謎の辻斬りを追う遠野と源之進の腐れ縁的な友情を描く江戸時代のブロマンス

剣術指南役の源之進が勝手に友人顔してくる遠野に剣術を見込まれ、言いくるめられて謎の辻斬りを追ううちに本気になっていきます。ですが辻斬りはむしろ味付けだけであり、2人の一筋縄ではいかぬ友情物語が主題なので、江戸時代ブロマンスと言ってもいいかもしれません。源之進にはもう1人、親友格三郎がいるのですが、そちらは普通の仲良い友人であり、彼らの友情は源之進と遠野の関係に対して対照的です。友情物語なので友情を認め合った時点が結末なのが当然なんでしょうけど、欲を言えば辻斬りに関して完全解決を見たかったなと思います。でも犯人が分かっているなら、その後の捕物帳的な展開はやはり蛇足なのかもしれません。【追記】早とちりでした、その後の犯人については『夜叉神峠』に描かれていてすっきりしました。それもそうくるかとという切り口で驚きました。

源之進は正統派ヒーローと言ってもよく、誰もが好感を持つでしょう。もう1人の遠野は一見、無神経で強烈なキャラなのですが、なぜか魅力的で嫌えません。辻斬りになった犯人の背景が涙ぐましいですが、それに対する遠野の見識がさすがと唸らせられました。さりとて格三郎の言う事も一理あるなと色々考えさせられました。