第3話【入国】

いよいよシンガポールへ十数年ぶりに空気に触れることができます。SGカードもスムーズにチェックが終わり、入国審査終了。


次は荷物をピックアップです。荷物が出てくるまでは多少時間がかかりましたが、シンガポールは他の東南アジアの国よりはスムーズでしたね。実は今回の渡航では旅行会社経由での手配だったので、迎えの車はチャーターするとホテルまでで3万程度かかるといわれて、公共交通機関を利用して自力でホテルまで行くことにしたんですよね。


となると、ホテルまでのアクセスなんですけどね。方法としてはMRT(鉄道)かタクシーかという2択ということになります。MRTでホテルまで行くのもいいんですが、久しぶりってこともあり、空港タクシーでホテルへ向かうことを選択。それがその後、功を奏すこととなるなんて思っていませんでしたよ。

タクシーに乗車し、ホテルの住所を伝えて向かいます。料金はどうなるのかなって思っていると、きちんとメーターも普通に動いているようで、一安心。海外ではタクシーの乗車する前には日本と違いあらかじめ交渉が必要となることが多いんですよね。


山田「酒井さん、タクシーってぼったくられたりしませんか。」


僕「シンガポールだし、大丈夫だと思うよ。それに空港タクシーだしね。道端で拾ってタクシーに乗るんじゃないから、大丈夫だよ。」


山田「酒井さんが、そうおっしゃるのであれば安心です。それにメーターも変な動きをしてませんからね。ハノイの時はびっくりでしたけどね。」


僕「空港からホテルまでは、だいたい3000円程度だと思うよ。特に渋滞なんかしなければね。」

といった具合にとりあえず僕と山田君はタクシーに乗車しちゃいます。


山田君が少々不安に思っているようでしたが、僕と話している内に安心してきている様子でした。空港から市内へ向かっている途中、急に空の雲行きが怪しくなってきました。いわゆる熱帯特有のスコールが近づいている気配です。と思った瞬間、すごい土砂降りの雨が降り始めあっという間に辺りは水浸し。タクシーの窓の外からは雨音がすごい勢いで聞こえてきます。僕は心の中でタクシー選択が正解だったと思いましたね。スコールなので15分程度で雨脚もとまり、次の瞬間には南国の晴天が戻っていました。道端の植栽の木々から南国のエナジーがひしひしと伝わってきちゃいます。


ホテルのエントランスゲートまでタクシーが入ってくれて、どうにか到着しました。料金も予想の範囲より少し安くて安心しちゃいました。


ホテルでチェックインを済ませ、宿泊室までエレベーターで向かいます。いつもならボーイさんが荷物を持ってくれます。が、シンガポールはホテル料金が高騰しており、今回はビジネスホテルクラスの三ツ星だったので、自分自身で荷物は運ぶことになっているみたいでした。


宿泊先はMRT駅直結のホテルにしていたので、移動が便利なんですよね。客室は11Fでした。高所恐怖症の僕としては、これ以上の高層階はかなり厳しいところではありました。


僕「山田君、やっとホテルに到着しましたね。」


山田「酒井さん、一安心です。タクシーもぼられていなくてよかったですね。このあたりが発展しているシンガポールって印象がしますね。」


僕「そうだよね。ホテルもビジネスホテルクラスだけど、まぁまぁといったところだし、今のところ不満はないよね。」


山田「不満だなんて、まったく感じないですよね。シンガポールって安心できますね。空港も日本と同じような感じでしたね。」


僕「シンガポールでは安心はできるけど、とは言え外国だから。油断は禁物ですよ。」


山田「了解です。」


予め、エージェンシーの担当者からホテルの周りの様子も聞いていたので、ホテルのレストランで食事もいいけど、ホテルに隣接している現地の人々が利用するフードコートが安くておいしいという情報をゲットしていたんですよね。


まずはルームツアーをし、トイレと浴室を確認。今回はバスタブがなくシャワーのみでした。これっていうのがシンガポールのスタイルなんでしょうかね。僕としてはバスタブがあるのが良かったんですけどね。まぁ、お湯も水圧も問題ないので良しとしましょう。それとびっくりなんですけど、シンガポールは水道水を日本と同じように口にできるんですよね。これってほんとびっくりですよね。僕と山田君は荷物をほどき洋服をクローゼットへ掛け、マーライオンことマー様でも拝みにいきましょうかねって感じでした。まずはシャワーで汗を流し、お出かけ準備です。


