第2話 デスゲーム開催
就寝前に友人からのメールを返そうとスマホを開くと、一番に目についたのはSNSの通知。
「エメラルド様から!?」
本来の目的は一旦置いておいて、即、通知をタップした。
「『DM有難う。今後の開催は未定だが、特別に証拠隠滅費一千万を上乗せすれば今回のゲームに参加させよう』……やったぁ!!」
誕生日を迎えたのが今月、つまり十月で、ゲームの開催日は十二月一日からの最長一ヶ月間。
『証拠隠滅費』が引っかかったが、お金で何とかなるならそれに越したことはない。
合計千五百万円――私にとっては半年分のお小遣い――かなり痛いが『エメラルド様』のデスゲームに参加できるならその程度痛くも痒くもない。
一、二ヶ月分のお小遣いと、あまり使ってこなかったこれまでのお小遣いで事足りる。
指定された額を支払えると伝えて参加申請をし、ぐっすりと眠りについた。
「大丈夫ですか!?」
「……え?」
何者かにゆすり起こされて目を覚ますと、見慣れた天井もベッドもなく、どうやら古びた館の床で眠っていたようだ。
背中の痛みが酷くてストレッチをしていると、声をかけて来たであろう女性が隣に座り込んだ。
その横顔を見ると天使が舞い降りたかのように感じた。
「可愛いですね……」
「え!?」
ついそう言ってしまったように、彼女の外見は愛くるしかった。
鮮やかな緑の瞳は大きく、細い鼻と淡い唇も可愛らしく、肌は色白で頬はほんのりピンク色。
毛先を空色に染めたピンク色のツインテール、アイドルの様にキュートでフリフリしたワンピース――可愛げのない私にそんな服を着る勇気はない――がよく似合っている。
「もしかしてアイドルとかモデル? 女優とかやってますか!?」
「……実はそう。知らないだろうけど、キティーって名前でソロアイドルやってるんです」
「やっぱり! 芸能界詳しくないんですけど、友達が好きでキティーさんのこと知ってます! 確か同い年で大人気――え、同い年?」
「えっ……? 同い年って、貴方も未成年?」
この完璧に作り込まれた館の内装を見れば分かるが、ここは『エメラルド様』のデスゲーム会場だろう。
十月末には参加決定の通知が届き、十一月三十日、お楽しみと言われていた招待にわくわくしながら眠って起きたのがついさっき。
未成年が参加禁止ながらにお金を費やしてダメ押ししたガチファンが、ここにもう一人。
脳内を整理させた二人はお互い見つめ合い――
「「語りましょう!!」」
初対面にも関わらず、息ぴったりにそう言った。
「あれ、貴方達って成人してる? 友達同士の参加?」
推しトークに花を咲かせているところに立ち寄ってきたのは、二十代後半くらいに見える女性。
彼女の持つ特徴的な青紫色の髪の毛は、異国の王家の証だったような。
「私達今年成人したばかりなんですよー!」
滅茶苦茶嘘をつくキティーに合わせて私も頷く。
「そうなんです〜。初対面なんですけど、同い年でエメラルド様のファン同士凄く息があって!」
ねーっ、と手を取り合う私達を訝しげに見つめてから、女性も座り込んだ。
「……そう。アイドルのキティーと、魔法剣士の夜狩火サキだと想ったんだけど、間違いだったみたい」
ぎくりと硬直する私達を見つめ、女性はクスクスと笑った。
「大丈夫よ責めたりなんてしないから! 私、
冠、と言うことは、氷の国と呼ばれる国家の王家であろう。
そうだとしても、にこやかな様子に安堵した私達は、差し出された両手を片方ずつ取って応えた。
「夜狩火サキです。夢満さんよろしくお願いします!」
「
和気あいあいと他の参加者にも挨拶をして周り、参加者達の会話が途切れてきた頃。
どこからともなく知らない声が聞こえてきた。
『――皆様始めまして。諸事情で不在のエメラルドに代わりご挨拶させていただく、『ルビー』と言います。始めにゲームの簡単な解説を致しましょう』
慣れ親しんだ奇妙にも美しい『エメラルド様』の声とは異なる、強く才気溢れる、それでいて可憐な『ルビー様』の挨拶で、私達のデスゲームは幕を開けた。
次の更新予定
3日ごと 19:19 予定は変更される可能性があります
エメラルド様のデスゲーム non-mame @b592va2
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