最終話 あれ? 俺の存在ってまさか……!?

「行きますわよ……おらぁぁぁ!」


 アイリスの魔力がゴブリンの主機をフル回転させた。


 ずんぐりむっくりの機体が、手にしたモーニングスターをブンブン振り回しつつ、森の中を豪速で駆け抜けてく。

サクラ三姉妹やヴァルキリーズが操るゴブリンよりも、明らかに早い。


「ぶちのめしてやりますわ! そこをどきなさぁぁぁぁいっ!」


『でたなバカ王女! 貴様など、このブラックドラゴンで、がっーーーー!』


 アイリスの放ったモーニングスターのスパイク付き鉄球が、巨大なブラックドラゴンを思い切り突き飛ばした。


「どんどん行きますわよ! おらおらおらおあらぁぁぁ!」


 目にも止まらぬスピードと、凄まじい力でモーニングスターを振り回し、ブラックドラゴンを圧倒するゴブリン。


ーーやはり、こうやって俺が機体に同乗することで、データから反映させた能力を、搭乗者や機体へ100%付与できるようだ。


「おっほほほほ! ビックスの決戦MBブラックドラゴン! 噂ほど大したことありませんわね!」


 アイリスは調子良く、ブラックドラゴンを叩きのめし、ご満悦な様子。

しかしそんな中、右腕の損耗を示す表示とアラーム音が。

どうやら重いモーニングスターを勢いよくぶん回していたせいで、右腕に故障が生じたようだ。


「姫様! 私の右腕をお使いください!」


 と、ヴァルキリーズの一体が、右腕を外してアイリスのゴブリンへ投げた。

それをキャッチしたアイリスのゴブリンは、損耗した右腕を外し、すぐさま受け取った右腕と交換。

損耗表示は消え、アラームの鳴り止み、アイリスは再びブラックドラゴンへ向けての、モーニングスターの猛攻を再開する。


 こういう時、量産機というのは便利だ。

同じ機体同士だから損傷した時も、こうして交換することで継戦することができる。

ワンオフの機体ではこうもゆくまい! そしてこれが、今のスモル王国にできる、最良の戦い方だ。


 俺の視界にのみ表示されている、ブラックドラゴンのヒットポイントはあとわずか。

そして見るからにボロボロ。


ならばーー


「アイリス、そろそろ止めだ。ぶちのめせ!」


 ビックス三世はメインシナリオで、アイリスへあんなことやこんなことをして、無茶苦茶にした憎むべき敵キャラだ。

万死に値する!


「わかりましたわよぉぉぉぉーーーー!」


 アイリスの叫びが、彼女のうちに秘めた魔力を燃え上がらせた。

それは機体に伝播してゆき、モーニングスターの鉄球を怪しく輝かせる。


『わ、悪かった! 侵攻は諦める! だから……!』


 ほぼスクラップと化したブラックドラゴンから、ビックス三世の情けない命乞いが聞こ得てくる。


「喧嘩売っておいて、それは都合が良すぎることなのですわ」


『ひぃ!?』


「ぶっつぶれろぉぉぉぉぉーーーー!!!」


 アイリスの放ったモーニングスターの鉄球が、ブラックドラゴンを粉々に打ち砕く。


 中にいるビックス三世も、そんな衝撃を受けたのだからお察しな訳で。


 大将機がやられたことで、戦場にいた全てのビックス帝国の将兵が、白旗をあげて降参を示唆する。


「勝利ですわよぉぉぉ!」


 沸き立つスモル王国側。


 俺はなんとメインシナリオ開始前だけど、アイリスの運命を変え、彼女を守ったのだった!


●●●


「さぁて、ここから先、どうしたもんかなぁ……」


 すでにアイリスを救うといった、この世界で成し遂げたいことは終わってしまった。


 次は何をしようか。そんなことを、スモル王国の王城の自室で考えていた時のことーー


「あ、あのっ! ハイカキン様、入っても宜しくて?」


 扉の向こうから、弱々しいアイリスの声が聞こえた。

どうぞと告げて、中へ入るよう促すとーー


「ア、アイリス!? その格好は……!?」


 目の前に現れたのは、スケスケな格好をして、頬を真っ赤に染めるアイリス。


 ああ、忘れてた……このゲームってそういえば……


「よろしければその……私をもらっていただけませんか、ハイカキン様……」


 甘い言葉と共に、アイリスは俺をそっと、ベッドへ押し倒す。

 

ーーこの「モンスバトラー」というゲームってR18指定……つまりアダルト要素のある作品だ。


 指揮官役であるプレイヤーは、お気に入りのキャラと機体に同乗し、敵を倒すことによって好感度を高めてゆく。

当然、こうした好感度も皆、カンストしているわけで。

アイリスとのそういうシーンは、これまで散々オカズとして使わせていただいたわけで。


 でもまさか、本当に、本物のアイリスとエロいことができる日が来るとは!


「い、行くぞっ、アイリス……!」


「は、はいっ……遠慮なく来てくださいまし……んぅっっっ!!」



ーーこの日、俺はこの世界で何をやるか決めた。


それは、これからもアイリスとのこの生活を守るということだ!


なにせ、俺はメインシナリオを序盤から書き換えてしまったのだ。


なにが起こるのかはわからないし、このまま穏やかに時間が流れることは考えられない。


でもなにが起こっても、俺はこれからもアイリスを守ってゆく。そう心に誓う!


「アイリス、もう一回行くぞぉ!」


「は、はいぃ……! どこまでもお付き合いしますですわぁ……!」


 その晩、俺は何度も何度もアイリスをひぃひぃ言わせ続けるのだった。


 って、あれ……?


 なんか、アイリス、性的に落ちてるっぽいし、今のスモル王国って、ビックス帝国の領土を飲み込んだんだよな?


 実質、ビックス帝国のようなもんだよな?


 え? え? これって……? まさかなぁ……!



<おわり>

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サービス終了をしたファンタジーロボットゲームにそっくりな異世界に転移した俺は、廃課金データで無双する。 シトラス=ライス @STR

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