第2話 F−2
「あー暑い…」
「青年、そんなこと言っても涼しくならないぞ」
「どっかの誰かさんがぶっ壊したから冷房が効かないんだよ!」
男は模型に色を塗め終え、襟を掴むとぱたぱたと仰ぐ。
あの日以降イーグルは男の部屋に居候するようになり、さらにゲームの存在を知ると外に出ることはめっきりと減っていった。
室内の温度は外と変わらない暑さだ。それにも関わらず
_ピンポーン
呼び鈴が鳴り響くと男は立ち上がり扉を開けようと玄関に向かう。するとイーグルは何かを悟ったのか慌てて寝室のクローゼットに隠れ、中から「私はいないと伝えておけ!」と男に伝える。
イーグルの様子から疑心暗鬼になりながらも扉を開ける。そこには、青の長い髪を束ね紺色の服にロングスカートを見に纏った女性が立っていた。
「あの_どちら様ですか?」
「私は航空自衛隊茨城基地所属のF−2と申します_こちらにイーグルさんはいらっしゃいますか?」
男は考え込むものの、頭の中では
「あいつならクローゼットに_」
「失礼します」
男はあっさりと彼女の問いかけに応じると、すぐさま部屋の中に入り込む。彼女は迷うことなく寝室へと向かいクローゼットの中に隠れていたイーグルの襟を掴むと容赦なく部屋へと引き摺り出した。
「松岡3佐があなたの帰りを待っているんですから、こんなところで油売ってないで帰りますよ」
「嫌だー!!」
イーグルは彼女に引き摺り込まれ、嫌々と足や腕を振って抵抗していた。その時に模原と目が合うと怒りを滲ませ「この裏切り者があぁぁ!!」と叫び上げた。
「その窓どうしたんですか?」
彼女は足を止めて目の前の割れっぱなしの窓に食いついくと男は即座にイーグルに指を差した。すると薄ら笑いでイーグルは彼女の方へ顔を向けて…
「私さ、窓を治すために働かないといけないからさ、だから今は帰れないんだ」
それを聞いた彼女は、掴んでいた襟元を離し小さな青の肩掛け鞄から財布を取り出すと、修理費にはあまりにも多い額を男に渡してきた。
「そんなに…いらないよ」
「遠慮しないで、受け取ってください」
男は渋々受け取る。するとイーグルは、立ち上がり彼女の肩に腕を伸ばした。
「バイパー_そんな良い子ちゃん装っても10年後には、"後継機"に置き換えられるんだから…」
「!!…そういうイーグルさんこそ、F−35に現在進行形で置き換えられているじゃないですか」
「私?、あの子は高いのに私よりも足遅いからすぐに仕事は減らないし〜、後_私は近代化改修も計画されているから、あなたよりも働きますー」
「私だって…まだ計画段階だし、すぐには減らないもん」
(あれれ…イーグルが優勢なのか?)
「イーグルさんの親会社は、半世紀経って新しいの出すと思ったら、あなたの上位互換が出してきて、他にもっと良いのあったんじゃないですか?」
「それくらい、私の基本設計が優秀ってことでしょ」
「むぅぅ!…この"アラフォー戦闘機"!!」
彼女は子供のように涙を溜めて赤く染めた顔で頬を膨らませ出てきた言葉にイーグルは「運用年数を実年齢と結びつけるな!」と返すとお互いに怒りの形相で睨み合いが続いた。
「イーグルなら…私から説得しますから一度外に出ましょう」
目の前で止まらない言葉の応酬に男は間に割って入るとお互いを引き剥がし、彼女と共に外へ出た。
「イーグルさんは、いつも自分勝手なんですから!」
未だに眉を上げて頬を膨らませながら歩く彼女を宥めようと男は、近くの和菓子店へと足を運ぶ。
「お待たせしました…」
男は団子を買い終わり彼女の方へ向かうと、彼女の周りに"あの男たち"がリベンジと言わんばかりに口説こうとしていた。
「あの…人を待っているので、他を当たってください」
「良いだろう?、なぁ?」
「 はぁ…それなら仕方ないですね…」
離れようとしない男たちに彼女は深くため息を吐くと、どこにしまい込んだのかわからないバッドを取り出した。
「今日はすこぶる機嫌が悪いので、力の調節できるかな〜」
頭の男にバッドの先端を向けると、ニンマリと温かみのない笑顔で男たちに「これが最後の警告です」と言葉を添えると危機感を募った男たちは一目散に去っていった。
F-Girl 水野・J・タロー @mizunoj230405
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