第51話:退屈しのぎ
菜摘と隼人とは別れて、やってきたのはショッピングモール。
「モックありますよ〜!!」
結局、餌という名のスマートフォンと文天堂のスイッチにつられて付いてきてしまい、買い物を終えたあとフードコートにいた。
「好きなものを持ってくるといい。私が払うよ」
開闢は席につき、ひよりと泰人に現金を握らせればそういった。いわれるがままに昼食を買いにいった二人。戻ってきたときにはトレーに山積みになったモックのバーガーがあった。
「若いねぇ」
「オバサンだ」
「オバサンですね〜」
二人も席につきもぐもぐとバーガーを食べ始めれば開闢は、もうお腹いっぱいだとでもいいたげに見ていた。本人いわく、もうバーガーを見るだけで胃もたれする歳になってしまったらしい。
「さてさて。本題に入ろう」
二人が食べている中、頬杖をついて話し始めた開闢の姿は心底楽しそう。ひよりはピクリと肩を揺らし食べる手を止めた。
「オークションやるんだってね。どこかに会場を借りるのかい?それとも、ネットオークション?」
何かヤバイことをいわれるのではないかと身構えたが拍子抜け。ひよりは面倒くさそうに眉間にシワを寄せ口を開いた。
「ネットオークション...。珠玉の魔女の傘下にある会社が開発した、オークションサイトを使うつもり。珠玉には菜摘さんが許可取ってくれたらしい。当日はサイト落ちしないように大幅に強化してくれるともいってもらえたよ」
そういえば開闢はフフフッと可笑しそうに声を出して笑い始めた。
「そうかそうか!珠玉も現金なやつだね。オークションで一儲けしようって魂胆!その菜摘って子相当頭が切れる。魔女同士が手を組んで開催する大規模な催しともなれば反魔女も警戒して迂闊に手は出せないか」
「いいね。最近退屈していたんだよ。私も混ぜてほしいものだね」と開闢はひよりに顔を近づけ強めな主張をした。
「いいよ」
しかし、意外にもひよりの答えはYES。これには絶対に断られると思っていた開闢も唖然だ。
「その代わり、名前は借りるよ。開闢の魔女、珠玉の魔女、叡智の魔女の共同開催。どんどんマスコミに餌を与えて、大昔に開催してたオリンピックみたいな国をあげた催しにする」
そういえば、開闢は突然手を伸ばした。
「寂しいものだね。大人の後ろをチョコチョコ歩き、大人のいうことを聞いて動いてきたひよりが...今や教団を立て直すなんていうようになってしまった」
「私の後ろをついてきていた君は実に滑稽だったが、愛らしかったよ」という開闢の姿は、いつも浮かべる胡散臭い笑みとは程遠い、穏やかな笑みだった。
「妄想癖があるのは坊さんだけでいいよ」
開闢の言葉にそっぽ向いてバーガーを食べ始めたひより。そんな姿に「照れているのかい?」という姿さえ直哉に見えてきた。そう横でバーガーを食べながら奏人は考えていた。
「オバサンは、なんで開闢なんですかー?塩屋さんは自分の魔法から取ってるのは分かりますし、ひより様は賢いので叡智も分かりますけど」
話が一段落したところで奏人が口を開く。するとひよりが嫌な顔をして奏人を静止するも、遅かった。
「ふっふっふ。よくぞ聞いてくれたじゃないか!!」
突如、人が変わったようなハイテンションで立ち上がる。両手を天に向けて叫ぶように話し始める。
「始まりの魔女?創造神?そんなものクソほど面白くない!!私がこの世界の神になろうと思ってね!!いいじゃないか開闢!私がこの世界を...イタッ!」
興奮気味にそう話す開闢だがすぐにバンッ!と音を立ててテーブルに顔を打ち付けた。開闢の頭を掴んでいたのは...
「ババア。フードコートで気色悪い厨二病を披露すんな。飯が不味くなる」
孤城のアトリエ 伊織 凛 @iori_rin_07
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