千なる異形を持つ混沌が。這い寄る闇の万聖節

驚くべきストーリー展開に瞠目する。
作者の描く作品はどれも予想だにしない
視野の拡がりと、登場人物に対する冷徹な迄の潔さを持っている。
 この作品は、米国に赴任してきた若い
夫婦が経験した異国のハロウィンの惨劇。

又もや見事に読者は翻弄される。

ハロウィンの準備に余念のない駐在員達の
日本人コミュニティの一員となった夫婦。
もうすぐ生まれてくる我が子への愛情。
気さくな現地の人々との関わり、慈善的で
何かと手を差し伸べてくれる最寄りの
教会の神父…。
 パーティー前夜の漫ろな空気の中。
妻の秘密と思惑が吐露される。徐々に
不穏さを増して、或る日本人『霊能者』の
参入により急転直下する。

血塗れの惨劇、深淵がハロウィンの喧騒と共に、その禍々しい口を開ける。

そこから姿を現すものは。

千なる異形、暗黒のファラオ、又の名を

         這い寄る混沌 と。