地上の星座だって、奇跡を結ぶんです!

みこと。

全一話

 不可抗力、だと思うんだ。



 プラネタリウムで冬の星座上映を見終わった僕の感想は、それだった。


 おおいぬ座とこいぬ座。

 これらの犬は、ギリシャ神話に由来すると解説されていた。


 凄腕狩人のアクタイオン。

 彼は犬たちを連れて入った森の中で偶然、女神アルテミスの水浴びを見てしまう。


 女神は怒った。裸、見られちゃったから。


 そしてアクタイオンを鹿にして、彼の猟犬・・に殺させた。

 さっきの星座。


(ひどいや。わざとのぞいたわけじゃないのに)


 席を立ちながら鬱屈うっくつとした思いで、待ち合わせの場所へと向かう。

 ママと科学博物館に来ていた。


 急にワークショップに参加したがった妹にママが付き添い、僕だけが予定通りプラネタリウム。


 なんだか、やるせない。


 昨日、友達に馬鹿にされた。

 サンタなんていないんだぞ、って。

 僕の年齢トシで信じてる方がおかしいって。


 小学校は残酷だ。知りたくもない世界を突き付けてくる。


 でも僕は願ってしまう。あるプレゼントを。



 その人を見たのは、そんな時だった。

 

(ん?)


 真っ黒いコートに黒い帽子を深くかぶって、白く長い髪を後ろにまとめた、ひげの長い老人。

 足元には、とても大きな袋。


(なんだ?)


 連れがいる様子はない。

 子どもが多い科学館には、不似合ふにあいな外国人。



 まさか殺し屋?

 僕、アクタイオンみたいに、見たらいけないものを見ちゃった?



 ──なんてね。

 たるみたいに大きなお腹だもん。機敏な動きとは縁遠そうだ。



 そう思っていたら、彼の足が当たって袋が倒れた。


 中からこぼれたのは、おもちゃ!


「おっと」


 袋を直そうとその人がかがんだ時、僕と目が合った。


「おや。これは見られてしまったかな」


 見ちゃったよ!

 コートの下に、お馴染み赤と白のあの服!


 このおじいさんって、もしかして──。


 柔和な声が、耳を撫でた。


「今見たことは秘密だよ。──きみは、何が欲しい?」


 優しい瞳の、サンタクロース!




 僕は──。




 思わず望みを言ってしまい、直後に後悔した。


 見ず知らずの人相手に、僕は何を!


 カッと頬が染まり、後ろも見ずに駆け出した。


(恥ずかしい!)


 きっとサンタ役として、クリスマス・イベントに呼ばれた外人スタッフだ。

 考えたらすぐわかることなのに、僕は真面目に答えた。



 だって心にあったから。

 その願いが、ずっとずっとあったから。






 イブの夜。


 僕は驚きのプレゼントをもらった。

 ジャーナリストの仕事で、海外で行方がわからなくなっていたパパが、帰って来た!

 

 サンタのソリで星空を運ばれたって、パパ。


 えええ──??? 

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