悪魔に魅入られた追放令嬢を略奪したら相思相愛だった

英 悠樹

悪魔に魅入られた追放令嬢を略奪したら相思相愛だった

「レオノーラ、本日をもってお前との婚約を破棄する!」


 王立高等学院のホールに響き渡る男の声にアルベールは視線を向ける。そこにいたのはセドリック。このサザランド王国の王太子にしてアルベールのクラスメート。


 そして、傲然と言い放つ男の前に神妙な面持ちで立つレオノーラ。ヴェルナンド公爵家の息女であり、同じくアルベールのクラスメート。取り乱していないのは公爵令嬢としての矜持か。だが、青白い顔と噛みしめられた唇が、その動揺を物語る。


 そのセドリックの宣言に、ホールのざわめきが一気に大きくなる。今はこの、王立高等学院の卒業式を明日に控えた前夜祭。卒業を前に浮かれた気分の参加者の間に驚きが広がっていた。


「……理由は?」


 絞り出すように紡がれたレオノーラの問い。だが、セドリックの視線は冷たい。


「理由はお前の方が良く知っているだろう?」

「……」


 俯いてしまったレオノーラに苛立ったのか、セドリックは彼女のドレスの襟に手を伸ばした。そのまま勢いよく引き下ろす。


「‼」


 レオノーラの今日のドレスは明るい空色の生地に銀糸で刺繍の施された清楚でありながら豪奢なもの。ハイネックの襟と合わせ、彼女の凛とした美しさを際立たせていた。それが、胸元まで引き裂かれ、彼女の美しいデコルテが露わになっている。


 その露わになった胸元に、皆の好奇の視線が集まる。しゃがみ込み、とっさに手で胸元を隠したレオノーラであったが、その肌に咲いた赤い薔薇のような痣は隠せなかった。ざわめきが更に大きくなる。


「あ、あれは……!」

「……生贄の紋章!」


 生贄の紋章? 聞きなれない単語にアルベールは首を傾げるが、今はそれどころでは無い。急いで、レオノーラの元に駆け寄り、皆の視線から隠すように上着を掛ける。


「アルベール……」


 見上げてくるレオノーラの目にうっすらと滲む涙に心を痛めながら、彼は心無き彼女の元婚約者に鋭い視線を向けた。


「どういうつもりだ、セドリック。どんな理由があろうと、こんな人が見ている前で彼女を辱めるなど」

「ふん、他国の人間が出しゃばるな、アルベール。王族と言えど、我が国の国内問題に口を差し挟む権利など無い!」

「友人が謂れなき辱めを受けているんだ、どこの国の人間かなど関係無い!」


 アルベールは隣国エステラ王国の第1王子。この国には留学生の身分で滞在している。確かに両国間に波風を立てないようにするなら見て見ぬふりをするのが王族としては正しい対応なのだろう。それがわかってなお、口を差し挟まずにはいられない。だが、そんな彼の姿をせせら笑うかのようなセドリックの態度は変わらない。


「レオノーラは悪魔に魅入られた。胸に刻まれた生贄の紋章がその証。悪魔の花嫁を身近に置いておくことが出来るわけが無かろう!」

「悪魔に魅入られた? 生贄の紋章? なんだそれは⁉」

「そうだな。外国人のお前にもわかるように説明してやる」


 尊大な笑みと共に彼は語りだす。


 曰く。この国には悪魔が住み着いている。魔界の大公爵とも呼ばれる大悪魔ゼエル。その悪魔が年に一度生贄を要求してくるのだと言う。悪魔が目を付けた相手には胸に薔薇のような紋様が浮かぶ。だから「生贄の紋章」。


