第4話 大腸カメラ前日
医療センターでの診察から数日後、大腸カメラが明日に迫っている中で私の朝ご飯として大腸検査用の食事キットの味気ない食事が用意されていた。確か雑炊か白がゆだけの簡素な朝ご飯だったような気がする。それをお腹に収め、仕事に向かった。
職場では係長がチョコレートを食べていて内心腹が立った。こっちは量が少ない検査食だけでお昼まで耐えなきゃいけないのに……! 係長は何ら悪いことをしていないので完全なる嫉妬だ。しかし食べ物の恨みは激しい。まあ、係長もお腹周りが気になるのか糖の吸収を抑えるチョコレートを食べていたので同じく我慢を強いられている人間ということで目の前で食べていても何とか慈悲の欠けらを振り絞って許すことにした。
お昼ご飯はもっとひもじかった。りんご味のゼリーミールだ。美味しいとか美味しくないとか最早感じない。周りがお弁当やラーメンなどを楽しげに食べている中で1人チューっと啜っていた。当然これだけでは足りない。そういうときにビスコが1袋入っていた。5枚入りの小さな1袋だが、空腹を凌ぐには物凄く貴重に思われる。なるべく限界まで食べずにいた。空腹感がMAXになった頃、ゆっくりとビスコを噛み締めると美味しすぎて泣きそうになった。子供の頃、何気なくバクバク食べていたのを反省した。
何とか仕事を終えて家に帰る。帰宅したら普段は家族揃って夜ご飯を食べるが、この日は私に配慮してか先に夜ご飯を済ましたようだ。母によって温められたレトルトのハンバーグと白がゆが食卓に並べられる。小ぶりのハンバーグだが3食の検査食の中ではNo.1の美味しさだった。次点がビスコ。正直言って検査食に期待をしていなかったが個人的にはまあまあ食べられるレベルだ。ただ出来る限り食べる機会が無い方が良いに決まっている。
夜ご飯を食べ終えてお風呂に入り、寝る前に2ℓの大きな天然水のペットボトルを冷やしておく。これは大腸カメラ経験者の父からのアドバイスで冷たい水で下剤の原液を希釈して飲まなきゃかなりキツいという。要は相当不味いらしい。私は明日その不味い飲み物を飲まなきゃいけないと思うと憂鬱な気分になった。しかも人生初の絶飲食。食べることが好きなので辛い話だ。“検査のため、検査のため”と言い聞かせて2日間を必死に耐えようと頑張った。終わったらうんと美味しいものを食べようと考えた。しかし実際にはそんな気力が一瞬で吹っ飛んでしまうことが翌日には沢山待ち構えていた。
AYAなキャンサバだけど楽しく生きています♪ 塚本 季叡 @love_violin_tea
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