第6話 雨の晩

 斎藤と一雄、聡はオモチャ売り場のミニカーに興奮気味だった。


 「おお!これ、最近発表されたばかりのAMGじゃん!」

 「ほお、意外に君も見る目あるな、こっちのランボルギーニも最新のモデルだぞ」

 「聡これ見ろよ!新型のフェラーリだぜ!」

 「へえ……凄いね!」


 一雄達は興奮しながら、オモチャを漁っていた。


 そんな彼等を見付けて、静香、優菜、芽衣たちが現れる。


 「貴方達こんな場所で何してるの?」


 静香は呆れた様に言う。


 「見てよ、このモデルカー」

 「ああ、優菜ちゃん!いや〜このミニカー見てよ!凄いんだよ!最新のモデルがこんなに揃ってるんだぜ!」


 聡は興奮気味に言う。


 「はぁ……全く、貴方達は……」


 静香がは呆れ果てた表情で深く溜息を吐く。


 その彼女の振舞いにハッと気付いた小太郎は、2人に向かって小声で話す。


 「君達、そろそろお開きにした方が良いぞ、目の前の叔母さんの顔が般若の様な形相になり始めている……」


 それを聞いた彼等は、直ぐに玩具売り場から撤退する事に決めた。その後、彼等は食材を購入し終えて、ファミレスで食事を済ませる。


 聡達は小太郎達のご馳走で、美味しいスイーツ等を食べる。


 お腹一杯になり、満足した彼等はショッピングモールを出て、ログハウスのあるキャンプ場へと戻って行く。


 キャンプ場に着く頃、空は夕方になっていた。夏の空で、陽が暮れるのが少し遅く、夕方5時でも、空はまだ明るかった。


 「さて……僕達もそろそろ戻る時間だね」


 聡は新しい帽子を被りながら言う。その時……小太郎が空を見上げて「今日は、君達はログハウスに止まる方が良い」と、呟いた。


 「ん……どうして?」

 「雲行きが少し怪しい……キャンプに置いてある荷物を持って来なさい」


 それを聞いた一雄は空を見上げて、スマホの雨雲レーダーを確認するが、雨の予報は無かった。


 「予報だと降水確率0%ですけど……」

 「長年キャンプしている者の感だ。雨雲レーダーなんかよりも正確だ。早くしないと貴重品が雨に濡れてしまうぞ」

 「あ……はい、分かりました」


 皆は小太郎の言う通りに、キャンプ場に戻って荷物を取りに行く。彼等が荷物を持ってログハウスへと向かう時、彼等は顔や腕に雨粒が当たる感触に気付く。


 空を見上げると、それまで晴れていた空に、濃い雨雲が広がっている事に気付く。


 「うわ、本当に雨が降り出して来た!とにかく急げ!」


 そう、叫びながら皆は一斉にログハウス目指して走りだす。


 聡たちは急いでログハウスへ駆け込んだ。雨足が次第に強まり、彼らが到着したころには、外は土砂降りになっていた。ログハウスの中に入ると一同はほっと安堵の息をついた。


 「いやー、小太郎さんの勘ってすごいな。ほんとに雨降ってきたじゃん」一雄が感心しながら言う。


 「まあな、キャンプを何年もやっていると、こういう雲の動きが分かるようになるんだよ」


と小太郎は、少し得意げに答えた。


「でも、こんなに急に降り出すなんて……」


 静香が窓の外を見ながら驚いた様子で言った。外では大粒の雨が窓ガラスを叩きつけていた。


 「今日はログハウスでゆっくりしよう。幸い、食材も揃えてきたし、今夜はみんなで一緒に夕飯を作ろうか」小太郎は言う

 「それいいね!ちょうどお腹も減ってきたし」


 芽衣が嬉しそうに賛成し、皆も同意した。


 夕飯の準備が始まり、みんなが手分けして料理を作り始める。優菜と静香がサラダを作り、一雄と小太郎が火を使った料理を担当。聡はデザートのスイーツを用意していた。


 やがて、雨の音をBGMに、皆で囲む食卓が整った。窓の外で嵐が続く中、ログハウスの中は暖かく笑い声が響いていた。


