僕がサイコロを振ったせいで、世界が破滅する

ふもと かかし

僕がサイコロを振ったせいで、世界が破滅する

 僕は幼い頃に、神様の声を聞いたことがある。


 神曰く。

「貴方は決してサイコロを振ってはいけない。そうしないと世界が滅んでしまいます」


▽▼▽


 僕はその言葉を胸に、正月にも双六はやらなかったし、サイコロキャラメルも買うことはしなかった。

 このようにサイコロを避けながらも、順調に大人になっていったのだ。


 所が、運命の歯車はいとも簡単に狂ってしまう。

 複合ショッピングモールで買い物をした時に、福引券なる物を貰った。福引と言えばガラガラ回すヤツとの先入観があったが、実際に会場に行ってみるとモニターとボタンが並んでいるだけだ。デジタル化の波がこんな所まで押し寄せていたのだなと思いながら列に並んでいた。


 僕の番が来て、抽選ボタンを押した瞬間に後悔することになった。

「あっ」

 モニターに映し出された物は、CGで作られた三つの立方体が回転している姿だった。もしかしなくても、これも分類上はサイコロになる筈だ。

「あっ」

 係員が声を上げた。モニターには不規則に転がって止まった赤丸三つが映し出されていた。

『ファンファンファファーン』

「おめでとうございます。特賞の二泊三日韓国旅行です!」

 ファンファーレと係員の声が響いた。


~~~

 韓国行の飛行機がハイジャックされた。

「香港国際空港に向かって貰う。あと、ケンイチ・オダは連れて行く。そうすれば他の者には危害を加えない」

 何故か犯人の要求に、僕こと小田憲一が含まれている。


 しかし、空港で待ち構えていた特殊部隊によって犯人たちは捕まった。何故か、僕も捕まる。


▽▼▽


「彼の国はケンイチ・オダの引き渡しを要求しています」

「やむを得まい。あの機密があちら側に漏れるのは痛いが、核戦争が起こるよりはマシだろう」


▽▼▽


 僕は、自宅に帰れなかった。怪しい人に連行され、椅子に拘束されていた。

「なあ、いい加減素直に教えてくれよ。そろそろ私の我慢も限界になるぞ」

『ダン』

 目の前の机にナイフが付き立てられる。


「主任! 大変です」

「どうした」

 慌てて部屋に入って来た男と、主任と呼ばれた男がひそひそと話している。

「……違い……小さい……織るに田……憲法……健康に一……一緒の……搭乗……」

「謀ったな! すぐに総書記にお伝えしろ」

 非常にピリ付いた空気になった。


 漏れ聞こえた話で事情は分かった。漢字違いの同姓同名と、間違えられたようだ。更に『報復』だとか『核』だとかが聞こえて来た。


 どうやら世界の命運は尽きてしまったようです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

僕がサイコロを振ったせいで、世界が破滅する ふもと かかし @humoto_kakashi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