この国では、祈りが神を作る。

「お前の嫁ぎ先が決まった。――お前は、春までに死ね」

『宝石病』にかかった桜花院当主の代わりに死ねと命じられたやちよ。
ところが夫にあたる唯月は、彼女の接触を拒む。彼は呪いを誰かに押し付けることをよしとせず、死を受け入れるつもりでいた。
実家では疎ましがられ、せめて死ぐらいには意味を見出したい。やちよは唯月と接触することを考えるが……

やちよの不遇な境遇に怒る、優しい幸子。
様々なことを教えてくれるヘルマン医師。
そして、どれだけ自分が苦しくとも、やちよを犠牲にすることを良しとしない唯月。
 
「好きかはわかりません。――でも、死なせたくありません」
 
少しずつ変わっていく日常の、終わりが近づいてくる。
その中でやちよは、ある決意を決める。
やがて見えてくる『宝石病』の真実。
はたして、二人に春のその先はやって来るのか。