 食事が終わる頃、雨は小降りになっていた。外には月が顔を出し、雲の合間から薄明かりが差し込んでいた。聡が窓の外を眺めながら言った。


 「雨も上がって、明日はまた晴れそうだね。久しぶりに星空を見れるかもしれない。」

 「そうだな、今日はゆっくり休んで、明日に備えよう」と小太郎が応じた。


 その夜、みんなは思い思いの時間を過ごし、ログハウスで静かな夜を迎える。


 夜が更け、ログハウスの中は静まり返っていた。皆がそれぞれの寝床につき、疲れを癒している。しかし、聡だけは眠れずに窓の外をぼんやりと眺めていた。


 深夜過ぎ……雨はすっかり上がり雲間から星が瞬いている。何か心に引っかかるものを感じながら、聡はそっと立ち上がり外へ出ることにした。


 外に出ると雨の匂いが漂い、地面はまだしっとりと濡れていた。星空は美しく広がり、まるで雨があったことを忘れさせるかのようだった。聡は深呼吸し、自然の静けさに包まれる。


 その時、彼の目の前に不思議な光が現れた。光はゆっくりと空を横切りながら、時折不規則に瞬いている。


 「UFO……まさか?」


 聡は思わず呟いた。以前、亡くなった友人・裕太とともに探し続けていた未確認飛行物体の記憶が蘇る。


 裕太との思い出が鮮やかに蘇り、彼の心は揺さぶられた。(本当にあったんだ……)胸の中で確信が膨らむ。聡は急いで携帯を取り出し、その光を撮影しようとするが、なぜかカメラが反応しない。


 「どうして……?」


 焦りを感じたその瞬間、光が急に輝きを増し、まるで彼を誘うかのように地上に向かって降りてきた。強い風が吹き、彼の足元に草が渦を巻いて踊り始めた。


 聡は恐怖と興奮が入り混じった気持ちでその場に立ち尽くしていたが、不思議な光が徐々に彼に近づいてきた。そして、その中から何かが現れた。姿が次第に輪郭を持ち始め、光の中に浮かび上がってくる。


 それはかつての友、裕太の姿だった。


 「裕太……?まさか……?」


 聡の声は震えていた。しかし、その姿は間違いなく裕太だった。彼は微笑んでいるようだったが、どこか別の存在のような、不思議なオーラをまとっていた。


 「お前……どうして……」聡は言葉を詰まらせた。


 裕太の姿はただ微笑み、何も言わずに手を差し出してきた。その手に触れようとした瞬間、聡の視界がぐらりと揺れ、光が一層強く輝いた。辺りが真っ白になり聡は意識を失った。


 次に目を覚ました時、聡はログハウスのベッドに横たわっていた。窓の外からは朝日が差し込んでおり、周囲は静かだった。彼は急いで外に飛び出し、昨夜の出来事が夢だったのか現実だったのか確認しようとした。


 しかし、外には何も変わった様子はなく、ただ夜の雨が過ぎ去った清々しい朝が広がっているだけだった。


 「夢……だったのか?」


自分の頭を抱えながら、聡は呟いた。だが……寝間着のポケットに手を入れると、そこには裕太との思い出の写真が握られていた。以前……少年野球で強豪相手との試合に勝った時の写真だった。何故、その写真がポケットの中に入って居たのかは謎だった。


 ただ……一つ彼が確信した事は……(あれは夢じゃなかったんだ……)と、言う事だった。


 聡はその写真を見つめ、再び決意を新たにした。UFOをキャンプ中に絶対に見つけること……そして、それは裕太との約束を果たす為であると聡は心に誓うのであった。

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星屑の夜 じゅんとく @ay19730514

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