15 門出。
鮮やかな紅色が、目にまぶしい。しばらく薄暗い場所で過ごしていたせいか、視界がしぱしぱと乾いて、なかなか慣れない。
右手にガラケー、左手は、はぐれないように軽くユキトの手を握っている。不思議と緊張はなくて、じゃらじゃらと、ユキトのベルトにかけられた数々の武器が音を鳴らすのを、どこか他人事みたいに聞いていた。
「まさか、二度もここをくぐることになるとはなぁ……ま、ハルがいるから、まだマシか。」
左手でガラケーをいじりながら、ユキトが小さく笑う。いつもとそう変わらない顔をしているのに、その手は微かに震えていて、僕は軽く手を握る力を強めた。
この先がどんな場所か、ユキトは知っている。嫌な記憶だと、聞くことはしなかったけど。けど、あの蜘蛛にさえほとんど動じなかったユキトが、ここまで怖がるということは、この鳥居をくぐった先は相当怖い場所なのだろう。
「……守ってもらわなくて、構わないからな。」
「ははっ、んなこと分かってるよ。オレも多分、ハルに構ってられなくなるからな。」
ガラケーを固く握りしめ、僕らは、鳥居の下へと足を進めた。
きっと、過酷だ。想像もできないくらい、向こうに戻るには。雨を見つけるためには。
ただ、それでも。
「……行くぞ。」
僕よりも高い位置にある顔が、こわばった笑みを浮かべる。
「ああ。」
うなずき、僕も、ふっと笑みを返した。
それでも、きっと、一人よりは良い。
雲縫い まゆはき @amamiyasora
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