第5話【予期せぬ出来事】

翌日、僕と山田君はアルンさんとの待ち合わせ場所へ向かうため、早々に朝食を済ませました。ホテルのビュッフェで朝食を済ませちゃいましたね。最寄りのラベンダーというMRT駅から途中ブギスという駅で乗り換え、マリーナ・ベイ駅へ到着したんです。アルンさんからの指定がそちらの駅でしたからね。シンガポールの鉄道は整備が行き届いており、清潔感のある場所なので安心して利用できるんですよね。


アルン「酒井さん、山田君、おはようございます。こちらまでお越しいただきありがとうございます。」


僕「おはようございます。こちらこそ、お休みのところ申し訳ないです。」


山田「おはようございます。アルンさん。今日はよろしくお願いします。」


三人は合流し、アルンさんを先頭にシンガポールの街並みを学生時代のように社会見学したんですよ。途中、アルンさんと僕と山田君の三人が三人、目を見つめあったんですよ。というのが、あるスポットへ到着したときに三人とも感じたものがあったからなんですよね。

一瞬、そのスポットへ足を一歩いれたところ、生暖かい熱低特有の暑さというよりは、なんだか鳥肌が立つような風だったんですよね。


アルンさん「酒井さん、山田さん、今、何を感じましたか?おそらく三人とも同じ感覚を感じ取ったとおもいます。」


僕「そうだと思います。じゃないとこんなにタイミングよく三人が三人、目が合うことってないですよね。」


山田「俺もそう思います。俺が感じたのは、なんだか黒いというかダークグレイというかそんな色合いの靄の塊で、警戒感が出てきました。」


アルン「わたくしは、ブラックですね。山田君がおっしゃると通り警戒感が強く出たのと、その黒い靄の中から複数の手がこちらへ向かってくる印象だったんすよね。今は、大丈夫ですけどね。」

僕「アルンさんが言われたように、黒い靄だったんですよね。その靄の中に複数の手があり、僕たちに襲いかかろうとしていました。僕が結界をはったので、今は大丈夫です。アルンさんも結界を作られましたよね。」


僕「アルンさんと僕のパワーは同じような気がしますね。」あ


アルン「そうですね。」


山田「お二人が、ご一緒で心強いですよ。」


アルン「先ほどから三人の周りに結界をはっているので、僕たちの周囲には近寄れないですよ。安心してください。」


僕「アルンさん、ありがとうございます。」


山田「アルンさん、ありがとうございます。」


僕と山田君とアルンさんの感覚が同じということを再認識した瞬間でしたね。いったい今の妖はなんだんだろう。妖かもしくは元人間の魂の想いなのかは、どちらかとは決めつけられないほどの代物でしたね。今、シンガポールから帰国し、改めて冷静な感覚で思い直すと、元は人間で、人間の闇が吸い付きながら大きな妖魔になっていたような気がしますね。


アルン「シンガポールでは日本のような怪談というよりは、妖魔的な輩が多いんですよね。妖魔は人の心の隙に入り込み操り、悪さをするといわれているんですよね。人間の弱さに付け込んでくるんでしょうね。」


というふうに、これが今回の始まりの出来事でありましたね。


アルン「実は今回、お二人をお連れしたいというか、確認していただきたい場所があるんですよ。」


山田「アルンさん。それはどういうことですか。」


僕が先にアルンさんに確認したいとおもっちゃったことを、山田君が先に確認しちゃったんですよね。アルンさんの問いかけにはまぁ、それはそうだと思いましたけどね。


アルン「今日は車で移動しますので、近くに車を駐車しております。今回は車でマレーシアとの国境近くに移動をなります。そこが今回お二人をお連れしたい場所なんですよね。」


僕「そうなんですね。どんな場所か楽しみです。というか、どんな感覚を体感するのかを楽しみしております。」


山田「俺も楽しみです。」

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