第6話 ヴィエンナ男爵
ヴィエンナ男爵は敗戦で代替わりした若い貴族だ。あまり情報はないが兵士に歌わせるくらいだから音楽は好きだろう。
賛美歌3曲の他に、酒場の歌手を呼んで10曲ほど録音した。1曲金貨1枚、伴奏はギターだ。
テルンには、作った石から複製することを研究させている。今の所、複製の音がだいぶ劣化するため環境、材質両面から検討させている。私がいないとサボるのでやる気になる材料がほしいのだが···
男爵の領都に到着すると、使いを送り、宿に泊まる。久しぶりに体を拭いた。翌日の午前に会ってもらえるらしい。破格の扱いだ。
翌朝、宿の今一つな食事を食べて男爵の館に向かう。2000人程度が住む小規模な街だ。多分全体でも5000人程度だろう。男爵は200人の兵士を率いていた。
「急な面会を受けていただきありがとうございます。」
男爵に挨拶し、魔術士のテルンを紹介した。
「タプン平原の英雄がいらしたのですから大歓迎です。特に産物のない我が領ですが、何かお求めでしょうか?」
おや、意外と好意的?
「兵士に歌を歌わせていたのを見て、男爵閣下は音楽に造詣が深いのではと思い、録音と再生をご覧いただきたいのと、良い音楽をご存知でしたら教えていただけないかと思って参りました。テルン、準備を。」
一気に話し、そのまま設置を始める。まずは賛美歌だ。
『Nearer, my God, to thee,
Nearer to thee!
E'en though it be a cross
that raiseth me,
still all my song shall be···』
「なんんと、これは···」
男爵が驚いている。
「こちらは録音と再生、テルンの術です。戦の時は伝令に持たせたようですが、遠くの音楽を運んだり、昔の音楽を残せます。」
「す、素晴らしい。これをほかも作ると。」
「はい、今は手近なところで賛美歌3曲と、酒場のギター伴奏の歌を10曲録音しています。複製を研究しておりますので、それが成せればお分けすることも可能です。金貨5枚程度での販売が目標です。」
「その入れ物は?」
「音の増幅器です。こちらは色々研究中ですが、金貨20枚程度で売出し予定です。大きさを変えて何種類か作ります。」
「ぜひ売っていただきたい。あと私の楽団の演奏を録音してもらえるだろうか?」
「もちろんです。持ってきた曲は複製できてからになりますが、楽団の演奏はすぐにお渡しします。代わりに2回演奏していただいて私の分も作成したいのですが。」
「そのようにさせましょう。」
演奏が始まると華やかなメロディが流れてきた。1曲目はオーボエ、ホルンを中心とした演奏、2曲目はトランペット、3曲目はフルート中心のようだ。これは素晴らしい、食事中や朝起きるときなどに流したい曲だ。※2
無事2回録音し、据え置き型の再生機を一式男爵に渡すと帰ることにした。特に2曲目の序曲の後が良い。繰り返し馬車の中で流しているうちに領地に戻った。※3
※1
賛美歌320番 主よ御許に近づかん より
特別好きな曲でもないですが、ほどほどに古臭さがあり賛美歌らしい曲だったので。なお、私はキリスト教徒ではありませんが賛美歌は結構好きです。
※2
ヘンデル水上の音楽HMV348〜350
※3
第3組曲の2曲目、アラ·ホーンパイプ
これがいちばん有名かな?
音楽とファンタジーっぽい感じで。タイトルはそのうち。 吉備響 @remotetraveller
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