あるきたい
覇王樹
独り
学生時代に学んだ事は、己の無力さと、上位の人間に逆らう事の無益さで。進学や就職などを何度繰り返したところで、その理不尽さはスケールが大きくなって帰ってくるだけ。
かつて
終には、大恋愛の末結ばれたはずの
その癖、
人生、こんなモノか。と、仕事に励むも上層部の夜逃げで、数年務めた会社も一夜にして倒産。
40にもなろうという男が簡単に再就職など出来る訳もなく、だからといって、今更企業するような気力も、企業出来るような人脈があるわけでも無い。
日雇いのアルバイトで食って生きる生活にも、もうそろそろ疲れてきて、「もう、いいや。」と、夜の街を独り彷徨う。
手紙を残すような誰かも、もう居ないので、左手に縄ひとつ持って歩く。
せめて、最後に、と。子供の頃無性に行きたかった学校裏の山まで歩こうとして、宅地開発の影響で既にソンナモノは無くなっていた事をそこで知る。
どこに行けば良いか考え、しばし留まる。
他に思い入れのある場所なぞある訳も無し、唯、ひたすらに月の下を歩く、歩く、歩く。
気が付けば、何時もの椅子に腰かけて、少ない給料で買った発泡酒と安いツマミを口へ運んでいる。
値上がりで一箱しか買えなくなった煙草の煙と、雑音混じりの壊れたラヂヲから流れる知らない音楽に包まれて、どうせ明日も同じだと知りながら、それでも、期待せずには生きられなくて。
「こんな人生、終わらせたい。」なんて呟いておいて、人一人殺せない自分の無力さを痛感して。
いつの間にか消えていた煙草の煙に、少し笑って、そんな感じで、今日も、終わって。
あるきたい 覇王樹 @akiti
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます