あの星の泣き声がきこえるの

一葉 小沙雨

あの星の泣き声がきこえるの

 やあ、メアリー。金星の泣き声は聞こえたかい。

 あの星はきっと今に泣き出すよ。きみにも聞こえると良いのだけれど。

 どんなに雪雲が分厚くたって、大丈夫。あの子の泣き声は夜をも突き刺すほどだから。

 可愛いメアリー。街が白く暗く染まったって、……たとえ赤く染まってしまったとしても、きみが泣くことはないんだよ。

 雪が白いのは世界が色づいているからで、街が暗く染まるのは明るさを誰かが知っていたからで。

 世界が赤く見えたのは、きみとあの子が生きていたから。そう、たったそれだけのこと。

 さあ、メアリー。そろそろ金星が泣き出すよ。用意は良いかい。

 泣いたって待ってはくれないよ。ほら、メアリー。ぼくのいとしい、可愛い子。

 目蓋をひらいて、今すぐその耳を塞いだ手をとって。


 ……ほら、聞こえたかい。


 そう、良いね。きみはこれからあの一番星が輝くたびに、この声を聞くんだ。

 あの日のあの子の泣き叫ぶ声が……、


 ……メアリー、ほら、聞こえるだろう?



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あの星の泣き声がきこえるの 一葉 小沙雨 @kosameichiyou

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