「待ってくれ。その生贄に選ばれた者はどうなるんだ?」

「さあな。知る者はいないよ。だけど相手は悪魔だ。身も心も汚されて地獄行きだろうと言われているよ」

「それでいいのか! 言われるままに生贄を差し出して。抗おうとはしないのか⁉」

「相手は悪魔なんだぞ。人智の及ぶ相手では無い。生贄1人で許してくれるのなら安いものだろう」


 それはまるで他人事。生贄とはまさに自分の婚約者であったはずなのに、それを歯牙にもかけない物言いに、アルベールは歯ぎしりする。


「レオノーラを守ってやろうとは思わないのか⁉ 仮にもお前の婚約者だったんだろう!」

「は? むしろせいせいしてるよ。これで漸く口うるさい奴がいなくなる」


 その、あまりにもな物言いに、俯いていたレオノーラも流石に顔を上げた。


「俺が何かしようとする度に口を差し挟んでばかり。もう少し淑やかさを身につければいいものを」

「それは……殿下のためを思って」

「それが差し出口だと言うんだ! お前などよりシルヴィアの方がよほど出来た女だぞ!」


 レオノーラの反論を歯牙にもかけず、セドリックは傍らに一人の女を呼び寄せる。ギュノー伯爵家の娘、シルヴィア。彼女は冷笑をその顔に貼り付けていた。


「いいざまね、レオノーラ」

「……」

「公爵家のご令嬢だからってお高くとまっていたけど、今どういう気持ち?」

「……」

「何か言ったらどうなのっ!」


 黙っているレオノーラに苛立ったシルヴィアが声を荒げる。だが、その怒声にも怯まず、立ち上がり、レオノーラが浮かべたのは微笑み。


「シルヴィア、殿下のことを……お願いね」

「このっ!!」


 その態度に、馬鹿にされたと感じたのか、シルヴィアが激高し、手を上げる。だが、平手打ちをしようとした彼女の前にアルベールが立ちふさがった。


「そこまでにして頂きたい。こんな衆人環視の中で、伯爵令嬢ともあろうあなたが我を失ってどうするのですか?」

「!」


 流石に自国ので無いとは言え、王族に敵対しないだけの分別は残していたのだろう。シルヴィアは渋々といった様子で引き下がった。


 一方、アルベールはこの茶番に呆れ果てていた。生贄の紋章など口実に過ぎない。最初からレオノーラを排し、シルヴィアを迎えるための陰謀が張り巡らされていたと言うこと。何より、胸元の痣など普通なら見つかるはずが無い。身の回りの世話をする侍女を買収して、弱みを探っていたに違いないのだ。痣が浮き出たと知った時も、心配するより、ほくそ笑んでいたのだろう。吐き気がする。


「レオノーラ、帰ろう。君はこんなところにいるべきじゃ無い」


 こんな茶番から一刻も早く彼女を遠ざけたい。だが、そんな彼の願いを踏みにじるようにセドリックの冷たい声が響く。


「アルベール、勝手なことをしてもらっては困るな。彼女は帰れないよ。彼女は大悪魔ゼエルへの生贄として西の塔に送られるんだ」

「西の塔だと?」


 ───西の塔、正式名称はアルバ監獄。叛逆した貴族や政治犯を収容する牢獄であり、上流貴族を幽閉するための塔を備えた姿と、王都から西へ一日ほどの立地から、「西の塔」と通称されていた。


