昭和ロマン探求シリーズ『透視メガネ』

cyanP

究極の「性の商品化」を発見したゾ!!


「性の商品化」という言葉が使われるようになって久しい。

 ジェンダーやセクシュアリティといった人間の性を人格から切り離し商品として扱うことを非難する言葉。


 ──ってなんやねん?

 具体的には、アダルトビデオや性風俗産業、ミス・コンテストや広告におけるポルノグラフィティ的な表現などまで、やたらいろいろと広範囲を指すそうな。

 つまるところミスコンとかが気に入らないブスとオバハンが、しょーもないクレームを付けるための方便だ、と男性諸氏に思われている言葉でもある。


 で、その言葉の是非は置いておいて。

 このたび私は「性の商品化」、その究極な商品を発見致しました。


「透視メガネ」である。

 知ってますか、これ?

 団塊の世代の方たちには大変懐かしい、馴染み深い。青春の汚点。黒歴史。

 超有名な昭和の詐欺商品の一つである。


 なにやら、これを掛けて見てみると、女性の着ている服が透けて見えるという効果があるとかないとか……。

 なんということだ。そんな画期的な発明品が! というシロモノである。

 ちなみにかなり売れたらしい、それも世界各国でだ。アホである。

 もちろん詐欺で、透視などできるわけない。


 しかしながら、この商品は大変すばらしいのだ。


 なぜなら一般に言われる「性の商品化」とは上記にあるように、どれもこれも露骨に女性の肉体やら肖像やらが絡んでいる。一つ残らず、それらを想起させる何かが絡んでいる。

 まったく下品である。なんの工夫もない。人類の頭脳が使われた形跡すら無い。


 ところがこの「透視メガネ」

 買う目的はただひとつ。女性の裸が見たいという男性の欲求。

 おもいっきり女性の性を目玉商品としているにも関わらず、一切女性の肉体やら肖像やらが商品そのものには反映されていないではないか。外見はただのメガネそのものでしかないのだ。


 エレガント……。

 とんでもなくエレガントである。

 高等数学のごときエレガントさが、この商品には内在している。


 これぞ究極の「性の商品化」と言わず何を言うのか。


 むしろこれ以外の、やり玉に挙げられている様々な分かりやすいものは「性の商品化」には程遠い。

 いうならば「エロの直売」だ。「性」なんて抽象的に言うのはおこがましい。

「エロ」だ。エロの直売はイカンだろ。知性が感じられない。お猿さんの交尾レベルだ。

 お猿さんがメスのお尻の発情サインをみて発情しているのとなんら変わりがないのは、「高等知能生物ですが?」と君臨している人類としては、あまりにも情けないではないか。直球はイカン。 


 ひねりましょう。ひねりましょう。もっと性的欲求を賢い感じに昇華するのだ。

 もっと人類は「性の商品化」に真剣に取り組み、さらなるエレガントの高みを目指すのだ。


 そんなに難しいことではないはずだ。

 だってこの商品、とんでもなくアホだもん。

 アホなのにエレガント。

 アホなのに知的遊戯。


 ああ、これぞまさしく「究極」の名を冠するにふさわしい。

 そう思わずには居られない昭和ロマン。


 それが「透視メガネ」なのであった。




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