の形に変換するのは簡単にできることであり、そうなるとスライムは魔力を自身の生存に必要な何かへと日常的に変換しているということになる。これは良い情報、というより完全に新しい情報だな、スライムが魔法を使えないのに魔力を持っていてそれを消費しているという疑問に対する答えが、体を構築しているというのから生存に必要な何かに変換しているということに変えられるからな。まぁ確証はない、合成によって性質が変化したマルスラだからそれが必要となっているのかもしれないしな。


取り敢えず、現時点でマルスラに関して分かっていることを纏めておくか。簡単に現時点で把握している事とあと何を素材にして合成したのかということくらいだけでいいだろう。最後により詳しい内容に関してはまだ調査中とでも書けば問題はないだろう。

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