 被害者でしか無いレオノーラを犯罪者のように監獄に送る。だが、それはこのサザランド王国では当然のこと。悪魔の生贄に選ばれた人間は、西の塔の特別な間に送られるのだ。


「それが我が国の決まりだ。部外者は黙っててくれ」

「セドリック、貴様……!」

「いいの、アルベール」


 アルベールの怒りの声はレオノーラの静かな声に制された。


「ありがとう、アルベール。あなたの友情に感謝を。私は定めに従い、西の塔に参ります」

「レオノーラ、何で⁉ こんな茶番に唯々諾々と従う必要なんか無いんだ!」

「悪魔を怒らせたら、この国に迷惑がかかる。貴族に生まれた身として、そんなことは出来ない」


 レオノーラは微笑んだ。儚げな───全てを諦めた微笑み。


「元より生贄の紋章のことを隠すつもりはありませんでした。黙っていたのは、明日の卒業式までみんなと一緒にいたかっただけ。その願いも、もう、叶わないけれど……」

「レオノーラ……」

「さあアルベール、聞いただろう? もうこの話は終わりだ。衛兵! レオノーラを連れて行け!」


 何を言おうとも外国人のアルベールに彼女を救う手立ては無い。ギリギリと歯ぎしりをする彼の前でレオノーラは大人しく連行されていくのだった。





 3日後、西の塔に続く街道。一台の馬車が襲撃され、歩を止めていた。


 言うまでも無く、その馬車はレオノーラを護送するためのもの。西の塔までは馬車で1日の距離だが、流石に公爵の娘を連れて行くのには手続きが必要で、時間がかかったのだ。


 その時間差を利用し、アルベールは先回りして罠を張り巡らし、待ち伏せた。悪魔の生贄ということで護衛が少なかったのも幸いし、彼は無事に襲撃を成功させた。だが、救出されたはずのレオノーラの表情は優れない。


「アルベール、なんてことをしてくれたの! 私はこんなこと、望んでいません!」


 その憤りは国を思ってのもの。自らが生贄になって悪魔を鎮めよう、その高潔なる彼女の決意。だが、アルベールは承服できなかった。


「違うよ、レオノーラ。確かに王族、貴族と生まれたからには私よりも公のために生きる。それは当然のことだ。でもそれは、戦うことによって国にこの身を捧げることのはず。戦いもせず、生贄を差し出して、それで国の安寧を図るなど間違ってる!」

「でも、私が逃げたら悪魔からどんな報復があるか。この国に迷惑をかけることになるわ」


 自らを切り捨てた国にあくまで殉じようとする、その姿。気高くも、もはや意味の無い行為。その心は彼女の故国に届かないのだから。そう、アルベールは思い、必死に探す。彼女を翻意させるための言葉を。


「大丈夫だ。悪魔は君の痣を追って来るんだろう。国外に出れば、この国に迷惑は掛からない。俺の国に来ればいい。決して君を切り捨てたりしない」

「それこそダメよ。あなたの国に迷惑をかけるわ!」

「ならば……ならば、俺と二人で逃げよう。誰もいないところに。誰にも迷惑のかからないところに。二人で生きるんだ。俺が必ず、君を守るから!」

「どうして……」


 揺れる瞳がアルベールをまっすぐに見つめる。戸惑うような、どこか縋る様な目。


「どうして、そこまでしてくれるの? 外国人であるあなたが……」

「外国人だとか関係ない。そんなんじゃ無いんだ」

「じゃあ何故?」

「それは……君を愛しているから」


 観念したように告白したアルベールは、驚いて目を見張る彼女に言葉を重ねる。


「君が好きだよ。初めて会った時からずっと。3年前、この国に来て右も左もわからなかった俺の世話をずっと焼いてくれたお節介な君も、セドリックからうざがられても王族の在り方をこんこんと説いていた君の高潔さも。そして君の美しさも。君の全てが好きだ」

