オチャメな魔族とエルフの蜜薬

フィステリアタナカ

オチャメな魔族とエルフの蜜薬

「おい、ジン! 墓荒らしが出たとエルフの連中が騒いでいたぞ」


 僕の名前はジン。異世界に飛ばされて、何やかんやで国王になった。今日、修道士モンクのロンが僕にエルフ達が騒いでいると教えてくれた。


「ロン。具体的にはいつ起きたかわかる?」

「ああ、昨日の夜らしい。エルフ一族総出で犯人を捜すみたいだぞ」

「うーん。じゃあ、僕らも協力しようか」

「そうだな。タンちゃんを呼ぶか」


 ロンは懐からモノリスを取り出して、眷属である魔族のタンヤオを呼び出した。


「――出ねぇ。あっ、もしもしタンちゃん。仕事があるんだ、すぐに来てくれ。何? 忘年会で披露するジャグリングの練習をしているから来れないって? そんなの後でもできるだろ? はっ? 手毬二十個にチャレンジしているから邪魔しないでだと? じゃあ仕方ないな、はちみつプリンこっちで食べておくわ」


「ふぉふぉふぉ。待たせたな」


 いつも甘い物に釣られてタンヤオはロンに召喚される。取り敢えず三人で状況確認。


「エルフ達の話だと、お供え物が無くなったらしい」

「へぇ、そうなんだ。ロン」

「昨日の昼。エルフの蜜薬をご先祖様にお供えしたそうだ」


 僕がロンから話を聞いていると、タンヤオの額に汗が出ているのが見えた。


「そうなんだ。エルフの蜜薬って貴重な物だよね?」

「そうなんだよ、ジン。サラマンダーでオレが八つ当たりされそうになったんだよ」

「じゃあ、真犯人を捜さないとね。ロンは心当たりある?」


 僕がそう言うとロンはタンヤオの顔を見た。


「ぬ、ぬし。わらわは知らんのじゃ! モンブランの甘味にとろける蜜がかかっている食べ物など知らんのじゃ!」

「タンちゃん。オレ、エルフの蜜薬の味知らんのだけど、随分と詳しいじゃないか。流石、物知り甘党大臣」

「ふぉふぉふぉ。わらわに知らんことなど無いのじゃ! エルフの蜜薬は美味しかったのじゃ!」


「ジン、わかったぞ」

「そうだね。僕もわかった」


「ん? 主とおうは何をわかったのじゃ?」


「タンヤオ、その椅子に座って。はちみつプリン、僕があーんしてあげる。じゃあロン、縄」

「ふぉふぉふぉ。王直々にあーんしてくれるとは、わらわは嬉しいのじゃ!」


 このあとタンヤオはロンに縄で捕獲され、エルフの一同に引き渡された。そのあとウンディーネの力によって、タンヤオが水の刑に処されたのは、また別のお話。

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