ひそかな決意表明

 この文章を書いて、ひそかに決意したことがあります。

 で。

 「ひそかに決意した」だけならば、忘れてしまうか、あっさり挫折してしまうか、という結果が見えているので、ここにちゃんと書いておきます。


 

 少なくとも、取るために努力します。

 勉強します!

 勉強しまっせ!

 ……って、それ、たぶん、意味が違う。

 「勉強」ってもともと「つとめている」なので、「無理をする」の意味なんですね。

 だから「無理をしてでも値引きしますよ!」が「勉強しまっせ」なのですが。


 でも、私が気象予報士って、絶対、「」しないと取れないよね。


 この文章を書いていて怖かったのは、気象学的に、あるいは天気予報的にまちがったことを書いていないか、ということでした。

 だいたい、途中で、低気圧のまわりを回る風の向きを逆に書いていたことに気づいて、書き直したりしていますから(北半球では「左が低圧」になるように回るので、高気圧の周囲の風は時計回り、低気圧の周囲の風は反時計回りなのです)。

 初歩の知識もないまま書いて、危なっかしくてしかたがない。


 危なっかしいまま書いてしまったこともあって。

 たとえば、能登半島豪雨を引き起こした線状降水帯が発生したのは、「南の海上からの湿った風と、中心気圧一〇〇四ヘクトパスカルの「平凡な低気圧」のまわりを回る風がぶつかったからだ」なんて、じつは、私が調べたなかのどこにも書いていない。

 「南の海上からの湿った風の影響」、「海水温の高いところを吹いて来た湿った西風の影響」、「線状降水帯は吹く方向が異なる二つの風がぶつかってできる」と書いてある文章はある。それをつなぎ合わせてそう書いたのですけど。

 たぶん、そうだとは思っているのですけど。

 でも、ほんとにそうなのかな、と、疑う気もちも消せません。


 私はじゅん惑星わくせいについても戦艦扶桑ふそうについても書いていますが、準惑星についてまちがったことを書いてもまず人の生命には関わりません。戦艦扶桑についても、いま、まちがったこと・不適切なことを書いても、関係者の方を不愉快にさせることはあるかも知れませんが(だからできるだけまちがいは避けたつもりですが)、やはり現在の人命にかかわることはあまりないと思います。

 ところが、台風や線状降水帯についてまちがったことを書き、それを信じてしまった方がいらっしゃると、もしかすると現在の人の生命を危険にさらしてしまうかも知れません。


 気象予報士だったら、というより、気象予報士の試験に合格できるくらいに「勉強」すれば、そういうことも自分で判断がつくのにな、と思ったのです。


 ただ、そうなったら、もう「自分の関心のあるところだけ調べて、情報を集めて」というわけにはいかなくなります。

 また、「雲ができる高さが低い」とか「雲のてっぺんの高度が高い」とかいう表現も、「持ち上げ凝結ぎょうけつ高度が低い」、「平衡高度(浮力ゼロ高度)が高い」と言えるようになければならなくなります。いつでもそう言わなければならない、ということはないですが、そういう専門用語を身につけ、一般向け用語と使い分けができるようにならないといけない。

 あと、天気図を見て天気予報ができないといけない。

 さらに、気象予報に関係する法令の知識とかも必要です。


 まあ「たいへんだ」ということはわかります。

 だから「」しないと取れない。


 あと、もうひとつ、決意した理由があって。


 ある物語に出て来る女子高校生について、「この子は高校在学中に気象予報士の資格を取るために勉強している」という設定を作ったところ、この登場人物に「冗談じゃない! そんな設定作るのなら、あんたも取りなさいよ!」と激しく怒られた感じがして……。

 「やや強く怒られた」とか「強く怒られた」ではなく、「激しく怒られた」、もしかすると「非常に激しく怒られた」、さらにもしかすると「猛烈に怒られた」感じがして。

 もう、ねえ。

 いきなりローライフレックス(二眼レフカメラ)を持って来る子がいるし、親が紛争地帯で取材中とか、気象予報士を目指すとか……。

 最近の若い登場人物って、ほんとに作者に負担をかける子が多すぎです!

 や さ し く し て … 。

 まあ、バトントワリングの基本も知らずにバトン少女の物語を書いたことはあるので、知らなくてもなんとかなるとは思うのですが。

 でも、気象予報士を目指す少女については、やっぱりその「」のたいへんさを自分も体験しておいたほうがいいと思ったのです。


 ちなみに、この人物は現在掲載しているどの小説にも未登場です。

 もし出て来たら、「この子かぁ」と思ってください。


 というわけで。

 勉強します。

 勉強(=無理)しまっせ!

 はい。


 それでは、また次の物語でお目にかかりましょう。


 清瀬 六朗



 【追伸】

 というわけで、気象予報士試験のためのテキスト(その他、昨日の回に書いた片山美紀『気象予報士のしごと』と筆保弘徳『台風についてわかっていることいないこと』、気象学の標準的なテキスト小倉義光『一般気象学』など)を買ってきたのだが。

 テキストを開いて

 「えーっ?!

 なにこれー?!!」

 ……って、なってます。


 計算問題が出るのは知っていたのですが。


 「合格率五パーセント」も知っていたのですが。

 『気象予報士のしごと』に「記念受験の受験者もいるのであまり「五パーセント」を真に受けないほうがいい」という話はありました。また、大学入試などと違って合格者の人数が決まっているわけではないので、「ほかの受験生の出来がいいから落ちる」という事態は気にしなくていいのですが(みんなの出来が悪いと得点調整がかかって合格点が下がることはあるらしい)。


 この「ひそかな決意」の前には、「高校数学の知識があればだいじょうぶです」と聞いていたのです。

 でも、指数関数とか自然対数とかへん微分びぶんとか?

 聞いてないよ、それ。

 でも。

 もう、ここに書いてしまった以上は、「勉強=無理」します!

 もう「正常性バイアス」も何もなしに挑みます!


 どう転んでも、結果は(近況ノートなどで)お知らせしますね。

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台風について私が知っていること 清瀬 六朗 @r_kiyose

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