一日ずれてる

惣山沙樹

一日ずれてる

 八月二十日、僕の誕生日。惣山作品の先輩である瞬くんに呼び出され渋々部屋に行ったらまずは冷たいアイスコーヒーを出された。


「美月くん、外暑かったでしょ。まあくつろいでよ」

「うん……」


 瞬くんの住むワンルームは僕のボロアパートとは違い清潔感があった。ナチュラルブラウンで統一された家具はまさに瞬くんのイメージ通りではあるけれど彼がここで何人も絞殺していることを知っているので落ち着かない。

 たちまちタバコを吸いたくなったのだがそれが顔に出ていたらしく瞬くんに言われた。


「ベランダだったら吸っていいよ。僕も吸う」

「ほな……」


 外に出るとむっとする熱気。蝉の大合唱。こんなむさ苦しい季節に僕は生まれたのである。まあ設定する時に「夏休み中にしとくか!」ってなってとりあえず八月になったことは聞いているが。

 タバコを吸い終えて部屋に戻ると瞬くんはクローゼットを開けて紙袋を取り出した。


「はい、これプレゼントだよ。お誕生日おめでとう」

「ありがとう……」


 どうせろくなものじゃない。それはわかりきっていて中身を開けた。


「うわぁ」


 まず取り出したのは黒いウサミミのカチューシャ。そして黒い光沢のある水着みたいなやつ。お尻のところには白いポンポン。


 ――あれやん。バニーちゃんやん。


「美月くん一日ずれてるけどバニーの日生まれだし!」

「いやいや八月二十一日やったら甘んじて受け入れるけど一日ずれてるんやで?」

「このために本文の方の誕生日変えるかどうか作者も悩んだみたいだけど……」

「そんな理由で設定変えんといてくれ!」


 もうやだ。確かに僕は総受けvs総攻めフェスタ(https://kakuyomu.jp/works/16817330668162980402)のために割とノリと勢いで作られたキャラだけどもう少し大事にしてくれないか?


「さっ、お着替えしようか! はい脱いで脱いでー」

「嫌やっ! 嫌やっ!」

「仕方ないぶん殴るか」

「ギャー!」


 そんなわけで僕は瞬くんにボコボコにされて服をひん剥かれた。


「もう、大人しくしてたら手荒な真似はしなかったのに」

「はい……着ます……」


 まるで予め僕のサイズをはかっていたかのように本体はぴったりで、大事なところも何とか隠れた。但し僕におっぱいは無いので胸のところはパカパカである。よく見ると襟とネクタイもついておりそれもつけて最後にカチューシャ。


「わぁっ、美月くん可愛い! まあ僕の方が可愛いからその次に可愛い!」

「……どうも」


 こんな恥ずかしいものを着るより全裸を観察される方がマシである。瞬くんはスマホを取り出してカメラを向けた。


「はい、笑って笑ってー」

「うう……」

「あっ恥じらってる表情はそれはそれでいいね。どんどんいこうか」


 最初は突っ立ったままで良かったのだが瞬くんからどしどし指示が飛んだ。


「はい、ベッドに乗ってー、四つん這いになってー」

「ええ……」

「ほらほら早く。膝蹴りされたいの?」

「わかったよぉ……」


 それからはもっと尻を突き出せだの座って股を開けだの。この人本当に誕生日祝う気ある?


「……うん、このくらいでいいか。厳選してフォトブック作って売ろうかな」

「やめて」

「利益分は美月くんのタバコ代にしてあげるからさぁ」

「むぅ……」


 ようやく元の服に着替えることを許されて一服した。


「あー可愛い後輩ができてよかった」

「おもちゃにできる後輩やないねんからな?」

「あっ、プレゼントまだあるよ。旅行券あげる。蒼士くんと温泉でも行っておいでよ」

「それは、うん……ありがたく受け取るわ」


 これからも惣山作品をよろしくお願いします。

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一日ずれてる 惣山沙樹 @saki-souyama

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