全一話 雨音は心の調べ
迫りくる秋の冷たい風音に、今日は少しだけ切ない思いが込み上げて、気持ちの赴くままにエッセイを綴っています。
窓から見える我が家の庭には、野分の颶風が近づいているせいか、しとしとと冷たい雨が降り続いています。颶風の被害が拡大しないことを祈りながら、涙が浮かぶようです。
皆さんは、こんな寂しく胸が苦しくなる雨の日にそっと耳を傾けたくなるメロディーがありますか? 心の扉を優しく開けてくれるメロディーには、過去の記憶と現在の感覚が交錯する刹那を生み出し、自分の心に潜む素直な気持ちを呼び起こす力が宿っているようです。
僕には、そんな優しくなれるメロディーと愛の歌詞で紡がれたアルバムが心に深く刻まれています。その優しさが、傷ついた心を涙とともに、そっと癒してくれるような気がするのです。
今回は、僕の『大切な時を刻む心のアルバム』から、今でも忘れられない音楽を、著作権侵害にならないようにひとつだけ紹介させていただきます。
耳をふさぐ 指をくぐり
心 痺らす 甘い調べ
止めて あのショパン
……………………
窓を叩かないで
この詞は、女性の心の揺らぎを巧みに紡ぐユーミンによるもので、小林麻美さんが優しく透き通る声で歌い上げた『雨音はショパンの調べ』の冒頭の一節です。この曲は、実際にショパンがピアノのメロディーを奏でているわけではありません。
けれど、まるで雨粒が窓ガラスを優しく叩くリズムとともに、遠い思い出を連れてくるかのようです。この曲ならではの、甘美でありながらも切ないメロディーは、聴く者の心を深く掴み、雨の滴る音色とともに、失われた愛の記憶を静かに呼び覚まします。そこには、女性の切ない吐息がじんわりと聴こえてくるようです。
リリースされてから、すでに四十年の歳月が過ぎています。雨のひとときが訪れると、このメロディーと歌詞になぜかいつも心が動かされていることに気づきます。
初めてこのオシャレな音楽を愛する君と一緒に聴いたのは、僕が男として多感な時期だったかもしれません。それは、とても印象的なイントロから始まり、どこかアンニュイでミステリアスな雰囲気が漂うメロディーでした。
さらに、「別れてしまった特別な人」を偲ぶ歌詞が心に染み入り、胸を締め付けられるものでした。
そして、それらは、時が経つにつれて、より豊かで、より感情的なものへと変化していくのです。
四十年の時を経ても色褪せることのないこの音楽は、多感な若き日々の情熱と、別れた特別な人への未だ温かい想いを、今もなお僕の心に刻み続けています。
秋の季節にふさわしいメロディーは、雨の降る窓辺で聴くと、さらに感慨深いものとなります。そのメロディーが紡ぐ、雨音とショパンの調べは、時間を超えて僕の魂に語りかける永遠の旋律であり続けるでしょう。
また切ない思いが込み上げて、心のままに思いを綴っていきます。
雨の音が静かに耳を撫で、心の奥深くにしまった記憶を呼び覚まします。あの日の君の笑顔、温かな声、そして別れ際の涙。時間は絶えず流れ、季節は巡りますが、君への想いは色あせることなく、初めて綴ったラブレターとともに、今もなお僕の胸に深く刻まれています。君はもう忘れてしまったのでしょうか……。
初秋の風が頬をかすめるたび、君のぬくもりを感じることができます。雨粒が涙のごとく窓を打つ音は、まるで君が囁くように、僕の心に響き渡ります。遠い日の記憶が雨音とともに甦り、僕の心を優しく包み込みます。
君と過ごした楽しい日々は、夜と昼の夢のようにはかないもの。しかし、その一瞬一瞬は、永遠に続くかのようです。心をそっと慰めてくれる笑顔が僕の胸に輝き続ける限り、こよなく愛する君への想いを抱きしめ、生きていく力を得るのでしょう。
雨音はショパンの調べ、君への切ない想いを奏でるメロディーです。その音色に耳を傾けながら、僕は君だけを想い続けます。君がどんなに遠く離れていても、この心の中では止まることなく一緒にいるのです。初秋の風とともに、君への愛を胸に刻みつつ、熱い涙を零しながら……。
拙いエッセイを最後まで読んでいただき、ありがとうございます。よろしければ、皆さまの忘れられない曲を教えていただければ幸いです。
ショパンが奏でる雨音に寄せる想い 神崎 小太郎 @yoshi1449
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