「……」

「セドリックの婚約者である君にこんな気持ちを抱いてはいけないとずっと封印して来た。でも、こんなことになるのなら、もっと早くに伝えておくべきだった」


 その真摯な瞳に見つめられたレオノーラは、これ以上無い程、頬を真っ赤に染めていた。


「え、えと……すごく嬉しい。わ、私も本当は……ずっと、あなたのこと……」


 そこまで言って、急にハッとしたようにアタフタしだす。


「わ、私、何言ってるんだろ。……やっぱりダメ。あなたに迷惑がかかっちゃう」

「迷惑なんかじゃ無い。改めてお願いするよ。俺に君を守らせてくれ」


 アルベールは跪いた。そのままレオノーラの手を取ると、ゆっくり唇を近づける。


「嫌だったら、手を振り払ってくれて構わない」


 それは騎士の誓い。命に代えてもあなたを守ると言う神聖なる誓い。レオノーラは手を───振りほどかなかった。


 手の甲に口付けたアルベールが立ち上がる。彼を見つめるレオノーラの頬には涙が伝っていた。


「私……私、諦めなくていいの? あなたと一緒に生きたいと願っていいの?」

「ああ、生きるんだ。二人で。君を絶対に守る。誓うよ」


 見つめ合う二人、ゆっくりとその姿が重なった。お互いへの想いを心に秘めた三年間の空白を埋めるかのように。





 それから半日ほど後。日は西の地平に隠れようとしている。通常なら野営の準備をしなければいけない時間。レオノーラと二人で乗っていることを思えば、馬も休ませなければいけない。だが、追手がかかることを考えるとなかなか休むことは出来なかった。気絶させた護衛は縛り上げ、すぐに追って来れないように彼らの馬も逃がしたが、それでも2日もすれば追いつかれる。それまでに国境を越えなければならない。


 そうしてしばらく進んでいたが、突然、馬が立ち止まった。ぶるぶると鼻を鳴らしながら、周囲を不安そうに見渡している。


「我が花嫁を強奪するとはいい度胸だ」


 そこに響き渡る声。本能的に恐怖を感じざるを得ない、地の底から響くような声。恐怖にかられた馬が棒立ちになり、アルベールとレオノーラは振り落とされる。馬はそのまま逃げ去って行った。


「大丈夫か、レオノーラ?」

「え、ええ、あなたこそ」


 互いを気遣う二人の前、鮮血のような赤い魔法陣が地面に浮かび上がる。そこから何者かが湧き出すように現れた。


「な……!」


 その人物を見たアルベールは声も無い。思わず、隣のレオノーラに視線を移すと、彼女も戸惑ったように、その人物とアルベールを見ている。


 無理も無い。その人物の姿は───レオノーラとうり二つだった。


「だ、誰だ、お前……?」

「矮小なる人間よ。その無礼な物言いを許そう。我は寛大ゆえな。さて、誰かと言う質問の答えだが、わかっていよう。我こそは魔界の大公爵にして闇に住まう者。淫虐の狂王たる大悪魔ゼエル」

「何故……?」


 震えるようなレオノーラの声。彼女もまた、自らと同じ姿の悪魔を見て驚いているのだろう。そう思い、アルベールは彼女を見る。だが、次に彼女の口から発せられた言葉は驚くべきものだった。


「何故、アルベールと同じ姿をしているのですか?」

「は?」


 アルベールは困惑を隠せない。目の前にいる悪魔の姿は、どう見てもレオノーラのもの。だが、レオノーラにはアルベールの姿に見えると言う。


「待ってくれ、レオノーラ。俺にはあいつは君の姿に見えるんだが」

「え? 私にはどう見てもあなたよ」


 困惑する二人に向かい、ゼエルは侮蔑したような笑みを浮かべる。


「我は悪魔。決まった姿を持たぬ。我が姿はお前たちの欲望を映す鏡なのだ。今、お前たちに見えている姿はお前たちの欲望そのもの。自らの醜い欲望と向き合うが良い」

「……」

「……」


 戸惑うように見つめあう二人。やがておずおずと口を開く。


「その、俺が見えるのが君で、君が見えるのが俺ってことは……」

「……嬉しい。私たち、やっぱり相思相愛ね」

「は?」


 手を取り合い、見つめ合う二人を見て、今度はゼエルが戸惑う番だった。


「お前たち、我が互いの姿に見えると?」

「はい」

「ええ」

「いや、もっと欲望に忠実になってよいのだぞ。現実の人間より、もっと理想の姿があるだろう?」

「いえ、俺の理想は彼女ですから」

「ええ、私も彼こそが理想です」

「えぇ……」


 ゼエルは頭を抱えてしまった。


「それでは困る。我は人間の負の感情が好きなのだ。想い人を奪われ、苦しむ心が。その想い人が我を見た途端に心変わりする様を見て歯ぎしりする姿が。肉の欲望に溺れ、理性も愛情も失って狂う姿が」


