F-Girl
水野・J・タロー
第1話 F-15
「ふぁぁ…終わった〜」
机の上に置かれた課題に追われながらも、男は腕を上げ背筋を伸ばしては部屋の天井を眺めた。
男の名前は、模原 圭人(もはら けいと)。進学を機に上京して数ヶ月、バイトやいろんな手続きなどがあってバタバタしていたが、ようやくここでの生活にも余裕が生まれ、自分がやりたいことにも手を出せるようになってきたある日のこと。男は立ち上がる気分転換に別室に積み重ねられた段ボールの中から一つの箱を取り出した。
「久々にやってみるか!」
その箱をリビングに持っていき、中を開ける。そこにはきっちりと敷き詰められた模型の箱の数々。
男がやりたかったことは"模型の制作"である。
箱を開けた時のわくわく感、ニッパーでパーツを切るぱちっという音、男にとって模型を作る時間は至福の時間なのだ。また、その戦闘機の歴史など調べたりして、新たな楽しみがさらに広がる。まさに一石二鳥の趣味なのだ。
「それにしても、このF-15は運用して40年以上経っても現役で運用しているのがすごいよなー」
「そーなんだよー!!」
まだ組み立てられたばかりの模型を片手に男が呟いていると、勢いよく部屋の窓を突き破る女の姿に男は驚きのあまりその場で尻もちをついてしまい。
「っ!_いてて…」
「えっ!待って_ここ7階だよ!ってかあなた誰?」
「よくぞ聞いてくれた青年!私はF-15J!愛称はイーグル!!」
辺りはガラスの破片が散らばり中に生ぬるい風が入っていく中、灰色のパーカーに足首が見えるズボンに身を通した彼女は堂々した立ち振る舞いで自身のことを名乗った。
「は?_いや…そんなことよりも窓!窓!」
男は自己紹介するあなたに気を取られるものの、それどころじゃないとすぐさま彼女に問い詰めると彼女は大粒の涙を流しながらあなたの足に抱きついて。
「お願いしますぅ!ここでエプロンしゃしぇてくだしゃぃぃぃ!!」
「ちょっと、えぇ!なんで!そんないきなり…」
「もう訓練嫌なんですぅ!!始めは北海道でのんびり暮らそうと考えていたのに、上が岐阜に行けって、そしたら眼鏡をかけた男たちが変な目で私を見てくるし、戻ってきたら石川県から来たくっそ目つきの悪い先輩にボコボコにされるしでもう散々なんですぅぅ!!」
先ほどの威勢とは全くもって対照的で、涙と鼻水を流しグシャグシャな顔で男に訴えかけた。
「そんなこと言われたら…べ、別にいいけど…」
「本当か!さすが!わかっているな青年!」
「でもな!窓割った責任は取ってもらうからな!」
ころっと笑顔を取り戻した彼女に男は割れた窓の方に指を指した。それを見た彼女はどこか申し訳なさそうに窓から視線を逸らしながら。
「今、お金…ない」
「 はぁ?」
「旅行で使いすぎちゃった♡、でもちゃんと窓は直すから!!」
よりにもよって今作っているのがこんなに能天気で手持ちの金もない情けないやつだなんて心の中で思いながらも男は仕方なく飛び散ったガラスの破片を集めた。
「そういえば、名前ってなんて呼べばいいの?」
「そうだな〜呼び方は愛称のイーグルで構わないぞ!」
彼女は男の質問に即座に答えては、自身の模型を眺めながら、今作っているのか?と問いかけた。それに男は、後は色を塗ったりするだけだけどね
「なぁ…青年!私はお腹が空いた。何か作ってくれ!」
「それなら、唐揚げとか?」
「いい考えだな!」
「でも材料ないので、買い物付き合ってください!」
彼女は不満そうな顔で男のことを見つめ、ったく、仕方ないなぁ…とゆっくりとため息を吐きながら重い荷を下ろすかのように立ち上がれば、男と共に買い出しに出かけた。
「ふんふーん♪唐揚げ唐揚げ〜」
買い物を終え上機嫌の彼女は、鼻歌を混じえながら近くの商店街を何物顔で歩いていた。
「イーグル、そんなに食べるの?」
「そりゃあ_唐揚げは私の好物だからな!青年は唐揚げは塩派か醤油派か?私は断然醤油派だ!」
袋の中には男女2人で食うにはあまりにも多すぎるほどの量の鶏肉とそれに必要な食材でパンパンにはち切れていた。
男はそんな袋を持ちながら厳しそうな表情で尋ねると、彼女はさも平然と答えては男にしょうもない問いを投げかけた。
「ちょっと!_なんですか?」
「俺たちと遊ばない?」
「嫌です_そこどいてください」
「えぇ〜そんなこと言わずにさ」
2人が歩いていた先で不良らしき男たちがが声をかけた女性を囲んで不敵な笑みを浮かべながら見つめていた。
「やめてください!女性にも周りの人にも迷惑ですよ!」
その中の間に1人の青年が入り込み、女性を庇うように男たちの目の前に立った。不満に思った男たちの頭は「邪魔なんだよ!殴られなければそこをどけ!」と拳を青年の前に振り上げる。
「っ!!_」
女性のことを庇おうと青年は一歩もその場で動じない姿勢で殴られるのを覚悟を決めようとしたその時…
ものすごい勢いで飛んでくる濃緑の物体が振り上げた男の顔面に直撃して、風船のように破裂し辺りに飛び散る。頭の男はその場で倒れ込み取り巻きの男たちに支えられた。
「す、西瓜?」
驚愕する青年の前にゆっくりとイーグルが現れ、男たちに鋭い眼光を飛ばして
「お前らもこうなりたくなければ、さっさとその場を去れ!_今すぐに!!」
鬼気迫る彼女の言葉に辺りは時が止まったかのように静まり返る。それに怯える男たちは、倒れ込む頭の男を担ぎながらその場を後にする。青年は安堵のあまりその場で座り向み、辺りも少しずつ時が動き始める。
「あ、ありがとう…ございます」
「私は大したことはしてない!君の覚悟に応えてやっただけだ!」
彼女は満面の笑顔で青年の手を掴めば立ち上がらせ、「その気持ち忘れるなよ!」と青年に告げると、男の元へと戻った。
「なんか…見直したよ_イーグル」
「なんだよ?_私の勇姿に感動してるのか?これでも国を守ってるからな!」
男が感動している様子に彼女は煽り口調の返しに「やっぱりイーグルだなぁ」と心の中で留めながらその後は2人で談笑して帰るのであった。
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