短編集 ファンタジウム【幻想物質】

ファンラックス

ファンタジウム

私は小説家。今日も小説を書いている。

私が書いているのは幻想の世界、世間ではファンタジーと呼ばれているものだ。

自分が思い描いた通りの世界で、自分の思い描いた人々が日々切磋琢磨しながら

生きているのは、何とも美しいかぎりである……


私には娘がいる。今日で17歳になる可愛い愛娘…

小さな頃から暴れん坊だったが、女手一つでここまで育て上げた。


「ねぇ…誕生日に何買って欲しい?」


「えぇ…母さんが買ってくれるものなら何でもいいよぉ〜」


「誕生日くらい遠慮しないで…」


娘は少し考えた後、私にこう言った。

「私に近未来系のホラーファンタジー小説を書いてくれない?」

私はその言葉に快く承諾した。


その日から私は来る日も来る日も部屋にこもって小説を書き続けた。

時々、心配しに来てくれた娘に対しても

「大丈夫、もうすぐできるから…待っててね」

と言い、ひたすらに書き続けた。そして、ついに小説を書き上げた!


「はい、これプレゼント!!」


娘はプレゼントをもらうと、飛んで跳ねて喜んだ。

ここまで喜んでくれると私も頑張った甲斐があったと思う。


すると娘が不意に聞いてきた。

「ねぇねぇ、この幻想物質ファンタジウムっていう小説、どんなお話なの??

あらすじだけでも聞かせて〜…」


全く…最近の若い子と言ったら先に結末を知りたがる…こういうのは全く知らない状態から読むのが面白いというのに……


しかし娘がどうしても知りたいというので教えてあげた。


「この小説はね……


ーーーーーー


とある研究者は謎の物質を見つけました。

その物質は人や動物の願いや想像に共鳴し、新たなことができるとてつもない力を秘めたものである事が分かりました。


とある科学者はその物質を動物に付与しました。

動物は自らの世界を脳で想像し、その想像は脳だけに留まらず、近くの植物や、動物にも影響を与える事が分かりました。

科学者は大いに喜びました。この力を使えば資源の枯渇、食料問題、戦争、領土その他にも様々な社会問題が解決できるからです。


とある科学者はその物質をに付与しました。


「ここは…何処?私の娘は!?」


「よっしゃぁ。成功だっ…!!!」

私の目の前にいる科学者は、嬉しそうにそう呟いた。

私の体からは別々の機械につながっているコードが、タコ足のように接続されている。


「あのぉ…一体ここはどこなんですか…?……」


科学者は少し考えた後、何かひらめいたように私に言った。

「あぁ…!!貴方の想像した世界エンティティー01の事ですか…!?

なるほどぉ…自分の想像したエンティティーを自分の娘と誤認っと…

想像力が強すぎると、まるで最初から自分がその世界にいたように錯覚してしまう

わけですね…!これは興味深い……」


「エンティ…ティ??」

どういう事だ…!!?言葉の意味がまるで最初から理解できない……


「まぁ…落ち着いて聞いてください……結論から言うと貴方の娘は

この世のどこにも存在しません……です」


「は???一体何を言って……」


「幻想を現実にできる物質、幻想物質ファンタジウム。この力を使えばありとあらゆるこの世の問題を解決できると踏んだ我々科学者は、を行い、幻想物質ファンタジウムを適応させようとした。

普通幻想物質を入れられた動物は、そのうち精神崩壊し、死んでしまう。だったら人間はと試してみたはいいものの…大抵の人間は同じような末路となった。

しかし、私は信じていたのだ。人間には、動物にはない、自我をコントロールするためのがあることをな。そして今誕生したのだ!!幻想物質を適応させた人間。

幻夢創造者ファンタスト・クリエイターが…」



娘が…いない???本当は何処にも????なんでなんでなんで…あんなにはっきりといたのに。どうしてどうして、あんなにはっきりといたのに。



「娘を返して」


「だから何処にもいませんって。頭の中まではバックアップは取れませんから…」


「娘をぉ返して」


「だーかーらー、何処にもいませ…

「返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ」


「…!バイタルが不安定に…まずい!助け……」


どうして私がこんな目に遭わなければならないのだ。

これは幻想なのか?それとも現実?どうでもいい……ここに娘はいない。

世界に娘がいないならただ壊す。


それだけだ……その後私は、世界を飛び、時空を超え、娘がいない世界を破壊の限りを尽くした。


ーーーーー


「って…お話だよぉ」


「何それ、世界観ヤバすぎ。メチャクチャ設定じゃん……」

娘は呆れたように言う。


「いいでしょ、これくらい吹っ切れた方がファンタジーは面白いのヨォ」


「まぁ、でもお母さんが作ってくれたんだもん…しっかり読ませてもらうよ。

しっかりと感想も聞かせてあげるから……」


「ありがとう娘ちゃん……」


「本当にありがとう、お母さん…だーい好き」

娘は私の胸に向かって思いっきり飛び込んでくる


「ずっと一緒at”46j5f:”yc4だね」


「うん!!」


私は空が星で包まれるまで、泣いていた。








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