メアリと人形師

菫野

メアリと人形師

小間使いメアリといふはみみづくの顔した少女、柘榴を好む


梨ほどの人形ののうちがはに羽ばたくものをプシュケと言へり


窓ぎはで縫ふ手にくろき十字顕つ・不安・蛇口のもとで洗ひつ


暗黒をひと掬ひほど持ち帰る歌集一冊あがなふたびに


蛸となりし少女悩みて五本目の足にあう靴探しに行けり


くちびるから裏返りつつまろび落つ われは月球 夜を抱へて


てのひらに少女の蝶を隠しつつ近づく きみがよろこぶといい


雑貨屋の錆びたちひさなティン缶の中に夜明けを入れておくから


たましひの穴をぬらりと埋めにゆくこんな指など噛み切つてくれ


ふしあはせだらうかきみは──真夜中にまはれ少女の回転木馬

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メアリと人形師 菫野 @ayagonmail

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