僕も山田君も出かける準備が整い、いざ、シンガポールの街へ出陣とします。ホテルからの最寄り駅はEWラインのラベンダーという駅だった。なんだかガーデンシティといわれている国だけあって、なんだか心落ち着く印象の駅名だった。そこで日本でいうパスモやスイカのようなカードを購入し、そちらにチャージして電車に乗ります。クレカでワンタッチでも問題ないようでしたけどね。駅の窓口で僕と山田君はそのカードを購入し、路線地図もいただきました。いよいよラベンダー駅からベイフロント駅へ向かいます。途中、ブギスという駅でDWラインへ乗り換えしたんですよね。所要時間は20分程度だった気がします。MRTの車内も空調は効いており、ラッシュ時間帯ではなかったので、スムーズに乗り換えができちゃいました。乗り継ぎも駅の案内番通り進んでいくと無事の乗り換え終了。日本と同じ感じだなって思っちゃいましたね。ダウンタウン駅へ到着し地上へ出ます。出たところはビジネス街のど真ん中といったところでしょうか。ハイセンスな印象の街並み。東京でいうと丸の内といった感じでしょうかね。


信号待ちをして、青になったのを確認後対面のマリーナ・ベイ・サンズの見える公園へと渡りました。「おぉ。」という印象でした。テレビでよく目にする建物が、今、自分自身の前に立っていると思うとなんだか感無量でしたね。やはり液晶を通して観るより自分自身の目で実際観ることの方が感動は違いますね。山田君も感動しているようでした。


山田「酒井さん。やはり、現地で目の前に見ると感動が違いますね。」


僕「そうだよね。やはり、自分自身で直接体感することが、より一層印象に残るよね。」


僕と山田君はしばらく水面越し見えるマリーナ・ベイ・サンズを眺めながら、佇んでいました。


僕「そろそろ、マリーナ・ベイ・サンズのショッピングモールへ行って、おいしいものでも食べちゃいましょうかね。フードコートもあるようなので。」


山田「いいですね。俺、丁度、おなかも空いてきているんですよね。シンガポール料理って何があるんですかね。」


僕「有名なのでチキンライスかな。」


山田「うまそうですね。それ、食べたいです。」


僕「あとは日本にまだ上陸していない有名なコーヒーショップもありますよ。コーヒー好きな山田君もきっと満足しますよ。日本では口にできないものですからね。」


山田「まじ、っすか。楽しみです。」


僕と山田君は海沿いの公園を歩きながら、マリーナ・ベイ・サンズへと向かっていきました。公園には南国の木々と九官鳥を少し小さくしたような鳥がたくさん群がっていましたなんだかかわいらしい鳥でしたね。シンガポールでは野鳥に餌をあげることはNGなんですよね。ここも日本の感覚と違いますね。「郷に入りては、郷に従え」と言いますからね。公園ではランニングしている人や、友人と語らいでいる人々が南国のゆっくりとした時間をそれぞれの方法で楽しんでいる雰囲気が伝わってきます。この解放感って気温によるんでしょうかね。ショッピングモールの入口の到着した僕と山田君。高級ブランドの大きなロゴが目に入ってきます。この景色も富裕層が住むシンガポールという国らしいなって思っちゃいましたね。


エントランスを通過してモール内に入ると、クリスマス前ということもあり、クリスマスツリーのきらびやかな装飾とBGMのミュージックが心地よく思えてきました。行きかう人々もなんだか品があるというか、この景色にマッチしているんですよね。装飾もそうですが、ここにいる人々もこの景色を作っているんですよね。店内は、ガイドブックにもよく掲載されている、水路とボートがありました。僕と山田君もこの景色の一部なんだなって思いながら、ウィンドウショッピングしていました。


クリスマスのハッピーな雰囲気を楽しみながら、まずは目的地の有名なコーヒーショップへ向かいます。日本にはまだ上陸していないみたいなんですよね。ショップを目の前にすると、やはり高級感は漂っていましたね。早速、オーダーを済ませ、店内で珈琲とクロワッサンを食べちゃいました。小腹も空いていたのでちょうどいい時間でした。クロワッサンもいろいろな種類があり、目移りしちゃいましたね。また、なんといってもおしゃれな店内なんですよね。


山田「酒井さん、そういえば、シンガポールのMRT駅のエスカレーターってなんだか速度が速い気がしますね。でも、みさなん、器用に移動していますよね。」


僕「そうだよね。山田君も気が付きましたか。エスカレーターの速度はその国の経済の速度と比例すると言われていますよね。」


山田「そうなんですね。まぁ、この景色を観れば経済成長の発展のすさまじさは伝わってきますよね。駅などでも行き交う人々も、日本と同じファッションセンスで持ち物もなんだかこじゃれていますよね。」


僕「治安的には、そんなに不安は感じませんね。」


山田「そうですね。」


二人がシンガポール川を眺めながら、次はシンガポールの象徴のマーライオンことマー様とご対面です。今僕と山田君がいるマリーナ・ベイショッピングセンターとは対面にあります。小さくマー様が口から水を出していますね。マー様とマリーナ・ベイのホテルを観ると、やはりシンガポールへ来たんだなって、実感できますね。僕がマー様を眺めていると、なんだかマー様の頭上に人が立っているのが見えてきたんです。この対岸から見えるということは、その方はこの世に存在しない方なんだなって思いました。

そんな風景を眺めていると、僕と山田君に声をかけてくる男性がいたんですよね。僕がふと振り向くとそこには日本からのフライトで一緒だった男性でした。


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