第3話 森の祠

「ねえねえ」

「おはよう」

「またおはなししてよ」

その後何度話しかけても預言書は話したり光を放つことはなかった。ページを捲ると、アルセウスは何をすればいいかわからないが、何かしなければならない気持ちでいっぱいになり、毎日のように祖母の住んでいた森を走った。アルセウスは深い森の中を走るたびに、祖母の声が微かに聞こえてくるような気がした。彼女が好きだった場所、昔よく一緒に遊んだ広場にたどり着くと、ふと足を止めた。

「ここすきなんだよね」

彼は周囲を見回した。濃い緑の木々に囲まれたその場所は、祖母との思い出が詰まった宝物のようだった。その時、彼は地面に光る小さな石を見つけた。石は淡い青色で、どこか神秘的な輝きを放っていた。アルセウスはその石を手に取り、光にかざしたり手の上に乗せたりして見入った。


後ろで物音がした

「だれ?」

振り返るとそこには屈強なひとりの老剣士が立っていた。 アルセウスは思わず石を素早くポケットに隠した。

「ここいらの子かい?」

彼の瞳は優しく、しかしその中には計り知れない深い知恵と経験が宿っていることが分かった。

「こんなところで会うとは珍しいな、坊や」

と、老剣士は柔和な声で言った。アルセウスは少し警戒心を抱きつも、その声にどこか懐かしさを感じた。


それから、アルセウスは何度も森の中で老剣士と偶然出会うようになった。会うたびに老剣士は剣術の基本や、物事の考え方について教えてくれた。アルセウスは少しずつ、それが単なる偶然ではなく、何か大きな運命の糸に引かれているような気がしてきていた。なぜなら、祖母の家の有った場所にはいつの間にか知らない祠が建っており、どうやら老剣士はそこの管理者のようなのだ。ただ、祠に関して老剣士に聞くことはできなかった。祠の話題が出ると、いつも険しい顔をするので畏怖を感じてしまっていたのだ。


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龍のたまご これむのあ @lemlem

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