 ───そんなことを言われても、とアルベールとレオノーラが冷たい視線を向ける中、ゼエルは顔を上げた。その顔にぐったりとした表情を張りつかせて。


「もういい、お前らの魂は美味しそうに見えない。自由にしてやるから、どこぞにでも行くが良い」


 その言葉とともに、レオノーラの胸元が一瞬赤く光る。自らの胸元を覗き込んだ彼女の顔に歓喜の表情が浮かぶのだった。


「紋章が消えてる!」

「本当か?」

「ええ、これで……これで、あなたの国に行けるわ」


 瞳に涙をにじませたレオノーラを抱きしめながら、アルベールは礼を言おうとゼエルを見る。だが、その言葉はゼエルの不機嫌そうな声に制された。


「礼などいらん。むしろ不愉快だ。年に一度の生贄だと言うのに、こんな不味そうな魂だったとは。もっと旨そうな醜い魂を探さねばな」

「なあゼエル、聞いていいか?」

「何だ、人間。いつまでもその無礼な口ぶりを許していると思うなよ」

「失礼。見る者によって姿が違うと言うことですが、結局あなたは男なんですか? 女なんですか?」

「は? 悪魔に男も女もあるわけ無かろうが」

「しかし、これまで生贄に選ばれたのは女性ばかりだったと聞いています。なので当然あなたは男性と思っていたのですが」


 アルベールはレオノーラを救い出す計画を立てるに当たり、ゼエルのことも調べていた。過去に生贄として選ばれた被害者のことも。その全てが女性で、しかも既婚者か婚約者のいる女性だった。


「男の方が独占欲が強くて心変わりしやすいだろう。そういった男どもを釣るための活餌として女たちを生贄に選んでいただけだ。だが、そうだな。次は男を生贄に選んでもいいかもしれん」

「はあ?」


 悪魔の考えは理解不能。そう思ったアルベールとレオノーラは、ゼエルの気が変わらないうちにと急いで立ち去ったのだった。





 その日の夜、サザランド王国の王宮では、セドリックがシルヴィアを寝所に引き入れていた。レオノーラとの婚約を解消したとはいえ、まだシルヴィアとの婚約は正式には成立していない。


 いや、分別ある貴族、王族であれば、正式に結婚するまでは、例え婚約者であっても寝所に引き入れたりはしないだろう。だが、セドリックの放縦を咎められる者はいない。


 意気揚々とことをいたそうと、セドリックは上衣を脱ぎ捨てる。続いてシルヴィアの服へと伸ばそうとした彼の手は、逆に彼の胸を震えながら指さす彼女の手に制された。その指の動きに沿って自分の胸に視線を落としたセドリックの口から驚愕の叫びが漏れる。その叫びは王宮中に響き渡ったのだった。


「なんじゃ、こりゃあああああああああああああ!!」





 それから半年。自らの国に戻ったアルベールは、レオノーラの亡命と自らとの結婚を認めてもらうよう、サザランド王国と交渉を続けていた。


 サザランド側の交渉相手は新たに王太子となった第二王子。何故かセドリックは廃嫡され、西の塔に送られたと言う。


 その話に、アルベールは、ゼエルの発した「次は男を生贄に選んでもいいかもしれん」という言葉を思い出し───何も知らなかったことにした。


 第二王子は自らの権力基盤を固めるため、残されたセドリックの派閥と対抗する必要があった。そのためにも、レオノーラの父、ヴェルナンド公爵と隣国エステラ王国の協力を必要としていたのである。そのような政治背景の下、交渉はとんとん拍子に進んだ。


 そうして今日は、アルベールとレオノーラの結婚式。神殿の祭壇の前、並ぶ二人に司祭が語り掛ける。


「新郎アルベール=イルマ=オスト=デ=エステラ、新婦レオノーラ=ファラ=ド=ヴェルナンド、二人は互いを愛し、いついかなる時も支え合い、喜びも悲しみも分かち合う夫婦となることを誓いますか」


 その神聖なる問いかけに、二人の答えが重なった。


「「誓います!」」


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悪魔に魅入られた追放令嬢を略奪したら相思相愛だった 英 悠樹 @umesan324

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